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書類整理には罠がある。

 ルベライト公爵家に来てから3ヵ月が過ぎた。

 おかげさまで18歳をドラゴニアに地で迎えることが出来てから、2ヵ月程過ぎた。

 

 只今私の目の前では、『ドラフラ』『続・ドラフラ』それに公式小説にも明かされていなかったヘンリー様の特技が繰り広げられています。

 速読による神業的書類捌き・・・。


 来た当初からヘンリー様の執務室の机が高過ぎるなと思ったのよね。

 立ち仕事用の机だったとは・・・。

 特注品の木製の立ち仕事用机と、その斜め横に特注の木製の立ち仕事用の一メートル四方のテーブル。またその斜め横、作業机の後ろに10個の仕分け用の木箱。

 作業机の上に積み重なれた大量の書類から一枚書類を取ると、作業テーブルに向くまでに書類を見終え、そこに置かれたスタンプ台で印鑑が必要ならする。

 そして木箱に仕分けして入れる。

 立ち仕事なのだが、2時間程で机に山積みされた書類を終えるのだ。

 ・・・神業としか考えられない。


 私も前世で速読を取得しようと努力したが・・・結果出る前に亡くなったので未修得なのだ。

 修得した先輩もここまでの神業ではなかった。

 毎度見てもこの作業は・・・見慣れないというか。

 そこだけ、世界が違う感が漂ってます。

 

 私の仕事はというと、窓側に設置されたソファーテーブルの3人掛けの椅子の中央に座り、木箱の一つ『検討中』の箱の細かい仕分けだ。

 最終検討期限の細かい仕分けと、気になる内容の書類はピックアップするようにも言われている。

 そろそろ期限なモノは、公立図書館の新任の館長の選定。

 引継ぎ等を考えると・・・早めに決めた方がよろしくない? 


 書類裁きが終わったヘンリー様が一人掛けのソファーに座る。

 すぐに、モーリスさんがヘンリー様の紅茶を持ってくる。

 紅茶を一口飲むと、私の仕分けしたモノの検討に入る。

 私は、公立図書館の新任の館長の選定の書類を渡す。

 「この書類は、無視していい書類だ。」

 ヘンリー様は、私にその書類を突き返す。

 私は、受け取る気など毛頭にないし、受け取ってはいけない。

 目で訴える私・・・気づこうとしないのか?

 ああ・・・書類をテーブルの上に置いたよ。

 まったく

 「何故、その書類を無視していいのでしょうか私にはわかりません。理由を聞かせてください。」

 書類は形式のようなものと言ってくれた。

 就任時期直前に書類に記載された中の一名が選ばれてくるから、そのままにしてもいいという事だった。

 「父上も、そのようにしてきた。だからそのままでいいモノだ。」


 あらら、とどめの一発付きか・・・。

 

 「では、ヘンリー様。エリック様の所へ行きましょう。」

 私は、満面の笑みで言う。

 しっかり憤りのオーラは漂わせているはず。

 「何故、そんな事で、父上の所に行かないとならない?」

 書類を持って立ち上がった私の腕を掴む。

 「理解できないのなら、一緒に来ればよろしいでしょう。・・・どうぞ、遠慮せずに来てください。」

 『来なさい』と、命令形にしたいぐらいなのだがな。


 ◇ ◇ ◇


 「どうしたのかな?」

と、エリック様が書類の手を休めてお茶まで出してくれた。

 私は公立図書館の新任館長の選定の書類を出す。

 向こうが勝手に決めてくれるモノだと説明をする。

 「この書類に書かれている者たちが、どのような人物かおわかりですか?」

 経歴が記載されていない事も付け加える。

 「ヘンリー、お前はこの者たちに会ったことあるか?」

 エリック様の質問にヘンリー様はわからないと言う。

 ヘンリー様は公立図書館に行くことがあっても、そこで働いている人の事までは把握していないようだ。

 まあ、普通はそうだな。

 「ここに記載されている者を調べず、図書館側を信頼して任せているでよろしいでしょうか?」

 2人して頷く。

 「いつまで・・・信頼していいのですか?」

 私の言葉に気が付いたようだ。

 「経歴も記載されていない者をどのように信頼すればよろしいのでしょうか?」

 顔色が変わり始めている2人を見ながら、私はお茶を一口飲む。

 紅茶にしては赤いと思ったが、ローズヒップティーがブレンドされているようだ。

 「さて、歴史の授業をいたしましょうか。いっそ、公立図書館に行ってしますか?」

 2人して断られた。

 『ギベオン一族の歴史』の事を伝えようと思ったのだが、わかっているからいいと言われた。


 デリック先生のご先祖の話

 約5000年前に黄金のドラゴンと絆を結び、銀、銅、プラチナ、真珠に珊瑚、化石と象牙のべっ甲が、ドラゴンの守護から外される契約をした両替商人がアーサー・ギベオンその人だ。

 その後、両替を国の機関ですべきと訴え国家機関となった。

 アーサー・ギベオンは、国家鑑定士一番目となり、初の国家鑑定長官となった。

 その後・・・子に、孫に・・ひ孫・・・と、国家鑑定長官が世襲制になってしまった。

 時に、無理やりそうさせるように働きかけたことがあったようだ。

 そこで起きたのが汚職事件。

 そのことで、国家鑑定士から『ギベオン一族』は、消えたのよね125年前、デリック・ギベオンが国家鑑定士になるまで


 つまり、私が言いたかったのは、信頼のおける人物なら館長になるのはいいが、それすらわからない者を置き、そのままそれを続けたとなると、とんでもない事件を起こす恐れがある事を言いたいのである。

 そして、経歴の記載もしてない書類が来ている時点で、警告を発している書類だと気づかないとならないという事だ。


 まあ、いいか

 2人してバルコニーからドラゴンに乗って出て行ったのだから・・・。 

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