それって、おかしいと思わないか?
「それって、おかしいと思わないか?」
と、父上が発する。
「?・・・さっき、同じこと言わなかったか?」
父上、先ほど俺が言いました。
俺との違いは、父上は語尾を上げる癖があるかぐらいだ。
『まあ、いいかな』と、父上が言い話を続けた。
「サーシャが泥水まみれになったとなると・・ドラゴンの温泉に行く道中に泥水の痕跡が・・あるはずじゃないのかな?」
俺は、使用人専用出入り口から、用具倉庫の水場にかけて泥水汚れがあったことを伝える。
それをここにはいない他の使用人たちも確認をしている事を伝えた。
早朝の父上との温泉会議の後、昨晩のことが気になり、使用人専用出入り口まで行くと、使用人専用出入り口付近で掃除をしていたサーシャを見かけた。
昨晩は倒れてしまった為、掃除が途中だと気づき、早朝から清掃をしていたと言っていた。
熱があるので、すぐに庭師とその他の者に頼んだ。
そして、部屋で休むように言った・・・聞き入れてもらうのに時間がかかったが。
今は、母上の監視のもとで休んで貰っている。
緊張して休めないと言われようが、養生しないサーシャが悪い。
しっかり監視下のもと病気を治してもらおうではないか。
「ですが、私見ました。ですから、用具倉庫の水道で汚れを落とし、ドラゴンの温泉に行ったのではありませんか。」
一人のメイドの言葉に賛同者が募る。
・・・ここにいるメイド全員となったが。
「それって、おかしいと思わないか?・・・パート2」
父が再び同じ言葉を発したわけだが・・・父上は、面白がり始めたな。
「今現在ドラゴンの温泉を監視する者が少ないのは認めるよ。子供のドラゴンの圧死の件があるからね。」
南から子供のドラゴンの圧死された遺体が、ドラゴンの大樹に運ばれたのを陛下と王妃が見たという連絡が入ってきた。
子供のドラゴンは、皆で見るという制約から王家と公爵家がドラゴンの戸籍を管理している。
戸籍で管理しているドラゴンに圧死したものがないか確認したが、誰も亡くなってなく、戸籍に登録していない野生がいるという事がこれで判明した。
なので、公爵家のドラゴン騎士が野生のドラゴンの捜査に当たっている。
そのためドラゴンの温泉を監視する者が今は少ない。
・・・そこに付け込んできたか。
「だけど、その分ドラゴンが監視をしているんだよね。」
父上がテーブルの上の冊子を開き見る。
「昨日の・・・午後からでいいかな。えっと・・・そうそう、夕方からダイモスが孫と一緒に温泉に浸かってたんだよね。」
ダイモスとは父上と絆を結んだ赤い雄のドラゴンだ。
「今現在ダイモスの孫は絶賛皮膚炎中だから、皮膚炎に効き目のある温泉に人間など近づくモノなら容赦しないよね。」
ドラゴンは生まれてから、初めての脱皮に必ず失敗して鱗まで剥がれ落ち、皮膚を炎症させる。
たまに2度目も失敗するドラゴンもいるが・・・たとえばコスモとか。
「おお、昨夜はコスモも温泉に入ったのか・・・。」
父上は、俺の方を見る。
「はい、城に戻ってすぐに入ると、ドラゴンの温泉から少し離れたところに落とされ入りに行きました。」
そして、俺はそこでサーシャに会った。
「ヘンリー様は帰りが遅いですよね。ダイモスの孫は早寝体質です。コスモが温泉に入るまで空白の時間があるはずです。その時間帯にサーシャさんが入ったのではありませんか?」
お局メイドがとどめの一発と言わんばかりの言葉を発した。
だが、その言葉に俺と父上は思う。
・・・引っかかった。
「確かに俺は帰りがいつも遅い、昨夜もいつも通りに帰宅だな。」
俺のその言葉にメイドたちはやっぱりそうじゃないかと言わんばかりの訴えだった。その顔が安堵の顔だったのが頭に来たが、ここは我慢。
「だが、俺をドラゴンの温泉近くに置いて速攻に入りに行ったのは、温泉にジジイがいたからだ。」
ジジイの一言にメイドが一瞬にして青ざめる。
「ここにもジジイさん・・臙脂様が来たことが記載されているよね。人と絆を結んでいない一番高齢な赤いドラゴンってさ。」
今、要注意ドラゴンとして挙がっている1814歳の赤いドラゴン。
「だけど、ヘンリー、コスモは『じいじ』って言っているぞ。」
それはドラゴンの戸籍上コスモの曾祖父にあたるからな。
俺にとっては単なる『ジジイ』だ。
すみません・・すみません。
話が長くなりそうで、また、ぶった切ることになります。
それって、おかしいと思わないか?
・・・ですよね~。
次こそ解決となりたい・・・私自身が願ってます。