湯けむりに事件!?
暖かい・・・。
私は目を開ける。
・・・首。
うん、首が見えるわね。
・・・顎も見えるわ。
「・・・目が覚めたか。」
ああ、霧がかかっているから幻聴に幻覚か。
「大丈夫か?」
・・・大丈夫でありません。
このまま、現実逃避をさせたままにしてください。
ヘンリー様に姫だっこされたままの状態で、風呂?・・ここなら温泉か
温泉に入っているなんて、現実ではありえません。
服は・・お互い着たまま・・・よかった。
「熱がひどかったから急ぎ入れた。動けるか?」
私の体が鈍い事を示唆するように、ボーとヘンリー様を見ていた。
”むずっ”
「へっ、ぶしゅんっ」
私の動きが鈍いのに、くしゃみはしっかりと出た。
くしゃみをした際、目を閉じていたが、再び開ける。
”びろ~ん”
「・・・・・。」
「・・・・・。」
私の鼻から出た半透明なネバッとした糸が・・・ヘンリー様の頬について、私の鼻と繋がっている。
”かーーーーーーっ”
私の頭に、熱が集まる。
”ジタバタ”
と、さっきの動けないのが嘘のように体を動かす。
穴があったら入りたい。
穴など関係ない、穴がなかろうが入るべきだ。
どこに?
わからないわよ
わからなくても、何とかしないと。
「いきなり動くっ・・危なっ・うわっ」
”バシャーーーンッ”
温泉の湯の中に埋もれる。
穴ではないが、水に入ったし・・これで死ねるから、グッジョブよね。
無縁は覚悟してますが、骨はドラゴニアに埋めてくださいね。
ああ・・・恥ずかしい。
”ザプーーンッ バシャバシャバシャ”
私の体が浮く。
せっかく、姫だっこから解放されたのに、再び捕まり姫抱っこされ温泉の湯から離される。
「おとなしくしろ!」
ヘンリー様は叱るように言う。
ヘンリー様も顔を湯に入ったらしく、私の鼻水は頬から無くなっていた。
だが、しかし・・・水の滴るいい男をしている。
色気が、バージョンアップしてます。
そちらの方もおとなしくしてください。
”ザバサバサバ”
と、私を抱き上げたまま歩き、湯の中を出る。
ブロンズ製の黒い格子の仕切りを抜けると脱衣所となっていた。
ブロンズ製の黒いガーデンベンチに私を座らせ、上からタオルをかぶせられる。
「先ほど多少動けたし、ここにバスローブを置いておく。一端これに着替えろ。」
と、ヘンリー様は私の座っているガーデンベンチの横にブラウン色のバスローブを置く。
「濡れたものは、全てこの中に入れる。・・・わかったな。全てだぞ。」
ヘンリー様は、私の前に洗濯物を入れる容器を置いてくれた。
「俺は・・・また温泉に浸かってくるか。」
と、言い温泉の方へ戻っていった。
私は、頭からかぶされたタオルを一端置き、服を脱ぎ始める。
コルセットの紐に悪戦苦闘するも脱ぎ、全て容器に入れて体を拭く。
そして、大きいバスローブを着る。
裾が床にするか、すらないかの長さだわ。
私は再び、ガーデンベンチに座ろうと、裾を膝まで上げて座る。
そして、体が勝手に横になってしまった。
体が浮く感じがして目を覚ます。
「つらいか?」
・・・あなたの色気がつらいです。
再び、姫抱っこだよ。
ここまで来ると、ヘンリー様・・姫抱っこ結構気に入り始めたのではありませんか?
単に私を起こせばいいっていうのに・・・。
乙女ゲームモード入らなくていいですから、125年前にゲームの時代は終わっています。
現実に戻ってくださいヘンリー様。
・・・私もか。
「大丈夫です。自分で歩けますから。」
そのようにいうとヘンリー様は降ろしてくれた。
ヘンリー様は、濡れた服でなく、今私が着ているバスローブと同じ物を着ていた。
ペアルックだよ。なんか恥ずかしさがアップしてます。
うん、すぐに自分の部屋に帰ろう。
私は、脱衣所の見えるドアを開ける。
「そこサウナ室。」
はい、もわっとしている熱いお部屋ですね。
「こっちのドアでした。」
私はもう一つのドアを開ける。
今度は正解。
部屋の中に入り、目の前のドアを開ける。
・・・・トイレ。
その隣のドアは、クローゼット。
その隣は・・・。
「こっちだ。」
ヘンリー様は私の手を引き歩き出した。
ヘンリー様に連れられ廊下にでる。
廊下は今の時間は、当然ながら真っ暗となっている。
ヘンリー様は、ドア側の壁に手を付け少し歩く。
廊下のドアの横にはサイドテーブルが置いてり、明かり取りのランタンの準備がされている。
そのために壁に手を付け歩いていたのだ。
持ち手を確認し、明かりをつけるスイッチをひねると点いた。
その作業をヘンリー様がしてくれた。
・・・本来なら、メイドである私の作業よね。
「すみません。」
私は、ヘンリー様に伝える。
ヘンリー様は、ランタンを持っていない手で私の手を取ると歩き出す。
そして、少し歩き口を開く。
「サーシャは、この城に来て間もないはずだ。」
ヘンリー様は、チューラの町から領都ルベルタの距離を予想し、城に配属されてまだ、丸一日経っていない事を言い当てた。
そして、気にするなと付け加えてくれた。
「・・・ありがとうございます。」
「こちらもお礼を言いたい。でんぷん粉の事。」
と、逆にお礼を言われてしまった。
トウモロコシを作っていたセドナの町は、半分トウモロコシもう半分をジャガイモを作り、毎年交互にして作ることを伝えてくれた。
でんぷん粉工場も近くどこに建設するか選定すると伝えてくれた。
「早く求肥入りのお汁粉が巷に出てきて欲しいな。」
ボソッとヘンリー様が言う。
「それを言うなら、求肥入りのクリームあんみつですよ。」
と、スイーツ話で盛り上がりながら廊下を歩いて行った。