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わからずや~!!

 『ヘンリーの、わからずや~~!!』

 穏やかなはずのクレシダが、この俺に向かって訴えてきた。


 俺がわからずや?

 何でだ?

 どうしてだ?

 サーシャがイリスに行くのを阻止するれっきとした理由があるのに・・・

 は?

 わからずやだと?

 サーシャならわかるが・・・この俺が?


 サーシャがイリスに行けば、サーシャを女帝にと画策する者が出て来るはずだ。

 手紙には、革命が終息して軌道に乗るまでイリスにいるつもりと書いてあったが、女帝にでもなりたいのか?

 いや、そんな訳がないはずだ。

 ウィリアム殿のところで、女帝にまったく興味を持っていなかった。

 なら、どうしてだ?

 

 「ヘンリー殿。先ほどクレシダが言っていた内容を聞きそびれてしまいましたか?」

 ナイジェル殿が、臨戦でもするかのような顔で言って来る。

 「『わからずや』と、言っていたが・・・。」

 俺が答えると、マブが落胆するように頭を落とし『残念な奴』と、吐き捨てる様に言い、顔を逸らした。

 これでも、公爵家の令息で、次期公爵な上に、黄金のドラゴンであるコスモと絆を結んでいる者なんだが・・・。

 残念?

 奴?

 聞き間違えでもしたか?

 しかも、ここにいる全員、サーシャを庇うよう見える。

 サーシャをイリスに行かせていいと思っているのか?

 冗談じゃない!

 「君らは・・サーシャを・・イリスに、連れて行こうと・・・しているのだな」

 冷静でいようと努力はしたが、怒りで言葉が震えていた。

 「行かせようとはしてない」

 「では、何故サーシャを庇っているっ!!」

 ジェームズ殿の返答に、俺は怒りを抑えきれずに声を荒げた。

 「それは、ヘンリーの対応が悪かったからだよ」

と、背後から父上の声がした。

 振り向くと、ダイモスに乗った父上と母上、それにフォボスに乗ったマティアス殿とキャサリン殿がいた。

 父上は、サーシャを庇っている者たちに『息子がすまないね』や、『サーシャを守ってくれてありがとう』と、声をかけている。


 「サーシャは、故郷の行く末を導いてから国を出てきたのですよ。普通なら国がお手上げになるや、自分さえよければと、家財を持ってさっさと国をお出になるのに・・・。」

 「それをサーシャはしなかった。どうしてだかわかるかヘンリー殿?」

 キャサリン殿が話だし、マティアス殿が、質問する形で付け加えてきた。

 「・・・・。」

 「今のヘンリーは興奮しているから、思いつきませんね・・・きっと。」

 母上が、困った顔を見せながら周りに伝える。

 「クレシダ。もう一度・・・ヘンリーそれに、サーシャの為に言ってあげてくれないかな?」

 父上がクレシダに頼む。

 クレシダはサーシャの方を振り返り見た後、コクッと頷いた。

 何を言ったのだろう・・・。



 ”いろいろ考えて行動するサーシャが、考えなしに危険地帯に行くわけない。

 そこに行き当たった理由があるから、イリス帝国に向かっているのではないの?

 それを理解してあげた上で、行かなくて済む方法を見つけてあげないと、将来イリス帝国に行かなかったのを後悔するのではない?

 だって、サーシャの故郷なんだよ。

 私たちドラゴンにとって、故郷を出る意味は、最期に黄金の大樹に帰れないって意味だよ。

 それって、例え仕方がなかったとしても、辛いと感じない?

 私は辛いし、恐いよ。

 そんな思いをしてでも、サーシャは故郷を出てきたんだよ。

 もし、故郷に革命を起こしてしまう程、荒れてなかったら、故郷を出るなんてなかったはず。

 だって、サーシャは公爵令嬢なんだもん。

 イリス帝国での役割を与えらた令嬢なんだよ。

 それを簡単に放棄するサーシャじゃない。

 だから、例え『クラウンコッパー公爵家』っていう、ドラゴニアでは意味嫌う姓名を持っていたとしても、受け入れられたのではない?

 それを踏まえた上でも、ただ、コスモの言われた通りに従うだけなの?

 それで、いいの?”



 クレシダの話しに言葉を失う。

 コスモに頼んで、黄金の王命を発し、サーシャをドラゴニアから出さない様にしたのには、後悔をしていない。

 そうするしかなかった。

 だか、それだけではダメなんだ・・・。


 「サーシャ。どうして、イリスに帰ろうとしているのだ?経験を積むためを書いてあったが、ドラゴニアにいてでは出来ないのか?」

 俺の質問にサーシャは首を左右に振る。


 どうしたらいいのだ?


 「サーシャ。イリスに帰ろうとしている経緯を教えて欲しいな?」

と、父上がサーシャに質問をする。


 俺は、唾を飲み込み、サーシャの答えを待った。

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