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なかなかな、それぞれの仲

 キンバーライト城を出立すると、黒いドラゴンが、私の乗っている赤いドラゴンの横に来る。

 黒いドラゴンには、ラスキンさんと、ラスキンさんの部下で乗っている黒いドラゴンと絆を結んでいる部下が乗っていた。

 「学園の新学期に合わせての日程を組んで良かったですよ。」

 学園の購買である『一石二鳥以上』の店がありますからね。

 「サーシャ様の貸しをすぐに返せたのですからね。」

 まあ、菓子の貸しもそうでしょうね。

 「これで貸し借りはなしでいいですよね!」

 ドヤ顔でラスキンさんが言って来た。

 なんだろう・・・そのような顔で、そのように言われてしまうと、反論してみようかしらと、思ってしまうわよね。

 それに、菓子の貸しより、シナバー商会の再雇用の方が貸しでしょうがと、言いたくならない?

 シナバー商会で働けるように手配したような気がするのだが・・・。

 まあ、私の力でなくて、ウィリアム伯父様の力だけれどもね。

 でも、ここは・・・一言、言ってやっても許されるわよね。

 「ラスキンさん。すんなりと貸し借りを済ましてしまって、関係性が薄れてしまわないか心配じゃないの?」

 ・・・あらら、ラスキンさんが私の一言で考え込んでしまったよ。

 「薄れる・・・薄れるわけがない・・・薄れてしまうかもしれない・・・薄れない様にする・・・どうやって・・・貸しを作ったままにする・・・だけど、そんなに簡単に薄れてなるモノか!!・・・貸しを返させていただきます。」

 ・・・そうですか。

 通常なら聞こえない様に口元をゴニョゴニョした後に、はっきりした口調で返事をすると思うのだけど、ゴニョゴニョ部分がしっかり聞こえているのですが・・・。

 まあ、いいか。

 それぐらい私を信頼しているという事だ。

 信頼をして無ければ、こんなに堂々と聞き取れるわけないモノね。

 「わかりました。それでは貸しを返しますね。」

 私は微笑みながら、ラスキンさんに返事を返した。



 ◇ ◇ ◇



 「お父様。お母様。お帰りなさいませ。」

 セシル様の就任式から両親が戻って来たので、玄関ホールでお出迎えをする。

 「ただいま帰ったよ。お出迎えありがとう。」

 お父様が、機嫌よく返事を返してくれた。

 お母様も満面の笑みで、私の出迎えを喜んでくれる。

 「キンバーライト公爵になられたセシル様の就任式はいかがでしたか?」

 両親は仲睦まじく、微笑みながらお互いを見合わせて『それは、立派でしたよ』と、一言教えてくれた。

 「お茶を用意して頂戴。」

と、お母様がメイドに言う。

 どうやら就任式の出来事を教えてくれるようだ。

 両親は、一端着替えをするためにそれぞれの部屋へと向かったが、私はそのまま談話室へと向かった。


 両親から、どのような話が聞けるのだろうか、楽しみでならない。

 きっと、小さい頃にお母様が呼んでくれた童話の世界のような、華やかな式だったのではないかしら?


 侯爵令嬢の私なら、将来はその世界の人間となるのは当然であって、予習を兼ねての話を聞くというのが正しいわね。

 近い未来、私は上流貴族社会に優雅に降臨する立場でなくてはならないもの。


 私は、メイドが運んできた紅茶を飲むと、両親が談話室に入って来た。

 早く聞きたくて、うずうずしていていますが、両親が座るまで待っているのですわよ。

 「就任式だったな。」

と、お父様の方から言ってくださいましたわ。

 是非、聞かせてくださいな。

 「新たにキンバーライト公爵となられたセシル様の立派な姿をお見せになる儀式だからな、それは立派なモノだったぞ。」

 お父様は、今回退位をされたホレス様の公爵当主の印で、王家から承っている勲章を陛下が外し、新たな公爵となられるセシル様に、王家から新たに勲章を授ける儀式だと教えてくれた。

 「奥様がいらっしゃったら、カリスタ王妃が、奥様から公爵夫人の印の勲章を外して貰い、セラ様に新たな勲章を付けて貰えたのですよね。」

 お母様が、セシル様を産んだと同時に亡くなられた公爵夫人が生きていたら、あったであろう儀式の流れも残念そうに伝えてくださった。

 「元々、体が弱い方だったから仕方あるまい。セシル様を残して頂いただけでもありがたい。」

 お父様の言葉に、お母様は頷いてから『そうですね。』と相槌をする。

 「キンバーライト公爵家のたった一人の跡取りであるセシル様が、貴族の令嬢ではないセラ様と結婚した時は、何様のつもりと思っていましたが、3人のお子様がいるのです。健康そのもののセラ様が公爵夫人で良かったですね。」

 お母様が微笑みながらお父様に同意を求めた。

 「うん、結婚当初は、苛立ったものだが、セラ様がキンバーライト公爵家に嫁いでから、キンバーライト領の運用が良くなったのだ、駄目だとはいえまい。」

 お父様も頷き、セラ様で良かったエピソードを言い、微笑みを見せる。

 「『あの、女狐め!』と、よくおっしゃっていたではありませんか?」

 私は悪戯っぽくお父様に言った。

 「それは、10年も前の昔の話だろう」

と、お父様がいい笑い出し、私もお母様も笑い出す。

 

 「そうそう今回、ヘンリー様の奥方がいらっしゃってましたね。」

 お母様。今なんとおっしゃいましたか?

 「伴侶の絆が刻まれていても、公爵家に嫁ぐのだ。ドラゴンの大樹での誓いは、まだされていないから、正式な奥方とは言えないが・・・。」

 両親は顔を見合わせる。

 「仲がよろしかったですね。」

 「式の最中、ずっと手を繋いでいたな。」

 微笑みあい、ヘンリー様とサーシャの話をしだす両親。


 ・・・この私が、ヘンリー様の奥方にと、両親も周りも推薦していたのに、何なのですか?


 私は、両親から不愉快な話を長々と聞かされる。

 ・・・本当に、ムカつきますわ。


 

 

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