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順々に準備はできていく

 夏休みが後5日となったこの日。

 キンバーライト領では、新たな公爵が誕生する。

 その祝賀に、たくさんの人々や馬車、そしてドラゴンが集まってきていた。


 クローライト家の御一行と一緒にお城いりした私は、すぐにゲストルームへ案内をされ、メイドにあれこれと全身ケアをされながらドレスに着替える。

 着替え終わると、メイドは達成感に満ちた顔をしていた。

 それもそのはずだ、この頃寝つきが悪い為、微妙にクマが出来ていただけでなく、肌荒れもしていたから、ここまでモチスベな肌になったのだ、自分で自分をほめたいと思うよね。

 素直に『ありがとう』とメイドに伝えたら、恥かしさを覗かしているモノの嬉しそうな顔をしていた。

 

 「サーシャ、準備は出来たかしら?」

と、部屋に入って来たのはキャサリン様だった。

 すぐに私のもとに来て、私の周りを一周。じっくりと私の顔を見る。

 「うん、これなら大丈夫そうね。」

 私は、少し顔を傾げる。

 「この頃、顔色が優れない感じがしていたのよ。昼間に仮眠をとっているにも関わらず、クマがあったでしょう。心配をしていたのよ。」

 キャサリン様は、私が夜の寝つきが悪く、昼間に仮眠をとっている事をお見通しのようだった。

 「ヘンリー殿のところへ帰ったら、しっかり眠りなさい・・・って、今夜は無理ね。体には充分、気を付けなさい。」

 そう言い、キャサリン様は私を優しく抱きしまてくれた。


 キャサリン様に連れられ、クローライト公爵家の待合室へ行くと、そこには、マティアス様、ヴィンセント様、それにライ様がいた。

 「やっと来た。」

 「コレ、ライナス。女性のおめかしは時間がかかるんだ。急かしてはダメだぞ。ライナスの器の大きさを見せつけるぐらい寛容でなくては・・・。」

 マティアス様がライナス様に諭すと、すぐにソファーから立ち上がり、こちらに来る。

 「一段と美しく私の前に現われてくれて、夫として誇らしいよキャサリン。」

と、マティアス様は、キャサリン様の手をとり、手の甲に口づけをする。

 うん、紳士的なお出迎えだ。

 こちらまで、恥かしくなってしまうよ。

 夫婦の仲がよろしい事はいい事だ。

 「大父様も大母様も、それぐらいにしてお茶を飲みましょう。サーシャもこちらに座って。」

 ヴィンセント様が、私の座る場所を手で合図してくれる。

 私はその場所に座ると、部屋にいたメイドが紅茶を出してくれる。

 「就任式に呼ばれるまで後、どれぐらいでしょうか?」

 私が、紅茶を出してくれたメイドに聞くと、30分程と答えてくれた。

 「30分って、その前にヘンリー殿に会うために、ルベライト家の待合室に行かないとならないだろう。」

 ライ様が、就任式前の事を言う。

 そうなのだ。就任式に行く前に、待合室に向かう事を約束しているのだ。

 私は複雑な気持ちになった。

 ヘンリー様には会いたいが、クローライト家の方々と別れるのも寂しいと思ったからだ。

 「サーシャ。いつでも、クローライトにきなさい。いつでも大歓迎よ。」

 優しく微笑みながらキャサリン様が言ってくれた。

 「近日っていうなら、ライナスのダンスに付き合ってくれるとありがたい。まだ危なっかしいからな。」

 ウィンセント様が言って来た。

 それも、そのはず、ここ半月私は、ライ様のダンスの先生をしているのだ。

 足は踏まなくなったが、ぎこちなさがまだ残るオドオドしたダンスで、初々しいダンスと許せるまでにはいっていないのだ。

 後、少しだと思うのだが・・・。

 少し恥ずかしそうにするライ様。

 「そんな顔をするな。今日が晩餐様式だったから連れてこられたんだぞ。これでもし舞踏会様式だったらクローライト城でお留守番だったんだからな。」

 ウィンセント様がライ様に言う。

 「舞踏会であっても、俺とダンスする者なんかいませんよ。」

 少しすねる感じにライ様が言う。

 ライ様は解っていないのね。

 私を含め、キャサリン様、マティアス様、ウィンセント様はため息を付く。

 「みんなしてどうしたんだよ。」

 「クローライトの新たなる新時代を築くであろう、跡取りがどのような者か知りたい者が大勢いると聞いている。」

 マティアス様がライ様の為に口を開いてくれた。

 「ホレス殿が、ライナスを気に入ってると聞いているから。そこのところも知りたいと思うだろう。」

 ウィンセント様は、ライ様の肩にポンと手を置き言う。

 「公爵夫人になられるセラ殿は、情報を重要視する貿易商人。晩餐会よりも、舞踏会の方が、情報が行きかいするので、舞踏会様式だと思っていたが、晩餐会様式なのは、ライナスを思ってのことだろうな。」

 マティアス様が、ライ様を見て言う。

 そして、その顔が今度は私のほうを見る。

 私は、顔を傾かせる。

 「そして、この時期に就任式をするに至ったのは、サーシャとヘンリー殿を思ってのことだろう。」

 マティアス様の言葉に驚き、目を見開いた。

 「サーシャとヘンリーの結婚は、卒業してすぐの春だろう。」

 そのように進んでいると聞いてます。

 「毎年、国王主催の舞踏会が秋から冬にかけての時期と決まっている。そうなると大掛かりな式をするとなると、夏しかないだろう。」

 そうか、大きな式をするには、招待される側も衣装代など、それなりの費用が掛かる。

 その為、大掛かりな式は、立て続けにはしていない。

 例え、その費用があっても、一着に相当な金額のかかる物を何着も一気に購入するのは、領民に感心されない。


 私の普段着を何着も購入した手前、ルベライト家は特に気にしないとならない立場だ。

 だから、ルベライト家は、大至急の衣装の依頼はせずに、クローライト家に相談したんだ。

 ・・・ちょっと待ってよ。

 情報通のキンバーライト家なら、そこのところ考慮しているから、場合によっては、私の衣装・・・用意していたとか?

 流石にそこまではいかないか。

 キャサリン様のドレスのリニュアルを宣伝する機会を設ける場としての提供だけだよね。

 真実を知りたいような・・・知りたくないような・・・そんな気分だな。

   

 

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