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返事は変事にならぬように

 「ジジイ。ありがとう。」

 俺は、そう言い、ジジイの背中から父上の部屋の露天風呂に飛び降りる。

 そしてすぐさま、父上の部屋へと入る。

 ”バンッ”

と、扉を勢いよく開け、部屋の中に入る。

 「父上、サーシャは何処にいますか!?」

 執務室にいる父上に訴える。

 さきほどから、通信でサーシャの場所を聞くも誰も答えてくれず。

 『公爵の所へ行ってください』と、いうモーリスの伝言だけだった。

 なので、急ぎ聞くために、すぐに父上と話をするために、露天風呂から侵入する形となった。

 ”バンッバンッバンッ”

と、父上は引き出しから何かを取り出し、机の上に叩きつけるように置く。

 「ヘンリー。この手紙に見覚えはないか?」

 父上は、机に叩きつけた手紙の一つを手に取り、俺に見せる。

 公爵家が、特別な時に出す、封筒の表側にドラゴンのマークのスタンプが押されている封筒だ。

 黒いスタンプが押されているのでキンバーライト公爵家から出された物なのだが・・・。

 そう言えば、数か月前に、新公爵就任の就任式の招待状が来ていたっけな。

 「あっ」

 思わず、声を上げてしまった。

 「思い出したか、このバカ息子が!」

 ”ダンッ”

と、再び持っていた手紙を机に叩きつけた。

 「セシル殿とセラ殿が心配になって、コスモの体調が気になるなら、就任式だけでいいから出席して欲しいと、再度招待状を持って来たわ!」

 荒々しい声で伝えて来る父上。

 

 キンバーライト公爵の新公爵就任式の招待状は、王都のルベライト屋敷に届けられていた。それも、ご丁寧に俺とサーシャの招待状だけ。

 父上と母上の招待状は、きっとルベライト城に届けられたのだろう。


 ここで父上が怒るのは、届けられた時期というわけだ。


 ルベライト城に、サーシャの姉であるロゼリス殿が捕まり、サーシャに会わせるために学園へ迎えに行く途中で、屋敷によった時にあったのだ。

 

 招待状より、サーシャの事が気になり、そのまま、机の引き出しに入れたままだ。 

 すぐに返事を書けたはずなのに、サーシャでいっぱいだった。


 「俺から出席の手紙を出しておいた。」

 目を吊り上げている父上に、ただお礼と謝罪しかなかった。

 少し、父上の顔が落ち着くと、気になる事が出て来る。

 サーシャの居場所だ。

 ジジイから、サーシャが領都ルベルタにいないのは聞いていた。

 だが、城に戻るようにという強制的な命令に従わなくてはならずに、このようなになってしまったが、当初の目的を忘れてはいけない。

 「それで父上、サーシャの居場所なのですが・・・。」

 ためらいがちに言うと、父上がどっとため息を付いた。

 「ヘンリー。就任式までルベライト領と王都の地域しか移動禁止な。」

 半月の間の移動制限だが、どうしてなのだろうか?

 「どうしてですか?」

 理由を聞こうではないか。

 「サーシャが、クローライト領に行っているからな。」

 「では、サーシャに会えないのではないですか!」

 そんなの嫌に決まっているだろう。

 「では、聞くが、ダンビュライト城へ行って、この城に帰る途中でピンクアメジの寄ったのは、ピンクと緑の計画の経過を見る為だと聞いている。」

 ピンクアメジの寄る理由は、そのように言っている。

 昼に計画の地にたどり着いて一通り見て、その晩からサーシャを可愛がったが・・・・。

 「経過を見たのは、半日で後は、サーシャの日にち感覚を麻痺する程、可愛がっていたと聞いた。当初の目的として報告されているピンクと緑の計画の経過の報告はどうした?」

 父上が、聞いて来たので、異常なく進んでいる事を伝える。

 「ほう・・・絹生産で問題が起きているのを聞いていないのか?」

 初耳である。

 「サーシャも聞いていないと、ショックを受けていたが、すぐに内容を聞いて、解決法まで出してくれたのだがな。」

 父上は、絹の生産に回す蚕でなく、羽化して産卵用の蚕として、取っていた物が大量に羽化しなかったと、伝えてくれた、

 そして、サーシャは、餌である桑の葉を洗浄してから与えるように指示を出してくれたのを教えてくれた。

 「ヘンリーは、通常業務の他にサーシャの事を可愛がるだけで、周りを見ていなかったのだ。しっかり反省して、治めている地を見るのが当然だろう。それまでは、サーシャには合わせん。」

 「そんな・・・。」

 反省はするべきだが、サーシャに会えないのは寂しい。

 「それに、サーシャは、就任式に着て行くような正式な礼服を、持っていないだろう。」

 そうだった。

 サーシャの服を買いに行った際、普段着とちょっとした装いの物だけで、就任式のような格式ある礼服はなっく、俺と合わせて作ろうと計画を立てるだけで終わって、そのままだった。

 「キャサリン殿にお礼を言っておくのだな。キャサリン殿もサーシャに服がない事を気にしていて、輿入れに用意していた服に、正式な礼服があったのだからな。」

 俺は、ホッと息を吐いた。

 ”ドンッ”

 父上が机を叩き、俺を睨みつける

 「安心しているが、本来、輿入れの際の品だ。まだ、輿入れしていないのに、それを出してくれるとか、おかしいだろう。」

 ごもっともです。

 「恥をしれ!」

 はい。

 恥というか・・・情けなさを感じています。

 「何か、公爵である俺にいう事はないか?」

 「通常業務終了後、領地の視察をしに行ってきます。」

 久々に、夜遅くの帰宅になりそうだ。

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