お迎えのドラゴン
「・・・サーシャ様。起きてください朝ですよ。」
デボラの声がする。
朝だと言っていたけど、私・・・今、ピンクスピネにいるはず。
ルベライト城にいるはずのデボラが、ここにいるワケがない。
つまり、夢を見ているって事?
もしくは、ヘンリー様が、眠ったままの私を連れて、ルベライト城に帰ったって事かしら?
「・・・ここ・・・どこ?」
寝ぼけ眼で聞いてみる。
「ピンクアメジの宿ですよ、サーシャ様。」
デボラが、上体を起こした私に答えてくれた。
「うん、夢ね・・・おやすみなさい。」
私は、再び上体を寝かす。
眠気があるから、熟睡の途に就くべきと思ったからね。
「サーシャ様。今、起きて貰わなければ、殿方に頼んで、サーシャ様を寝たままでルベライト城へ戻って貰う事になります。ヘンリー様以外の殿方に裸を見られてもいいのですか?」
”ムクッ”
「夢であっても、それはダメよ!」
私は、再び上体を起こし、しっかりと目を開ける。
「おはようございます。」
そこには、夢ではなく、まぎれもない現実のデボラがいた。
「サーシャ様。至急ではございますが、帰りの支度をしてください。」
デボラは、私にバスローブをかけてくれた。
私は、バスローブを着ながら理由を聞いてみる。
「ヘンリー様の暴走を止めに来ました。」
私は、ベッドに眠っているヘンリー様を見る。
いつも通りの色気満々のヘンリー様。
これといって変わったところがない。デボラが言うような暴走している風には見えないのだが・・・。
「暴走って・・・いつも道理のヘンリー様よね。」
これから、暴走するのかもしれないので、一応聞いてみる。
すると、デボラが開いた口が塞がらないような驚きを見せた。
「デ・・・デボラ?」
私が、デボラに声をかけると、デボラは正気に戻ってくれた。
「サーシャ様。急ぎましょう。急いでルベライト城へ戻りましょう。」
私をすぐさま椅子に座らせ、髪をアップに結わき、ここでは、体のみをざっと洗い流す程度にして欲しいと言ってきた。
相当急いでいるようだ。
まあ、城に帰れば、部屋に備え付けのやたらと大きい温泉があるから、別にいいのだけど。
なので、デボラにお願いされた通りに、急いで帰りの支度をする。
服を着て、脱衣場から出ると、私の荷物がまとめられていた。
「さっ、サーシャ様。行きましょう。」
と、デボラは私の鞄をしっかりと持ち、先へと進んでいった。
私は、少し歩いてから、後ろを振り向きヘンリー様を見る。
まだ、ヘンリー様はベッドでスヤスヤと眠ている。
「ヘンリー様。また後で・・・・。」
私は、再びヘンリー様の所へ戻り、ヘンリー様にキスをしてから部屋を出て行った。
「おはよサーシャ。では、帰ろうか」
と、外に出た私に声をかけたのは、ニッコリ笑顔のエリック様だった。
エリック様は、ダイモスに乗っていて、いつでも出られる状態だった。
その後ろに、これまたエーギルに乗っているモーリスと、青い雌のドラゴンがいた。
エリック様が、私に手を差し伸べる。
ダイモスに乗って帰るのですね・・・舅となるお方と一緒に乗るとは、末恐ろしい気もするが、仕方がないな。
私は、エリック様の手に手を乗せようと差し出す。
”キュ~キュキュキュ~”
と、青い雌のドラゴンが鳴き声をあげる。
「カルデネ。サーシャを自分の背に乗せて帰りたいのか?」
”キュ~ッ”
青い雌のドラゴンはカルデネだった。
荷物持ち要因として、一緒に来たようだ。
だが、私を乗せたいと言っている。
「デボラ。サーシャをカルデネに乗せるのを手伝ってくれ。」
と、あっさりとエリック様は了承して、私はデボラに助けられながら、カルデネの背に乗る。
デボラがモーリスの後ろに乗ると、エリック様が合図を出し、ダイモス、エーギルとカルデネが東に向かって飛びたつ。