メイドの洗礼
ハミッシュ陛下から、給料、ボーナス、特別手当を、それぞれしっかりふんだくる計画は一端置いておこうではないか・・・フフフッ
それより、自分の汚れだわね。
すぐ近くに間欠泉から出た温泉があるんだけど、確か・・・間欠泉からの温泉はドラゴンのための温泉で、人間は使用してはいけなかったはず。
『ドラフラ』で、ヘンリー様が幼少の時に入って、相当叱られたっていうエピソードがあったよね。
でも、使用人たちから間欠泉の温泉を使用してはいけませんって、言われてなかった。
つまり、今は使用してもOKになったのか?
もしくは、使用してクビになるのを待っているのか?
・・・後者だろうな。
先ほどバケツを洗った水道が一番近い水場ね。
私は、落ちてきたバケツを拾い、先ほどバケツを洗った水場に向かう。
バケツを洗いきれいにしてから、バケツに水を貯め、頭から被る。
もう一回・・まだまた・・・ほら、まだ泥水になっている。
・・・ちくしょう、もう一回・・まだまだ・・・。
何度も水を被る。
水行となっているな・・・。
ならば、祈ることは、この汚れがきれいになる事・・・いじめが無くなる事・・・そしてフフフッ・・・給料・・・ボーナス・・・特別手当・・・絶対貰うからね~。
”バシャーーーッ”
祈り一個に水を浴びる。
何とか、きれいになったところで、次の行動。
たとえ、きれいになったところで、今の私はびしょびしょなので、屋敷の中に入れないと考えた方がいい。
ならば、汚してしまった道を洗うか。
私は、先ほどバケツを戻した倉庫へ行き、バケツとデッキブラシを持ち出す。
そして、バケツに水を貯め、排水溝の泥で汚してしまった道を洗いだす。
レンガの道に、水をまきデッキブラシで、汚れを土壌の方へかき出す。
”ザッザッザッザッ”
洗う作業は別にいいが、暗いので汚れ箇所を探すことと、土壌箇所を探すという手間が面倒だな・・・。
温泉が湧き出ている城だから、寒さはあまり心配してなかったんだけど・・・なんか、寒いな~。
もっと、体を動かせば熱くなるか。
寒いと感じるのは動きが遅い証拠。
ジャンジャン洗いまくるのよ~!!
「そこで何をしている。」
男の、聞き覚えのある声だね。
”カツカツ”
と、足音が大きくなり姿がやっとわかる。
「ヘンリー様。」
私は、作業を一端やめ軽くお辞儀をする。
「君は・・・サーシャ!」
ヘンリー様、やはり驚いているわね。
「はい、サーシャです。」
私は答える。うん、体が寒いが、頭は熱くなってきた。
「何故、濡れている?」
やはり、その質問くるよね。
「屋敷に入る際に泥水を浴びてしまって、水場できれいにしてから泥水で汚れた箇所を掃除しているのですよ。まだ汚れた箇所がありますので気を付けてください。」
私は、ヘンリー様に注意を払うように伝える。
「そんなのは、どうでもいいだろうが!」
ヘンリー様が叫ぶように言う。
私は、目が点になる。
ヘンリー様が近づき私の腕を掴む。
「冷たいじゃないか!」
そして、額に手をやる。
「熱がある。」
それは、動いていますから・・・。
・・・・あれ?
私・・・どうしちゃったの?
◇ ◇ ◇
”ドサッ”
サーシャが気を失い倒れ込んだので体を支える。
コスモが帰ってきて温泉入りたいと言ったから、この道を通ってきたのだが、この道を俺が通らなかったら、道端で倒れていて朝まで気づかれなかった事にならないか?
ゾッとする。
きっと、メイドの新人いじめだろう。
この屋敷のメイドは、王宮のメイドよりも人気がある。
その理由が『リオン』にある。
・・・リオン。
この家に来て、聖ドラゴニア学園に入学するまで家族同然に接していたが、一応メイドとして働いて貰っていた。
聖女リオンと同じところで、同じメイド仕事をしているという他にはない特別感が、威張り散らすことになり、お局とその取り巻きが『新人いじめ』に発展したのだろう。
・・・情けない。
俺はサーシャを持ち上げ歩き出す。
それにしても、どうしてここに来る前は太った格好をしていたのだろうか?
俺は、サーシャを見つめる。
うん、美人な分類にはしっかり入っている。
大方、変な男に言い寄られないように太った格好で行動をしていたのだろう。
大変なことだな。
次回、再び前世編。




