も~、王太子でない
目の前に鉄格子が見える。
その先には、ベッドが横に立てかけられていて、その上に、生首の様に顔だけが出ている。
その顔は、ホルンメーネ王家の長男として挿絵に載っていた人、その人なのだが・・・若干、ご満悦な顔をしている。
私の思い違いなのだろうと、思いたいのだが・・・。
『腰にタオルを巻くだけでは、革のパンツが隙間から見える。サーシャには毒だから、ガウンを着せろ』
『ガウンから、胸に付けている物が浮き出しているだろうが。サーシャに悪影響だから、体を隠してくれ。』
と、ヘンリー様が言った言動、そして、カイル様が彼に介入していることから、妖しい方面に目覚めてしまったのかと、想像をしてしまうのだが・・・。
私に顔だけ披露している彼の名前を、イライアス・ボーキサイト=ホルンメーネといい、ホルンメーネ国の第一王子だ・・・・った人。
ホルンメーネ国では、彼は死んだことになっているようだ。
”ジャラン”
と、鎖の音がする。牢屋の向こう側には、イライアス王子の他にカイル様がいるのだ。
カイル様の手には鎖が握られている。
「モーモー君。君とお話をしたいと希望している者がいるから、挨拶をしなさい。」
カイル様・・・モーモー君って?
「モーモーで~す。」
は?
「おおぉ~。」
首だけが出ている人が、悦に浸っている顔を見せた。
何が、起きたんだ?
カイル様の鎖を握られていない方の手が動いているが、何をしているのか、ベッドで隠れて見えない。
ただ、イライアス王子は、それが気持ちいいようだ。
「本名で挨拶しないと、どうなるか・・・わかってますよね。」
カイル様の手が止まると、イライアス王子が、悲しそうな顔をした。
「イ、イライアス・・・ボーキ・・サイト・・・ホルン・・・メーネ・・・です。」
震えるような声で名前を伝えてきた。
「まだ、伝える事があるでしょう。ホルンメーネでのモーモー君の役割を伝えなさい。そうしないと、鞭を置きますよ。」
「いや~!」
マジかい!?
そして、カイル様の鎖を持っていない手には鞭が握られているのかい!?
「ホルンメーネでは、第一王子をしていた元、王太子です。」
苦しそうに述べた後、すぐにまた、嬉しそうな顔をする。
カイル様の鞭を持っている手が動いているからだ。
鞭で叩いているようには見えないのだが、カイル様はイライアス王子に、一体何をしているのだろうか・・・。
踏み込んではいけない壁があるきがするので、聞くのはやめよう・・・。
「カイル様。イライアス王子に話しかけてもいいでしょうか?」
私は、カイル様に声をかける。
「モーモー君でいいですよ。もう、王子という感じには見えないでしょう。」
『ドS』のご主人様に、『ドⅯ』の奴隷に見えます。
『モーモー・・・さん?』
私は、イライアス王子を呼んでみた。
「も~」
と、牛の鳴き声で返事をしてくれた。
「えっと・・・」
私は戸惑いを見せる。
これって、普通の反応よね。
「私たち人間の言葉は、理解できますから遠慮しないで話しかけてください。」
カイル様は、優しい微笑みを見せながら、私に声をかけてくれた。
その・・・カイル様。
彼も、イライアス王子も間違えなく人間です。
「もしくは、サーシャさんも鞭を持ちますか?そうすると、質問の答えが全て、こちらの都合に合わせてくれる家畜となりますが・・・。」
「いいえ、結構です。」
即答です。
「モーモーさんの継母である一族。スパソイド侯爵家について聞きたいことがあるのです。」
私の言葉に、イライアス王子は少し顔を引きつかせる。
「家畜。そんな顔をするとはいい度胸だね・・・。」
「モモモモモーッ」
カイル様の一言で、イライアス王子は、恐怖の顔をしながら首を左右に
振る。
「わかってくれて良かった。モーモー君を豚小屋で寝かすのは忍び難いからね。」
カイル様。あなたはイライアス王子を豚小屋で寝かしていたのですか?
あれ?
そもそも、ダンビュライト城で豚を飼育しているの?
私は、カイル様の方を見ると、カイル様は満面の笑みで私を見る。
・・・はい、わかりました。
私は知ってはいけない世界がある・・・と、いう事ですね。
前世が異世界である私は、それを理解しないといけません。
おっと、いけない。
前世が異世界でなくても 理解をしないと・・・ですよね。




