信頼と必然
王宮からの招集があり、タルクウィーニオ王子がドラゴンの絆の文様が存在することを知ってから2日目。
今はルベライト城に帰ってきている。
ルベライト城に帰って来て、そのままマリーとモーリスの部屋へと向かっている。
マリーの赤ちゃんの名前を伝えるのと、私が前世持ちだという事を伝える為。
その為に、王都から帰還する際、王都の屋敷にいたフィオナも一緒に連れて来ている。
フィオナも同じ前世持ちだから、何かあったらサポートをして貰うために、一緒に来て貰った。
”カツカツカツ”
と、足音がやけに響いていると感じていた。
幼い頃から私に仕えてくれているマリー。
辛い時も、悲しい時も支えてくれて、主従関係以上のモノを感じている。
だから、マリーに私が前世持ちだと言っても許してはくれる。
それは、解っている。
でも、なんだろう・・・この心の晴れないのは?
「サーシャ様、どうしたのですか!?」
声をかけてきたのはフィオナだった。
すぐに、ヘンリー様が、私を抱きしめた。
気が付が付かないうちに、私が涙を流していたようだ。
「・・・サーシャ。」
ヘンリー様が、私の涙を拭ってくれる。
「大丈夫だ・・・マリーは、きっとわかってくれる。」
優しく諭してくれるヘンリー様。
私は、首を左右に振る。
「マリーが、解ってくれる。それは、知っているのです。でも・・・でも・・・。」
私は、ヘンリー様を見つめながらいう。
「それは、主従関係だから当然の事で・・・でも、私は、そんな事でわかって貰うのは・・・辛い・・・寂しい。」
せっかくヘンリー様に拭って貰ったのに、再び涙が溢れだす。
「マリーに避けられるのが怖くて、話せないでいた。でも、それは私の言い訳で・・・マリーは、主従以上のモノを与えてくれていた。」
マリーに支えられてたから、これまで辛くても、悲しくても頑張ってこられた。
一人じゃないと思ったから・・・。
どんなに心強かったかわからない。
それに対して、私はどうだ。
支えるのは当然と、胡坐をかいていたのではないか?
信頼ではなく必然で、マリーを見ていたのではないか?
最低だ。
なんて私は、最低な人間なんだろう。
マリーには幸せになって欲しいと思う。この気持ちは主従を越えてのモノであるのに・・・やっている事は、主従関係の範囲での行動。
違うのなら、とっくに前世持ちだと伝えていたはずだ。
本当にマリーの幸せを願うのなら、嫌われても真実を話すべきだった。
それが出来なかったのは、マリーを思うのではなく、自分の弱さを思いめぐらしてしまった結果だ。
つまり、自分の事しか考えていないと一緒。
マリーに嫌われたくない。
そう思う事も、マリーに対して甘えている。
信頼関係って・・・。
こんなにも、心を締め付けるモノなんだ。
こんなにも、大きな存在なんだ。
私は、これまで表面上の建前しか知らなかった。
なんて、情けない人間なんだろう。
こんなにも、良くして貰っているのに・・・。
こんなにも、信頼を頂いているのに・・・。
私は、何も示してはいない、恐怖で怯えているだけの存在なのだ。
「私は、マリーと本当の信頼関係を築きたい。当然の賜物でこれからも関係を続けていくのは・・・嫌だ。」
「・・・そうー、だな。」
ヘンリー様は、優しいが若干ぎこちない口調で言いながら、私お頭を撫でた後。
私の体を後ろに向けさせた。
「?!」
「・・・サーシャ様?」
そこにいたのは、マリーだった。