跡、後が・・・・
「タルクウィーニオ王子の最終目標が国王となる事だ。その為にドラゴンの文様の入れ墨して国王となったとして、その入れ墨はどうするんだ?」
ハミッシュ陛下が、フレディ様の方を見ながら問いかけるように言う。
「そんなの、その部分の皮膚を焼けばいいでしょ。」
「焼いた跡が残るよな。その跡があれば噂になろう。『ドラゴンと契約をしたユニコーンの王』と、そんな国王をユニコーンの国民が信用するのか?」
フレディ様が黙ってしまった。
「もし、ドラゴンと絆を結んだ物であるなら、国王となった時に、絆を結んだドラゴンを殺せば、文様は綺麗に消える。噂が立とうが、噂で終われます。」
つまり、証言者を片っ端から消せばいい。
それこそ王太子になった時にでも・・・。
「キマイラ作製中に、たまたまドラゴンと絆を結べたと見ていた方がいいのか・・・。」
マティアス様が困ったように言う。
それも、そうだろう。
だって、ドラゴンの言葉がわかるのだから、タルクウィーニオ王子は、ドラゴンの通信が丸聞こえなのだ。
「重要な内容は、これから、気を付けないとならないな。」
「面倒くさいな~。」
ハミッシュ陛下の言葉にフレディ様は、皆が思っている事を言う。
何せ、注意することを伝えるのも、ドラゴンなら一日もかからないで済むことを、文書を伝えたい者たちに、その数の文書を書き、郵送して、その者に渡り、その文書を見るまでという、途方もない時間がかかるのだ。
一人ひとりでなく、地域にしたとしても数が多い。
それも、どこにいるかもわからないタルクウィーニオ王子に、判らない様に伝達するという芸も必要になるのだ。
「タルクウィーニオ王子の首を獲って、ホルンメーネに送りつけるか?」
フレディ様が、サラッと言ってのける。
「そんな事をしたら、ドラゴンの国とユニコーンの国との全面戦争になりかねないだろう。絶対にダメだ!!」
ハミッシュ陛下がフレディ様を静止させる。
「そのような事をして、苦しむのは民です。民の生活を守る者がそのような事をなさるのは許しません。」
カリスタ様から、怒りの念がフレディ様に向けて放たれる。
優しさが駄々洩れのカリスタ様が、怒る姿を見るとは・・・驚くよ。
「言葉の綾でも、言ってはいけない事を言いました。ごめんなさい。」
素直にフレディ様が謝る。
「タルクウィーニオ王子さえ捕らえられれば、ホルンメーネからの攻撃は無くなると思います。」
私は、席を立ちあがり、ハミッシュ陛下に伝える。
「そうだな、タルクウィーニオ王子の商会の力があっての、ドラゴニアへの攻撃だからな。必ず生かして捕らえなくてはならない。それは、解っているな。」
ハミッシュ陛下の言葉に、一同は同意した。
「タルクウィーニオ王子を指名手配にすることを、お勧めします。」
「そんなことをしたら、ホルンメーネ国が黙ってはいないわ。」
カイル様の一言に、私は即、否定をする。
「大々的にタルクウィーニオ王子を指名手配にしたら、ホルンメーネ国から苦情がくるわ。」
「お互い様ではありませんか?こちらはキマイラ事件に、ドラゴンの大樹の襲撃など、苦情をホルンメーネに送っているのですよ。」
カイル様が、私の否定的な言葉に反論を入れた。
「ホルンメーネ国の人間性を知らないのですね。ホルンメーネ国の人間性は、自分たちが他者にした攻撃は、正しい行いなので、苦情を言われる筋合いはないと思います。逆に攻撃されれば、苦情は大々的に大きなモノとして扱い、時に嘘をでっちあげる事もあります。」
本当に厄介な国なのだ。
だから、関わりあいを持たない方がいい国でもある。
「本当に厄介なんだよね~。」
フレディ様が、カイル様の肩に手を置き、あやすように言う。
「だからこそ、じわじわと貶めるのって、楽しいと思わない・・・どうかな?」
フレディ様・・・そこ・・・息子様をあやしているとは言えないわね。
「ふふふふっ」
「ふふふっ」
二人して、不敵に笑わないでください!!
「公でないけど、タルクウィーニオ王子を生きて捕らえる。それでいい
よね。」
不敵なニコニコの笑顔のまま、ハミッシュ陛下に顔を向けて伺うフレディ様。
「・・・それしかないだろう。」
と、ため息交じりに、若干諦めモードが入った感じにハミッシュ陛下が言う。
「これで、この会議は閉廷でいいか。」
ヘンリー様の質問にハミッシュ陛下が頷く。
”がしっ”
と、いきなりヘンリー様に腕を掴まれる。
「ヘンリー様。どうなさいましたか?」
私は、実感嫌な予感をしながら聞いてみる。
「王宮で用意をしてくださった部屋へ向かおうな。」
そう言い、メイドに案内を頼むヘンリー様。
メイドは、すぐに案内をする。
「いや、まだ、聞くべきことがあってもいいのでは?」
「閉廷と言っただろう。」
私は、ヘンリー様に腕を引かれ歩きながら聞くも、歩む速度を変えることなく、連れて行かれる。
「待って、心の準備が出来てません!!」
「あっても、なくても、同じだと気づこうな。」
気づきたくもありません!!
◇ ◇ ◇
「行ってしまったな。」
「そうですね。」
さっさと部屋を出て行ったヘンリーとサーシャ。
開いたままの扉を見ていた。
「失礼ながら、タルクウィーニオ王子の文様は何色の文様ですか?」
と、マティアスがラスキンに聞く。
「白だと伺っています。」
その一言に、反応するフレディとカイル。
「父上・・・本当にやりがいのある仕事が舞い込んできたようです。」
「そうだよね・・・。」
そして、再び不敵な笑いが部屋に響く。
「その・・・一応伝えておきますが、タルクウィーニオ王子と絆を結んでいるとされるドラゴンは『ディスノミア』という名前です。」
ラスキンさんが、オドオドしながら言う。
「『デス』のみな・・・いい名前ですね。」
「そうだね。」
『デスノミナ』でなく『ディスノミア』な・・・ダンビュライト親子よ。




