待ち遠しく、待ち狂おしい
王宮へ着くと、すぐに円卓会議をする部屋へと案内された。
円卓に設置された一際豪華な青い椅子。
その向かって左側にある椅子が黒いという事は、キンバーライト公爵家がこの場を陛下に要望したのか・・・。
それよりも、円卓に設置された緑の椅子が2脚用意されている事が気になる。
だって、マリーが赤ちゃんを産んでから、すぐにキャサリン様とマティアス様は、クローライト領へと帰って行った。
前日から、マリーの陣痛であまり眠れていない中で、クローライト領に戻ったのだ。
クローライト城に戻り、溜まっている仕事を片付けで、ろくに寝ていない中で作業したに違いない。
そして、王宮からの招集だ・・・・。
無理してるし・・・無茶している。
まったく、2人にご足労かけまくってまでも、必要な内容なのかしら?
それも、私は必ず参加って、イリス帝国関連?ナーガ王国関連?
もし、くだらない内容だったら会議を途中退場してやる!!
「僕たちが二番手なんだ・・・。」
お部屋に入って来たのは、ダンビュライト領から来たフレディ様、クリスティーナ様、カイル様だった。
「みんなが遅いのなら、王都でもこふわを食べて来れば良かったね。」
フレディ様の提案に、ダンビュライト家の人々は頷いた。
どうやらこの御三方は、まだシュークリームを食べたことがないようだ。
「あの、すみません。」
と、私は、部屋にいるメイドに声をかけると、こちらに来てくれた。
「王宮に、もこふわをご用意すること出来ますか?」
「はい、出来ますよ。」
メイドの言葉に目を輝かせる3人。
そんなに楽しみにしていたんだ・・・。
メイドは、微笑ましい顔をして、ダンビュライト家の3人の為に用意をすることを約束してくれた。
「もし、評判通りに美味しければ、ピューゼンにも広める宣伝をピューゼン王家にするといいよ。」
「そうですね。楽しみですわ!」
フレディ様とクリスティーナ様は、2人でシュークリームの宣伝について語り始めた。
その二人を見ながら、私はメイドにもう一つお願い事を言いにメイドの所へと行く。
メイドは、ポケットからメモ用紙を取り出し、私の言っている事をメモする。
「ありがとうございます。サーシャ様。早速、用にをさせます。」
そう言うと、嬉しそうに部屋を出て行った。
「サーシャ。メイドに何を頼んだんだ?」
と、席に戻る私に声をかけて来るヘンリー様。
私は、自分の口の前に指を一本出す。
「ナイショ!」
と、ウィンクを付けて返答をする。
「・・・夫婦に内緒はいけないな。」
ヘンリー様は、口の前に持って来た私の手を掴み引き寄せる。
「教えないとキスする。」
”チュッ”
言っている傍からキスしているのですが。
「すぐに判る事なのにする意味ありますか?」
「あるからしているのだが・・・。」
”チュッ”
だから・・・人前で、堂々とキスをしないでください!
「どんな意味なの!」
「それは、俺がサーシャにキスをしたからに、決まっているだろう。」
・・・・・絶句。
この言葉があっているだろう。
それにしても、ヘンリー様のたまにある俺様行動は、どう対応すればいいのか分からなくなる。
だから、近づいて来るヘンリー様の顔を私は、両手で自分の口を塞いで防ぐ。
”チュー”
おいおい、今度は耳を甘噛みしてきたよ。
「っ・・・だから、嫌っ!!離れて!!」
私は、ヘンリー様を押し、椅子から立ちヘンリー様から離れる。
「どこへ行く」
「皆さんが来るまで、個室に入っています。」
私は、部屋から出ようとドアに向かう。
「個室なんて用意してくれるわけないだろう。」
「『お手洗い』という名の個室に籠るだけですので、ご安心ください。」
トイレは特別に用意して貰うまでもない個室でしょう!
「俺も一緒に入ろう!!」
「それでは意味がないでしょう!」
私は、ヘンリー様を睨みつける。
”チュッ”
だーかーらー、キスしない!!
人前でしょうが!!
「まあまあ、仲がよろしいことで・・・。」
クリスティーナ様が、微笑みながら声をかけてくれた。
「トイレに入れば、数時間帰ってこなくなるから、行かないで欲しいよね~。」
呆れた顔でフレディ様が言って来る。
数時間戻らないって、どういう事でしょうか?
「サーシャ殿。俺は両親で慣れていますから、ここでいちゃついといてください。」
『どうぞ』と手を差し出し、椅子に座るように促しながらカイル様が言う。
「サーシャ。ヘンリーに肌を重ねなくなって何日になる?」
フレディ様、いきなりなんですか?
私は、口をパクパクしながら、その質問自体に驚いていた。
「学園生活で、日々我慢をさせられ、やっと長期休みとなったのだ、爆発するに決まっているだろう。それをお預けされると、どうなるか考えられないのかな?」
フレディ様・・・偉そうに言わないでください。
私は、みるみる自分の顔が青ざめて行くのが、鏡を見なくても分かった。
「すみませんが、この後ルベライトの2人の為に、部屋を用意してあげてください。」
おいおい、カイル様。勝手にメイドに頼まないでください。
そして、メイドも承知したように、部屋を出ないでください。
「我慢してくださいねヘンリー様。」
クリスティーナ様。ニッコリ笑顔でヘンリー様に言わないでください。
「サーシャも、頑張ってね!」
天使の様に可愛くウィンクして言わないでくださいフレディ様!!
「サーシャ。顔が青い感じがするのだけどどうしたの?」
部屋に入って食たのはキャサリン様とマティアス様だった。
「母さま!」
この会議が終わったら、キャサリン様の所へ逃げよう。
私は、2人に近づこうと向かう。
「逃げても無駄だとも、気付こうね。」
向っている耳元でフレディ様が囁いた。
一瞬でその場で止まる。
「サーシャ。本当に大丈夫?」
「大丈夫ですよ。」
キャサリン様の質問に、心とは裏腹の答えを口にしていた。
私・・・この後、どうなってしまうんだろう。




