ルベライト公爵家の汚れ
ルベライト公爵領の領都ルベルタ。
モクモクと煙を出ているのは湯けむり。
ここは温泉の出る街なのだ。
”ブシュウウウウウ・・・・”
と、崖のてっぺんに行く手前から間欠泉が天高く湧いてきた。
その温泉を崖のてっぺんでカバーするようによけて、その下に建てられている建物。
建物の手前も2箇所温泉が湧き出ている。
それを大きな階段に流し温泉の温度を冷ましている。
この3箇所の温泉が湧き出る居城がルベライト城。
言わなくてもわかると思うが別名『温泉城』である。
私は、ハミッシュ陛下の書状と、ナイジェルさんからの書状の2通を携え、ルベライト公爵に会いに来る。
まだ、公爵の位をヘンリー様に譲っていなく、ヘンリー様の父エリック様が公爵をしていた。
朱色の毛先が跳ねている髪に茶色の瞳。
執務室のテーブル席のソファーに座る。
2通の手紙を見る。
「来てくれて感謝するサーシャ・カーネリアン。」
エリック様は、マブ・ラリマー邸の事を聞いてきた。
私は、クレシダが亡くなってしまったが、生まれ変わって再びナイジェルさんと絆を結んだことを伝えた。
「クレシダが生まれ変わって戻ってくるとは奇跡だね。」
と、エリック様が言い。2通の手紙を再び見返す。
「・・・うん。君はいい風を運びそうだね。よろしく頼む。」
エリック様は、ニコっと微笑み歓迎をしてくれた。
「過度な期待はしないでください。」
私はつい言ってしまった。
だって、『いい風』って何?
私、扇風機でもないし・・・この世界に扇風機ないか。
私・・・扇子や、うちわじゃないよ~。
だけど、エリック様は、だだ笑うだけだった。
・・・私をここに連れてきた人、ハミッシュ陛下め~!!
給料を請求してやる~!
二重どりだ~!!
そして、私は侍女の部屋に案内をされることになった。
◇ ◇ ◇
プリティー度がアップしてます。
くるぶしまでのスカート丈が、ひざ下10センチくらい丈が短くなりました。
色も灰色から、ワインレッドのワンピースに。
エプロンも裾に平行していた物が、楕円型を半分にした形のエプロンになりました。しっかりフリル付きです。
襟にはワインレットのリボン付き、ワインレットのリボンは頭のフリルの髪飾りにもワンポイントで付いてます。
コスプレ度増しました。
ですが、しっかりとメイドとしての作業着です。
さて、再び貴金属入りワンピースは金庫へ行ってもらい。
ルベライト公爵家のメイド服を着ました。
ルベライト城に入り、メイド服をチラッと見た時から着る予想はしてましたが、ラリマー邸のメイド服より緊張します。
早く慣れて欲しいモノです。
まずは掃除を任されました。
トイレ掃除です。
”クスクスクス”
と、メイドの嫌な笑い声がする。
はいはい、新人いじめってやつですね。
でも、安心してください。
私、前世で特殊清掃のバイトを3年半してましたから、トイレ掃除はお手のモノです。
鼻歌付きでトイレ掃除に着工する。
次は下水の排水溝掃除ですね。
ラジャーですよ。
しっかりマスクをつけて掃除をしましょう。
そういえば、前世でたまたま学校の下水の掃除をやらされた際に、排水溝の泥を農業学科の人に持って行ったら感謝されたっけ。
なら、挨拶がてらに庭師の所へ持って行きますか。
やはり、庭師にお礼を言われ敷地内のある場所に案内されました。
肥料を作っている無人の施設でした。
まあ、悪臭ですから無人施設になりますよね。
庭師の方に言われた通りに、大きな容器に排水溝の泥を入れる作業に移る。
その作業を終え、使ったバケツを洗い終える頃には、空は真っ暗となっていた。
7,8,9・・・一個足りない。
怪談じゃないがバケツ10個使用したはずが9個しかないのよね。
まあ、暗いから見つけにくいし明日でいいか。
私は、使用人専用の扉から中に入ろうと向かう。
”ドシャーーッ カラリンッ”
私の頭上からヘドロ状のものが頭上に落とされ、明日探そうとしていたバケツが落ちてきた。
私は、下水の排水溝の泥を浴びせられたのだ。
「うわー、汚い~。屋敷が汚れてしまうから扉を閉めなさい。」
と、言う女性の声がする。
そして、カチャリと使用人の扉の鍵が閉められた。
「・・・。」
ここまで、するとはね・・・・。
流石に、前世で特殊清掃の経験があろうとも、新人いじめの使用人の清掃まではできなさそうだわ。
これがハミッシュ陛下が言っていた光が無くなったって事かしら?
・・・陰険に付き合えってか。勘弁してよ~。
給料二重取りだけでなく、破格のボーナスを頂いても足りないわよ。
・・・特別手当を踏んだくる?
それは、当然のことだったわ。
下水の排水溝の汚れまみれになった私は、いろいろと考えを巡らせ汚れまみれという現実から逃避していた。