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おかえりなさい

  湯けむりが立ち上がっているのが見える。

 ”プシュシュシュー”

と、間欠泉から温泉が湧きあがっているのも望める。

 そして・・・大量のドラゴンが、辺り一帯に飛んでいるのも見える。

 ドラゴニアが見えてきた辺りから、徐々にドラゴンが一緒に飛行するようになっていた。

 ドラゴンの長であるコスモを心配しての飛行だろう。


 ルベライト城の敷地内に降り立つと、周りを飛んでいたドラゴンは、そのまま旋回をして帰る者と、そのまま温泉に入りに行く者。そして城の敷地内に一緒に降りる者もいた。

 「ヘンリー!!」

と、駆け付けるエリック様とヴァネッサ様。

 エリック様がヘンリー様を抱きしめ、少し遅れたヴァネッサ様もその上からヘンリー様を抱きしめる。

 「良かった・・・無事でよかった。」

 安堵するエリック様の声が聞こえる。

 その声に、目を潤ませていると、私の所にゆっくりと来る女性。

 「サーシャ。」

と、私を抱きしめてくる。

  「母さま。」

 私を抱きしめたのはキャサリン様だった。

 「怖い思いをしたな。」

と、その上からマティアス様も私を抱きしめてくれ、目を潤ませた涙が、そのままこぼれ落ちてきた。


 ・・・やっと、帰って来たんだ。


 いや、まだだ・・・約束があった。

 その為に、ナーガ王国には一泊の予定だったはずでしょう・・・できなかったけど。


 私は、周りを見渡す。

 だが、約束をした人の姿はない。

 「マリーは?」

 私が訪ねると、私たちの帰りを待っていた人たちは、ゆっくりと城の方を見る。

 ・・・もう、マリーは赤ん坊を産んでしまったのか。

 「あっ!」

 まだだった。

 お腹の大きなマリーが、城からゆっくと、こちらに向かって来る。

 「遅れて申し訳ございません。」

 「だから、窓からエーギルに乗って降りたら早いではないかと・・・。」

 マリーと一緒に、マリーの夫であるモーリスさんも城から一緒に出てきた。

 「そのような危険な行為は、させられません。」

 2人の後ろにデボラがついてくる。


 「約束・・・守れてよかった。」

 私はゆっくりとマリーに近づく。

 「おかえりなさいませ、サーシャ様。」

 マリーは穏やかに微笑みながら、迎えてくれる。

 「ただいま、マリー。」

 出産に立ち会うと約束した。

 マリーの出産に立ち会うのを進めたのは、デボラとフィオナだ。


 きっと、小さい頃から一緒だったマリーが、徐々に母親になっていくのを近くで感じ取り、参考にして欲しいと言う気持ちからだろう。

 マリーが、モーリスさんを好きになり、綺麗になったのを感じた。

 子が出来て、マリーの顔が穏やかになっているのも見た。

 そして今、母になるのに近づいているマリーは、穏やかさに磨きがかかった様に見える。

 私も、マリーのように、徐々に母に慣れるのかな?

 キャサリン様の様に、ナーガ王国のアンリエット様の様に・・・。

 そして何より、実の母であるステラの様に、母の心が持てるようになるのかな?

 そんな人に・・・私はなりたい。


 私は、マリーの前で膝を折り、マリーにしがみつくように抱きしめる。

 「サーシャ様!」

と、マリーが驚くが、マリーの母の心を持つ元となったお腹の子まで抱きしめたくなったのだから、仕方がない。

 私が、感じ取りたいモノなのだから・・・。

 「お腹の子が、ヘンリー様の生まれ変わりにならなくて良かったです。」

 私は、マリーの一言に驚いて顔を上げる。

 「ヘンリー様の生まれ変わりでしたら、私、どう接していいか分からないですからね。クスッ」

 マリーは、苦笑いをしながら言う。

 「コスモが・・・ヘンリー様が、亡くならなくて良かったわ。」

 「はい。」

と、マリーは、満面の笑みで同意をしてくれた。


 ”フワッ”

 いきなり私の背後から、私を持ち上げる手があった。

 「ヘンリー様!」

 エリック様とヴァネッサ様の感動の再会は、どうなさいましたか?

 「サーシャは、相当疲れたようですから、温泉に入って疲れを癒した方がいいですね。」

 そう言うと、ヘンリー様は私を持ち上げたまま、城の中へと入って行った。

 「ヘンリー様。私そんなに疲れていません。歩けますから、降ろしてください!!」

 私は、ヘンリー様に抱えられながら訴える。

 「いや、疲れている。絶対に疲れている。そんなサーシャを歩かせるワケないだろう・・・安心して俺に身を任せなさい。」

 なんだ、ヘンリー様のこのオーラは・・・何となく、この後どうなるかは、予想出来てしまうのだが・・・。

 いや、ダメだ。

 「ヘンリー様。お土産話を皆さまにしなくては・・・。」

 このままヘンリー様に押されては、明日になる。

 きっと、そのパターンだよ、

 「お土産話は、腐らないから安心しろ。」

 本当に明日になる。

 「いや、安心できません!!」

 「俺も、安心できないと思う事があってな・・・サーシャにしか解決できないから頼まれてくれ、よろしくな。」

 そういい、私にキスをする。

 

 ・・・ここに集まってくださった皆さん。

 申し訳ございませんが、明日までお待ちください。 

 

 

 

 

 

 


 

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