とある公子の、とある懸念の、とある想い
「ほんの1,2分だったが、サーシャの瞳の色が金色だった時があった。」
1,2分と口にしてしまったが、ほんの一瞬だったかもしれない。
だが、あの時は、サーシャが倒れた後だったので、そのぐらいに感じられる。
それも、倒れた際の熱が、そんなに高いと思わなかったから、気になっていたのも原因だろう。
「それだけじゃない。ドラゴンの大樹に取り込まれたリオンは、直接会たことのないサーシャに、ドラゴニアの危機を伝えてきている。おかしいと思わないか?」
もし、ドラゴンの大樹の加護というなら、紫色の瞳であるサーシャより、金色の瞳であり、義理の父であるマティアスの方に、まずは危機を知らせるはず。
もし、前世持ちというのなら、こちらもやはり、直接会っていて、今現在はドラゴニアの国王をしているハミッシュ陛下に伝えるべきだ。
そして、唯一の共通点と言えるイリス帝国出身者であっても、実の母であるキャサリン殿に伝えるべきだ。
それも、サーシャの血筋から言えば、半分はナーガ王国の血筋。
あまりにも、おかしい。
だが、リオンはサーシャを頼っている・・・何故だ?
「サーシャの血統によるモノではなかろうか・・・サーシャの父親は、金色の瞳をしておったと、いうではないか。」
確かに、サーシャの父親であるデュークは、金色の瞳だった。
その為に、クラウンコッパーと言う、ドラゴニアでは印象の悪い姓名が与えられたのだが・・・。
「それなら、キンバーライト領のバサルト侯爵家を、ドラゴンとしてどう思う?」
バサルト侯爵家は、紫色の瞳の子は、必ず黒髪で生まれる。
逆を言えば、黒髪の子は紫色の瞳で生まれて来るのだ。
だから、バサルト侯爵家の当主となる者は、黒髪の嫁、もしくは婿を向かい入れる傾向がある。
確か、現侯爵の2人の子供は、共に紫色の瞳をしていて、前の侯爵は、息子がいたにも関わらず、娘が紫色の瞳だった為、婿養子をとり、息子は養子に出したはず。
相当、紫色の血統を大事とみる家柄だ。
「うん・・・深く考えたことはなかったのじゃが・・・。」
ジジイは、考え込んでくれた。
まあ、こうも考え込むなら、バサルト侯爵の紫色の瞳は、さほど気に留めるモノではないのだろうな。
「マティアスの方が・・・金色の瞳の方が、印象がよいかのう~。」
そうだろうな。
俺も、そうだ。
バサルト侯爵家は、『是非、バサルト家の血統をルベライトの血統に加えて欲しい』と、言っては、娘を俺の嫁にと推してきたよな。
迷惑極まりなかったが。
本当に、サーシャに出会えて俺は幸せなんだな。
「じゃが・・・こうして考えてみると、サーシャは特別な存在と言えば、そうなのじゃな。リオン程ではないにしおっても、近いモノがあるのう。」
やはり、ジジイもそこに行きついてしまったか・・・。
「それって、リオンの様に、サーシャもドラゴンの大樹に取り込まれるのではないか?」
そう・・・俺は、あの日からずっと、それが気がかりでならない。
「俺は、もうサーシャに、ドラゴンの大樹に近づいて欲しくないと思っている。」
「それは、つまり、サーシャがルベライトの姓を名乗らなくてもいいと思っておるのか?」
俺は、頷き『そうだ』と、いう事を伝えた。
「サーシャが、俺の傍にずっといてくれる方が大事だ。誰にも、何ものにも、サーシャを渡す気はないし、絶対に渡さない。」
渡してなるものか、やっと出会えたのだから。
「だから、ジジイ。コスモの怪我はほぼ完治をしているから、サーシャにわざわざ祝福のフレアの施しをさせない様に、ドラゴンたちに説得して欲しいのだが・・・。」
それは、毒や怪我の後遺症がでて、コスモが危険にさらされたら、それはそれで、祝福のフレアの施しをするしかないが、出来る限りサーシャにドラゴンの大樹に近づかせない様にしたいことを伝えた。
「わかった。ヘンリーの言う通りにしようではないか。」
「ありがとう、ジジイ。」




