金色と紫色
弓矢の攻撃を考え、前回よりも空高く飛んでいる。
そして、何故かヘンリー様が、何度も私の額にキスを落としている。
このイチャコラを横目で見ているグレアム様とハワードさんと、チェスターさん。
非常に恥ずかしいのですが・・・。
「へ、ヘンリー様。コスモは大丈夫ですか?」
私は、デコチュウを辞めて貰うために、ジジイ様の隣で飛んでいるコスモの話をした。
「問題なく飛べている。ジジイが来てくれて、相当ご機嫌なようだ。」
「それならいいのですが・・・でも、ドラゴニアに帰ったら、ドラゴンの大樹へ行って、祝福のフレアを施した方がいいのでは?」
どうしたのだろうか、ヘンリー様が一瞬固まったような身動きをしたのだが・・・。
「そこまでする必要はない。」
「ですが、コスモはドラゴンの長です。コスモが良くても、周りのドラゴンが許さないのでは?」
ヘンリー様の答えに、ハワードさんが言って来た。
「だが、ユニコーンの角を使ったんだ。わざわざサーシャにそこまでさせなくてもいいのではないか?」
私は、そんなには気にしないけど・・・コスモが危険な方が、むしろ怖い。
だから、どちらかというと、ドラゴンの大樹に行って、施しをしたいのだが。
私が、そのことを言おうと、ヘンリー様に顔を向ける。
・・・いきなり、キスされました。
それも、唇に・・・そして、濃厚に・・・。
だから、非常に恥ずかしいってば!!
◇ ◇ ◇
「ヘンリー。どうしたのじゃ。早う眠らないと、朝起きるのが、きついのではないのではないか?」
ジジイが俺に言って来た。
空は真っ暗で、真夜中と言える時間帯となっていた、
ナーガ王国に向かった際に立ち寄ったリンドル国のエメリー修道院に、ドラゴニアに帰る際も使わせてもらった。
前回のように、外に絨毯を敷いて、その上にコスモが寝ている。
怪我が治っての初めての飛行が、長距離だ。
隣で、ジジイが飛んでいたので、嬉しそうに飛んでいたものの、やはり疲れたのだろう。ぐっすり眠っているように見える。
「ジジイ。サーシャをどう思う?」
「サーシャが大事な存在なのは、判っておそうが。」
うーん。聞いている内容が微妙に違うのだが、即答で答えて来やがたった。
ジジイにとっては、サーシャが生む男の子が、己の命綱だし、ドラゴニアにとってもそうだといえる。
「なあ、もし、俺に弟が出来たらどうするのだ?」
両親の間に男の子が、生まれるかもしれない。
「ヘンリー。どうしたのじゃ。その様な事を聞きよって・・・。」
心配そうにジジイは俺を見て来る。
「先ほどまで、サーシャを独り占めしきっておった者がいう言葉ではないのう。」
サーシャの独り占めは、いつもだろうと言うべきだろうか・・・。
そんなことをジジイに話す為に、わざわざ寝顔の可愛いサーシャから離れて、ここに来たんじゃない。
「ジジイ。クローライトのマティアス殿をどう思う?」
「先ほどからなんじゃ。どうしたと言うのじゃ?」
ジジイは、少し強めに俺を追求してきた。
「ジジイは始めてサーシャに会った時。サーシャをどう思った?」
生まれ変わったクレシダと、ハワード殿を連れて行った時だったな。
「ヘンリーの嫁候補かと、思うたのじゃが・・・。」
「そんな事を思っていたのかよ・・・。」
・・・なんというか。
両親といい、ジジイといい、俺が全く意識をしていない時期から、サーシャを俺の嫁候補として見ていたとは・・・。
そんなに俺は、解りやすいのか?
「そうじゃなくて・・・サーシャが、あまりにもドラゴンに好かれ過ぎている気がするのだ。」
「それは、紫色の瞳をしているからのう・・・ん?」
ジジイは言っている傍から、気づいたようだな。
「金色の瞳以上に、サーシャは好かれていないか?」
「言われてみれば・・・クレシダがいい例じゃわい。」
そう、クレシダはサーシャを相当気に入っている。
クレシダの初めての温泉清掃の時は、『サーシャに早く会いたい!』と、遠くの方からずっと言っていた。
そして、着くと同時に、サーシャに突進して、サーシャを舐めまわしていた。
相当なモノだ。
「金色の瞳と勘違いしておる並みに、慕っておるよのう。」
「勘違いか・・・。」
確信就くような一言を言ってくれるよな。
「あの日・・・商人に変装したホルンメーネの者たちが、ドラゴンを大樹を攻めて、守り切った翌日。」
そう、ドラゴンの大樹の攻防戦で倒れたドラゴンを死なせない為に、サーシャがドラゴンの大樹の力を借りて、祝福のフレアを発生させて倒れた翌日。
「ほんの1,2分だったが、サーシャの瞳の色が金色だった時があった。」