モチモチ
「ヘンリー様、今日はどちらへ行かれていたのですか?」
と、小母さんの会話に、ヘンリー様はセドナの町へ行ったことを伝える。
「トウモロコシの農産業がうまくいってなくて困っていると町人が言ってきてな」
セドナの町はトウモロコシを作っているが、コーンスープや、サラダの中に入っているとか、用途が少なく売れ行きがいまいちで町人は困っていることで、別の農産業に移行しようとしている事を言った。
「もったいない!!」
口が滑った。
だが、後悔はしない。このスイーツにあってうれしい物を作るのに、あった方がいい材料なんだから
「トウモロコシから、こ・・でんぷん粉を作ることが出来ます。それなのに別の農産業にするのはもったいないとしか言えません。」
でんぷん粉、前世語で、コーンスターチもしくは片栗粉である。
私は小母さんに頼んで厨房に入れてもらう。
そして、白玉粉と砂糖それに、ジャガイモから作ったでんぷん粉を使い料理を作る。
「ご主人。すみませんが、お土産スイーツのあれを頂いてもよろしいでしょうか?」
ご主人は言われるままに『どうぞ』と、言ってくれた。
では、遠慮なく使わしていただきましょう。
私は厨房で作業をする。
そして、ヘンリー様の前にだす。
「こちらが、ここの店のお土産スイーツのどら焼きです。」
それは、知っていると返されてしまった。
だが、しか~し。
「そして、これが求肥の入ったどら焼きです。」
私はもう一つの皿を出す。
「どうぞ食べ比べてください。」
私は、ご主人と小母さんにも渡す。
小母さんがまずは食べてくれた。
「おいしいわ~。モチモチ食感がいい味を出している。」
その一言で、2人は食す。
2人とも、一瞬止まったが、すぐにペロリと食べてしまった。
「貴重なでんぷん粉を拝借してしまってすみません。でんぷん粉の産地は北の領土のはずなのに・・・。」
ご主人は許してくれた。
逆にお礼を言われたほどだ。
「実は、求肥の残りがまだありまして・・。」
私は、求肥をヘンリー様のお汁粉の中に小さくちぎって入れる。
「何をする!」
「食べてください。・・・まあ、食べるしかないですが。」
ヘンリー様は、恐る恐る口に入れる。
求肥入りのどら焼きを食べた時のように一瞬止まる。
「私の頼んだクリームあんみつにも求肥合うのですよ。」
白玉のモチモチと、求肥のモチモチのダブルのモチモチがあると幸せなのよね。
私は、紙にコーンスターチの作り方を書いた紙をヘンリー様に渡す。
「もし、おいしいと感じたら、セドナの町へ行きトウモロコシの農産業を変えることをやめさせてください。」
私はヘンリー様に訴えた。
ヘンリー様は困惑していた。
まあ、別の農産業を何にするか検討していたのだろう。
でんぷん粉はジャガイモでも作れる。
ジャガイモの方が表面的な用途がいろいろあるからな~。
「もしくは、ジャガイモの農産業を進めてください。・・・その方がうれしいですか?」
私はどうやら痛いところを突いてしまったようだ。
「小母さん、ジャガイモ一個いただけますか?」
そう聞いて、小母さんからジャガイモを頂き再び料理をする。
「ポテトチップスです。」
私は再び料理をだす。
”パリンッ”
と、音を立てご主人が食べる。
「おいしい。」
ヘンリー様も食べて、驚きを見せる。
「どのような形でもいいです。でんぷん粉をルベライト領で作れるように勧めて頂けないでしょうか?きっと、食卓の彩を飾れるはずです。」
私は、断言する言い方で言う。
だって、料理のとろみに片栗粉もしくはコーンスターチは必要でしょ。
「ありがとう、検討してみる。」
「まずは、北の領土へ行ってでんぷん粉工場の見学ですかね。」
私が言うと、ヘンリー様はそうすると言い。残りのお汁粉を食べる。
「サーシャと言ったか、俺は、ここによく来るのだが、また会えるか?」
私は、ニコッと笑い。『きっと会えますよ』と、言った。
ヘンリー様が喫茶店『シンシャ』を出て行く。
「ご主人、求肥とポテトチップスの作り方をご伝授しましょか?」
私から言うと、ありがたいと言ってくれた。
本日の料理『求肥』と『ポテトチップス』でございます。
再び、厨房をお借りします。
「そんな簡単でいいのか?」
と、ご主人の声を何度も聞くことになった。
皆・・・知らないと思うけど、前世で料理をしていただけで、今世で厨房にたって料理って、生まれ故郷で数回程度なんだよね。
クリームあんみつを作れるか試したっていう数回。
それで、ラリマー邸で焼きおにぎり風雑炊を披露したんだから、私度胸あるよね。
なんか、騙している感じで真実が伝えられなかったんだけどね。
いろいろと材料を提供してくれたお礼に、でんぷん粉がルベライト領で生産できるようになったら、でんぷん粉を大量に使う『水まんじゅう』のレシピを教えに来ることを約束して店を出た。