隠れたカード
「ホルンメーネでは、エリス。ドラゴニアではアルミナ、もしくはガブロという名で、商会を出しているウィニー・アルミナが、お腹の子の父親よ。」
衝撃的な言葉が、姉さまの口から発せられた。
「ホルンメーネで彼と出会い、彼がドラゴニアで商売をしたいと悩んでいたので、イリス帝国出身である私がサポートをしたのよ。」
「ロゼリス殿が、イリス帝国出身であることは、その男は知っているのか?」
ケルヴィン国王が姉さまに質問をすると、姉さまは『もちろんです』と、答え、迫害されることなく、接してくれた事も伝えてくれた。
「彼と一緒にドラゴニアに入国しようと思ったけど、私はホルンメーネ国から出ては行けなかったので、一緒にホルンメーネを出国すれば、彼の3つの商会もヘリオドール家が調あげられ、廃業させられる恐れがあるから、別々に出国して、ドラゴニアで落ち合ったわ。」
別々にドラゴニアに入国したところで、姉さまがドラゴニアにいると解れば、ヘリオドール家は動く。
だから、ウィニーとドラゴニアで落ち合った後は、野外に出ずに商会で用意をした屋敷に隠れていたのね。
そうまでしてウィニーと一緒にいたかったのか・・・・。
「だけど、ウィニーが、ドラゴンの大樹を攻撃しようと計画をしているのがわかって・・・説得しようとしたのよ・・・でも・・・。」
「無理だったのね。」
姉さまは頷いた。
「ドラゴンの大樹の危機を知らせようと、ルベライト城へ向かっている中、サーシャを絶賛する町の人たちの声で溢れていたわ・・・悔しかった。」
姉さまは、いきなり私の方を睨みつけるように見る
「だって、私たちは、クラウンコッパー公爵家の人間なのよ。ドラゴニアで、それも、聖女リオンの育ったルベライトで、受け入れられてるって・・・おかしいでしょう。だから、サーシャがクラウンコッパーの者だとばらしに言ったわ。」
悔しまぎれの行動だったのか・・・。
「そしたら、それすらも受け入れられているって・・・。」
私を睨んだ顔が、そっぽを向く。
「やってられないわよ。」
姉さまは拗ねてしまったのね。
「ロゼリス殿、お腹の子は、父親である人は知っているのか?」
「いいえ。」
ウィリアム伯父様の質問に答える姉さま。
そう、だろうな・・・。
知ったていたら、無理やり流産コースをたどる事になるだろう。
でも、お腹の子がウィニーの子であるなら・・・。
「思わぬところに、隠れたカードを発見だな。」
ケルヴィン国王が鼻で笑うように言う。
「ジタン。ロゼリス殿の出産チームを起ち上げろ。何が何でも、母子ともに無事に出産を果たせるよう命じる。」
ケルヴィン国王が威厳を示すように宮廷医師であるジタンさんに言う。
「かしこまりました。」
と、ジタンは深々と頭を下げる。
それを見た姉さまは、ちょとんとした顔を見せた。
「タルクウィーニオ・ボーキサイト=ホルンメーネ。ホルンメーネ国の第三王子が、ウィニー・アルミナ正体です。」
私は、姉さまにウィニーというおとこの正体を伝える。
環境の変化も影響されたと思われるが、姉さまが先ほど、ウィリアム伯父様の書斎で、タルクウィーニオの肖像画を見て、驚いて気を失ったのだろう。
その姉さまは今、目を真ん丸くして、今にも目が飛び出すかのように驚いていた。
姉さまは、ウィニーが第三王子だとは知らなかったようだ。