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お間抜けさん

 仕事があるので、コスモが心配だが、ドラゴニアに帰ってきた俺とヴァルナ。

 ナーガ王国では、リュヌの銀に慣れないヴァルナの為に、リュヌの銀を貸して頂いたウィリアム殿に感謝はするモノの、ヴァルナは疲労感の中での帰還だった。

 『コスモたちは、どうしたのじゃ?何故おぬしらと一緒に帰ってこぬのじゃ?何でじゃ?どうしてじゃ?』

と、ドラゴニアに帰ってくるや、今度は、臙脂様からの質問攻めに疲労感を感じていた。

 ウィリアム殿から、コスモが怪我したと知ったら、ナーガ王国に被害が及ぶ可能性があるから、隠しておいて欲しいと言われていたので、ナーガ観光と言ってごまかしている。

 だが・・・。

 『サーシャは、マリーの出産に立ち会うと約束しているのに、ナーガ観光はおかしゅうないか?』

 ・・・そうだったな。

 「コスモが行っているのだ。ナーガ王国として、少しでも国に留めさせたいのだろう。」

 これで、解ってくれるといいのだが・・・。

 

 俺は今、キンバーライト領の領都キンバルの中央役所にいる。

 国家鑑定士の北の総括長の席がある場所だ。

 ここ最近、この席に座る機会が無かったのだが、カティス王太子殿下が役人育成に力を入れいて、長期出頭をしてくる役人に、元教師だった俺が指導官として指導にあたっている。

 なので、コスモの命の危険がない以上、ドラゴニアに戻らなければならなかった。

 ハミッシュ陛下には書面でお伝えしていて、コスモの容態が回復するまでは黙っていて貰うようにお願いた。

 なにせ、臙脂様に知られれば、ドラゴニアとナーガとの国際問題になりかねない。

 だが・・・臙脂殿の視線が痛いと感じる中で仕事をするのは、結構疲れる。

 それも、新たに課せられた仕事となればなおさらだ。

 諦めてくれると嬉しいのだが・・・。

 

 ”ザワザワ”

 臙脂様がいる事態、人が騒いでいたが、尚も騒ぎだしているのだが・・・何の騒ぎだ?

 「ナーガ王国から、帰ってきたんだね。」

と、私の前に現れたのは、次期キンバーライト公爵となられるセシル様だった。

 その横には、セラ様と、セラ様の弟のラスキン殿がいた。

 「でも、ヘンリー様らが、王宮に帰還したと報告が挙がっていませんわね。」

 セラ様が困った感じに言って来た。

 私は、近くに臙脂様がいるので、あくまでヘンリー殿らがナーガ観光をしている旨を伝える。

 すると、3人の顔が暗くなる。

 「何か・・・ございましたか?」

と、私が聞くと、3人は顔を合わせてから、ラスキン殿が口を開く。

 「実は、私の部下にホルンメーネ国へ探りを入れて貰い、ご不明でしたタルクウィーニオ王子の絵を入手しまして・・・。」

 サーシャを手籠めにすると言っていた王子の絵を入手したのだな。

 要注意人物として出回るので、良い事ではないか?

 何故、困った顔をしているのだろうか。

 「まあ、ナーガ王国の密偵もタルクウィーニオ王子の絵を探していましたから、大丈夫かと思いますが・・・。」

 ラスキン殿はため息を付き、一呼吸を置く。

 「コスモの暗殺計画が上がっているのを噂で聞きまして・・・。」

 「それは、ここでは言ってはダメです。」

 私は、ラスキン殿を静止ししようと手をラスキン殿の前に出した。

 『コスモ―――――!!ヘンリ―――――!!サーシャ―――――!!』

 ”ズキンッ”

 痛い!!

 いきなり、頭痛に襲われた。

 目の前にいるセシル様も頭を押さえているのが見えた。

 「コスモの暗殺計画は、失敗に終わってます。」

 私は、臙脂様が近くに居たことで言えなかった事実を3人に伝える。


 「なるほどね・・・だが、そうなると臙脂様は、お間抜けさんだな。」

 セシル様が、穏やかに言う。

 臙脂様が、お間抜けさんとは・・・?

 「セシル様。臙脂様がお間抜けさんだと、どうして思うのですか?」 

 私が聞きたかったことを、セラ様が言ってくれた。

 「それは、今は大丈夫であっても、一時コスモは命の危機に陥っていたんだろう。」

 セシル様は私の方を見て、回答を求めてきたので、『そうです。』と答える。

 「つまり、ヘンリー殿はサーシャ殿を置いて死なないとならない危機に直面していた。」

 その通りだな。

 「それだけでなく、タルクウィーニオ王子もサーシャ殿を狙っていると知るとなると・・・ヘンリー殿はどのような行動に出ると思う?」

 セシル様は、セラ様に問いかけるように言う。

 「ヘンリー殿は、サーシャ様を離さないでしょうね。それこそ、ベッドから出させないぐらい・・・いや、腕の中から離さないぐらいに・・・。」

 「姉さん、下手すればヘンリー様は、サーシャ様に触れていないと許さないぐらいに独占力を全開に、サーシャ様を迫ると思いますよ。」

 ・・・ありえるな。

 「つまり、あんな形相で、2人の前に現われたら、べったりな2人の間を邪魔するかもしれないだろう。」

 「伴侶の絆を結ぶと、いつ妊娠しやすい時期か分からなくなりますからね。」

 呆れたようにセシル様がため息を付く。

 「臙脂様の待望のヘンリー様の子を逃すかもしれないということだ。」

 「そう思うと、確かにお間抜けさんですね。」

 セラ様も、苦笑いを見せる。

 「臙脂様がお間抜けさんだから、未だにルベライト家の者、絆を結べないでいるのですね。納得しました。」

 ラスキン殿も、臙脂様がお間抜けさんと認定をしてしまったようだ。

 なんだか・・・臙脂様が哀れに思えてきた。

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