表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

370/423

お腹が空いては・・・

 黄金のドラゴンの紋章

 そして・・・温もり

 油断したら、とろけてしまいそうな香り

 私は、ヘンリー様の腕の中にいた。

 ベッドの中、ヘンリー様に抱きしめられ眠っていたのだ。

 

 それで・・・いつベッドに?


 ベッドに入った記憶のない私だった。

 ”ザザザザ ザザザザ”

 遠くの方で波音が聞こえる。

 ここは、城塞ウルナムだと思われる。

 

 それで・・・いつ、城塞ウルナムに?


 記憶にない。

 

 私は、思い出すというか・・・似たような事が、過去にもあったなと。

 イリス帝国から出て、ウィリアム伯父様の所へ行き、出されたお茶を飲んで気を失った。

 睡眠薬を盛られたのだ。

 後ほど理由を聞いたら、気を落ち着かせるためにした事だと。

 確かに、イリス帝国から出る際に、気が立っていて、眠れないでいたから、気を落ち着くことが出来たっけな。

 そして、今もそうだ。

 眠った事で、気持ちが落ち着いている。

 ・・・つまり、盛られたということか。

 ウィリアム伯父様から水を渡されて、飲んだのだから、それに睡眠薬が入っていたのだろう。

 面と向かって、気を落ち着かせるために、薬を飲んで一旦寝ろと、言ってくれればいいのに・・・。

 これでは、素直にお礼が言えないじゃないの。

 お礼は言うけどさぁ~。


 私は、目の前に見えるヘンリー様の胸の文様を見る。

 黄金のドラゴンの文様があるという事は、コスモは生きている。

 それも、命の危険はない。

 だって、もし命の危険があるなら、ヘンリー様がこうして私を抱きしめて、眠っているはずはないからね。

 私は、ヘンリー様の黄金のドラゴンの文様にキスをする。

 「っ!」

 眠っていたヘンリー様が、目を開ける。

 「おはようございます・・・ではないですね。」

 私は、朝ならこうも簡単にヘンリー様が目を覚ますわけがない事を伝える。

 「昼過ぎだな。」

 ヘンリー様はそう言い、コスモが矢に刺されてから一日経ったことを教えてくれた。

 そして、私の額にキスをする。

 恥かしくって、戸惑ってしまうのですが・・・じゃないわ。

 「コスモは?」

 「だるさが残る程度だ。」

 矢を射られた当初は、毒を取り除くためとはいえ、コスモを切りつけ、血が流れていた。。

 つまり、コスモは絶賛貧血中というわけだ。

 「毒は、ユニコーンの角のおかげで、解毒されている。」

 ケルヴィン国王にも、お礼をしに行かないとな。

 まあ、まずは腹ごしらえだ。

 浴室で、体も洗いたいわ。

 そうなると、水分を補給しないとね。

 丸一日、何も摂取していないのだから・・・本当に?

 今は夏よ、夏。

 水分摂取をこまめにしないと、熱中症とならない?

 ・・・前世の夏のような暑さはないけど、丸一日、水分を補給してないと、危険でしょう。

 めまい等の訴えがあってもいいはず。

 只今の私。

 喉の渇き・・・ありません。

 お腹が空いてます。

 汗をあまりかいてない?

 いやいや、汗かいて、体がベトベトッて感じになってます。

 そして・・・やはり、概要欄でもいいので、お腹空いてますを入れといてください。

 お腹が、凄く空いています。


 おかしい。

 まあ、おおよその検討はつくけど・・・。


 「ヘンリー様。私・・・今、喉が渇いてないのですが、どうしてか、わかりますか?」

 ベッド上で起き上がりながら言うと、すぐにヘンリー様もベッド上に起き上がり、私を腕の中に引き込む。

 「それは、サーシャが干からびないように、俺が潤いを保っていたのだが・・・。」

 やはりね。

 口移しで水分を飲ませていたのだろう。

 「えっと・・・ありがとうございます。」

 私は、俯きながらお礼を言う。

 ”グルルル・・・”

 恥ずかしさを増長させるように、お腹が鳴る。

 耳まで熱い。俯いている顔に、プラスアルファそっぽを向けるしかない。

 ”チュッ”

 おいおい、私のこめかみにキスするな!

 これ以上、恥かしさをどう隠せばいいのよ。

 「コスモの治療に、ユニコーンの角を出して頂いたのです。ケルヴィン国王にお礼をしに行かなければ・・・。」

 私は、場の雰囲気を変えるために言う。

 「そうだね。」

 「まずは、食事をとって、体を洗わないと・・・。」

 ”ぎゅっ”

 私は、ヘンリー様から離れようとヘンリー様の肩に手を置いたつもりが、ヘンリー様の肩付近の服を掴んでいた。

 私は、目をパチクリする。

 「えっと・・・お礼を言いに準備をしないと・・・。」

 握っている手が緩んでくれない。

 私の手・・・どうしたの?

 「えっと、食事を・・・お礼を・・・」

 目をパチクリしながら、次の行動を言うも、体が動こうとしない。

 「体を洗ってから、食事にしよう。」

 ヘンリー様が、そう言うと私を抱えて立ち上がる。

 「それで、いいのですが・・・。」

 ヘンリー様が、私を抱えて歩き出す。

 「ヘンリー様。どちらへ・・・行くのですか?」

 恐る恐る言う。

 「浴室に決まっているだろう。一緒にお風呂に入ろう。」

 「遠慮します。」

 私は、やっと服を握ていた手が離れた。

 「私が先で、ヘンリー様が次でお風呂を使いましょ。逆でも当然いいですよ。」

 浴室に向かっているヘンリー様に言う。

 「お腹が空いているのだろう、早く食事にしような。」

 「もっと、遅くなる雰囲気なのですが!」

 浴室の扉が刻々と近づく中で言う。

 「そうならない為にも、協力し合おうな。」

 ”ガチャっ”

 浴室の扉が無残に開く。

 「お腹の空いている私に、できるわけないでしょ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ