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お見送り

 「やはり、もう少し、ゆっくりしていけばいいのに・・・。」

 寂しそうにウィリアム伯父様は、私に言って来ってきた。


 姉さまをナーガ王国へ送る為に来たので、ナーガ王国へは一泊の予定で来ているのだ。

 もう少し、ゆっくりしていいとも思うのだが、マリーの出産に立ち会う約束をしているので、ドラゴニアへ戻らないとならない。

 

 アンリエット様の絵を見た部屋から、直接コスモたちのいる所へ来たので、ウィリアム伯父様の隣には、姉さまがいる。

 「また、近いうちにこちらに来ます。」

と、ヘンリー様の発言に、私は目を見開き、ヘンリー様の方を向く。

 ヘンリー様は、私の頭を撫でてから私の肩を持つ。

 「次は、サーシャとの婚礼の儀の招待状を届けに来ます。」

 ヘンリー様の一言に、ウィリアム伯父様の顔が一瞬引きつったのが見て取れた。

 「ウィリアム伯父様に相談もなく婚約を進めたことを・・・その、お怒りだったのですね。」

 私は、申し訳ない気持ちが湧き、目を伏せながら言う。

 「違うと言ったら嘘になるが、ステラの大事な子だというのに、私の手であまり可愛がってあげれなかった事を寂しいと感じてしまったのだよ。」

 ウィリアム伯父様の発言に私は目を丸くし驚く。

 「そんな事はありません。私は、ウィリアム伯父様に感謝しています。」

 私は、イリス帝国にいた時にどれだけうぃりあう伯父様の手紙に救われたかを伝える。

 だって、ウィリアム伯父様の手紙がなければ、私もイリス帝国で、賄賂やら何やらの手に染まり、正しい道を進めず、革命の標的にされていたかもしれないのだ、

 今、ドラゴニアの人間としていられるのは、一重にウィリアム伯父様の手紙のおかげだ。

 「本当にありがとうございます。」

 私は、深々と頭を下げてお礼を言う。

 頭を上げると微笑し、会話に補足をしようと口を再び開く。

 「その・・・これからも、イリス帝国にいた頃のように、お手紙を書いて頂けると、嬉しいです。」

 何となく、恥かしくなり、はにかみながらになってしまい、微笑してしまった。

 ウィリアム伯父様は、キョトンとした顔をした後、破顔して笑ってくれた。

 ”ギュッ”

と、ウィリアム伯父様が私を抱きしめる。

 「もちろんだ。」


 こうして、コスモにヘンリー様と乗り、飛び立った。

 ナーガ王国に来た時と同じように、民がコスモを崇めるように、土下座をする者がいる。

 そのせいがコスモの飛行が、微妙に左右に揺れている感じがした。



 ◇ ◇ ◇


 「サーシャに、何も言わなかったが・・・。それで、良かったのか?」

 私は、サーシャの乘っているコスモを眺めながら、隣にいるロゼリス殿に言う。

 「別に、何もないわ。」

 私は、微妙に吹いてしまった。

 ロゼリス殿が、少しすねている様に見えたからだ。


 今は、ロゼリス殿に伝えるのはよしたほうがいいな。

 昨日の夕食の後に、再び私の執務室にサーシャとヘンリー殿が来て、将来、子供ができたら、その子供のマナーの先生として、ドラゴニアに招き入れたいと言って来たことをな・・・。

 マナーの先生になる為には、だましだまし、護衛術をロゼリス殿に叩きこませなければならないからな。

 ・・・大変だ。

 だが、やる価値はある。

 やっと、姉妹仲良く暮らせるようになるのだから、2人の伯父として、頑張らなければな。

 

 「どうしてサーシャは、革命側に知恵を授けてから、亡命をしたのですか?」

 ロゼリス殿が、ボソッと口にしたかのように、言って来た。

 「それは、公爵家に生まれた者の義務だからな。」

 「それなら、皇族側に味方をするモノでしょう。」

 私の方を睨みつけるように、ロゼリス殿は訴えてきた。

 「私たち貴族が、贅沢な生活をしているのは、民を守るための威厳の為でもある。贅沢の為に民を苦しめるのは、威厳ではなく嫌味だ。ロゼリス殿がイリス帝国でしてきた贅沢はどちらだ?」

 ロゼリス殿が黙ってしまった。

 答えが出るまで待つか・・・まだ、コスモが見えているからな。

 「・・・嫌味です。」

 小さい声だが、ロゼリス殿は答えてくれた。

 「悪役になるしか己を救えないと言い聞かせて、心を麻痺させながら生きてきて・・・どうだったか?」

 「・・・嫌でした。」

 「嫌味で麻痺した心を・・・治さないとな。」

 私は、ロゼリス殿の頭を撫でる。

 ロゼリス殿が震えているのが分かった。 

 

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