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国の行方へと

 ナーガ王国の王が住まうスピンサーバランド宮殿。

 その一角には、歴代の王と王妃の絵が飾られている部屋がある。

 王族というだけあって、描かれている人は皆、高貴な印象が感じられる。

 その中でも、穏やかな聖母のような優しさがにじみ出ている絵があった。


 『アリエット』


 国母という重責も応えられている事を、昨日ウィリアム伯父様から聞いた。

 ウィリアム伯父様と母様の育ての母親。

 私は、アリエット様の絵を、ヘンリー様と見つめていた。

 

 「連れて来たぞ」

と、ウィリアム伯父様が部屋に入って来た。

 その後ろには、兵に囲まれた姉さまがいる。

 「いきなり、こんな所に連れて来て何なのよ。」

 姉さまは、いきなり連れて来られて、イラついているようだ。


 「姉さま。この絵に方は、アンリエット様と言って、現ナーガ王国のケルヴィン国王のお母様で、私たちの母様の育ての母様でも、いらっしゃる方よ。」

 そう言うと、姉さまはアンリエット様の絵を見る。

 「11年前に亡くなられてしまったわ。直接お会いしたかったですね。」

 姉さまは何も言わずに、ずっとアンリエット様の絵を見ていた。

 その姿を見て、私は手に力が入る。

 姉さまに伝えるべきことを、言わないとならないと思たからだ。

 同じイリス帝国で育ち、そして苦しみ・・・逃げて・・・今、ここにいるのだから。


 「イリス帝国は、今年中には革命側の勝利で幕を下ろします。」

 私の一言に、姉さまは私の方に振り向き、睨みつけてきた。

 「何故、そのような事が分かるのよ、皇帝軍相手に庶民が敵うわけないでしょ。」

 姉さまは、皇帝側の圧倒的な資金に、革命側が敵うわけがないと訴えてきた。

 「革命開始当初は、新品の武器を購入していたが、半年経ってからは中古品を買うようになっていた。」

と、ウィリアム伯父様が、姉さまと私の話に入り、皇帝軍の状況を説明していくれた。

 それにしても、革命開始の半年後ぐらいで中古品を購入するって・・・早いなぁ。

 「新品を使うまでもなく、中古の武器で足りるぐらい革命軍が弱いのでしょう!」

 「最初はそう思ったが、違っていた。」

 ウィリアム伯父様が、即答で答えを言ってから、真相を話してくれた。

 

 武器の調達の際に、新品の武器での資金を軍に要求し、武器商人には中古品を要求。

 その差額は、武器を調達を命令された者の懐に入る。

 そして、軍の配置を決める際に、安全な場所に配置されるように、その金が利用される。

 そのような資金の流れがあると説明をしてくれた。


 ウィリアム伯父様の説明で、イリス帝国の日常的な賄賂事情を思い出し呆れてしまった。

 姉さまも『腐っている』って、吐き捨てるように発したが、正に腐りきっているのよね。

 だから、こんな事になってしまったのだけど・・・。


 「今の皇帝軍側は、武器の調達は稀になった。食糧が大半だが、この頃は、その食糧の量も少なくなってきている。」

 圧倒的な資金も、底が見えてきたと言うべきなのだろう。

 このまま戦いが長引けば、皇帝側に餓死者が現れるだろう。

 場合によっては、革命側も餓死者が出て来るかもしれない。 

 「革命側の食糧の調達は、どうなっていますか?」

 避難民で、農産業の発展に貢献している者たちは、貢献しているだろうか?

 「農産業の貢献している避難民が、頑張っているおかげで、革命側に食料が渡っている。特に海産物が行き渡っていて『ひじき』が人気だ。」

 黒い食べ物だから、好んで食べる人はあまりいない。

 だから、黒い食べ物はねらい目だと言っていたが・・・人気になるとはね。

 革命側の食糧は大丈夫そうだ。

 

 だが、皇帝側は・・・・。


 「サーシャ?」

 ヘンリー様が、心配そうな口調で私を呼び、私の肩に手をのせ引き寄せる。

  

 ウィリアム伯父様が、ため息を付き、少し間を置いた。

 私は自分の手が震えているのがわかった。

 「サーシャ。一年程前から、皇帝側には、勝ち目がない事。革命側は、革命後準備も、しだしている事も皇帝側には伝えている。」

 ウィリアム伯父様の発言に、ホッと肩を落とした。

 少しでも早く終わらせるために、周りが動き始めているのだ。

 「皇帝側の生き残りは、元ユニコーンのいた国へ国外退去となった事も伝えている。」

 元ユニコーンのいた国なら、再び再戦する機会は失われるだろう。

 集まり会合を開く事態危険が伴うからね。

 「もう、行っている者もいる・・・あと、ひと押しという段階なんだよ。」

 「皇帝軍が、破れるなんて許されないわよ!」

 ウィリアム伯父様の言葉に、姉さまが突っかかって来た。

 「そうだ。そのプライドが仇になっている。」

 もう、新たなる国が準備されている中で、国を導くべき皇帝が、導けずにいる。

 本来、国を導く事にプライドをかけるはずの者が、一番の邪魔モノとなっているのだ。

 ・・・・皮肉でしかない。

 国を導けなかった者の末路は、国を導けなかった事を受け入れる事。

 それが、最後に残された国を導く役割を全うする皇帝としての役割を果たす事になる。

 それが、早ければ早い程、最後皇帝としての明暗が分かれる。

 はずれくじを引いてしまった皇帝か、それとも最後の皇帝まで暗君だったか。

 ・・・それに早く気づいて欲しい。

 

 

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