ヘリオドールの申し子として・・・
「ヘリオドールの申し子なら尚更だ。」
ウィリアム伯父様の発言に、私は理解できず、目が点となった。
「ヘリオドールの申し子とは?」
ヘンリー様が、目が点となった私の為に、代わりに質問してくれた。
「ヘリオドール家は、代々、頭脳明晰で有名な一族なのは、知っているはずだ。」
切れ者で知れ渡っています。
ヘンリー様と私は、一緒に頷く。
「先が読めてしまうから、その策を練る。だが、頭脳明晰すぎて、その策の光も闇も理解してしまう。」
ウィリアム伯父様の説明に、ヘンリー様は、私の顔を覗きながら『まさにサーシャですね』と、口にした。
「ヘリオドール家の先祖は、赤い瞳をした人と言うが、果たして本当に赤い瞳の人はいると思うか?」
確かに、赤い瞳の人は見かけない。
ドラゴンには赤い瞳はいるけど、人間では見かけたことがない。
金色の瞳以上に少ないと、見ていいのかもしれない。
いたとしたら、先天的にメラニン色素をつくれないアルビノの人だね。
・・・つまり、ヘリオドール家の先祖はアルビノだったのか?
「私は、ご先祖が、策の重さに苦しんで、目を腫らしていたのではないかと思っている。」
目を腫らしていたって・・・泣き虫ってことですか?
ヘンリー様は、私の顔を再び覗き込む。
「うん、赤い目をしている。」
私は、ヘンリー様から顔を逸らした。
「ヘリオドール家が、国で力を持ちながら、国のトップである王でないのは、策の光と闇の重さに苦しむのを見かねたコランダム家の先祖が、見かねて、王となったのだはないかと、私は思うのだが・・・。」
ヘンリー様は、ウィリアム伯父様の見解に、納得するように頷いた。
何か癪だが、アルビノよりもそちらの方がしっくりくると、思ってしまった。
「ウィリアム殿。サーシャが、革命を早く終わらせるために出した案とは、どのようなモノなのでしょうか?」
私は、ウィリアム伯父様の方に顔を向け、必死に言わないで欲しいと訴える。
「食料に関しての案だよ。」
ウィリアム伯父様は、あっさりと口に出してしまった。
「食べ物に関しての案なら、サーシャがこれだけ苦しむのも、理解できますね。」
ヘンリー様は、私の頭を撫でて抱き寄せる。
ウィリアム伯父様は、ヘンリー様の腕の中のいる私を見て、鼻でフッと微笑してから口を開く。
「戦場となれば、堂々と畑を耕すことはできなくなだろう。だから、山菜や海藻類といった、自然に生えている食べられる物を記した資料を、革命家たちに渡していた。茸に関しては講習までしていたな。」
茸は、毒がある物がありますから、直接講習等をしないと危ないでしょ。
「茸に関しては、自然に生えている物だけでなく、洞窟で栽培できる物もあってな、その栽培方法も伝えていた。他に、もやしという食物も栽培をするように仕向けていたな。」
光の届かない洞窟や防空壕でも、育てる事の出来る物を作らせた。
「限られた場所で食べ物を作るとは・・・ですが、それだけでは足りないのでは?」
ヘンリー様は、感心しながらも、気になった事を言って来た。
・・・その内容を一番知って欲しくないのにな。
「食料の貿易のことだろう」
ああ・・・ウィリアム伯父様がヘンリー様に説明している。
ヘンリー様は、武器とかではないかと、ウィリアム伯父様に聞いている。
最初の内は武器の購入を求めるだろう。
でも、イリス帝国で食料が作れないとなると、輸入に頼るしかなくなる。
だが、難民がいる手前、輸出をする事が難しいと思われるが、貴族側と革命家での関税に大差をつける事で可能にした。
そして、農業、海産業に携わっている難民で、大量に生産出来て余った場合は、無料物資として革命側に贈る事を約束している。
その事で、難民も必死に農業、海産業の生産技術等に貢献をし、その技術をその地に残す事が出来るのだ。
「貴族側には、難民が押し寄せている事で食料が値上げしていると言っているが、実際は難民の支援に回っている。」
「難民支援のその資金を回しても、革命後には国の利益となりますね。」
つまり、難民の支援に、莫大な資金の放出はほとんどない上に、革命後に利益が上がる技術が残されるのだ。
「立派なモノをコアルト大陸全体にもたらしている内容ですね。」
「そうだろう。」
ウィリアム伯父様は、誇らしげな口調で言った。
私は、ウィリアム伯父様を睨みつける。
「サーシャが辛い決断をしてくれたおかげで、何十年にもわたる戦いが防げたし、コアルト大陸にも恵みをもたらせる革命となった。今後このような戦いは起こしたくても、起こせないだろう。」
「そんな戦いあってたまりますか!!」
私は、怒鳴るようにウィリアム伯父様に訴えた。
「うん、それでいい。」
ウィリアム伯父様は、ホッとしたように私を見つめた。
「今後、こんな戦いをドラゴニアで起きないように、しっかりと見守りなさい。」
私は、口をパクパクさせた後に、肩の荷が降りる感じがした後に『はい』と、ゆっくりと、でも確実に自分に言い聞かせるように返事をした。




