表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

362/423

涙の権利

ブックマーク、それに評価までしてくださり、ありがとうございます。

新しく加わった『いいね』も、ありがとうございます。

とてもうれしいです。

 「2度ほど、ピューゼンとの戦いを経験している父が言っていた話だが、60年前の終焉の戦いは、これまでの戦いとは、全く違うと、そう言っていた。」

 ヘンリー様はウィリアム伯父様に、60年の前の戦いでは、負傷した兵が戦場に戻ってくるのを結構見た事を説明している。

 きっと、140年前は、衛生管理が出来ていないから、傷の治りが遅いか、亡くなったからだろう。

 もしくは、エリック様の様に戦線離脱して自宅療養となったか・・・。


 それにしても、この世界でも、戦いから医療に衛生管理が必要と知るとは・・・悲しい。

 人と人との殺し合いに得るモノに、果たして誇りを持っていいのだろうか?

 胸を張っていいモノなのだろうか?

 その胸には、希望しかないのだろうか?

 もし、そうなら自分も含めて、他人ですら軽蔑する。

 

 そう、私は、私自身を軽蔑している。

 イリス帝国に、革命という戦いでしか、人々に希望を持たせるしか出来なかった。

 一時期、亡命を辞めて、イリス帝国に留まり、何とかしようと考えた。

 でも、それが出来ない程に、国が壊れていた。

 戦いでしか国を豊かに出来ないと・・・。

 

 いいワケだよね。


 本当に、いいワケでしかない。

 だって、人が人を殺すんだよ。

 人を慈しむべきなのに、それが偽りだと言わんばかりに人を殺める。

 そこに導いてしまった責任は、だれの責任と課すのだろうか?

 皆で仲良く分け与えて、残酷なことに蓋をする。

 その行動が、残酷の上乗せと気づいているのだろうか?


 そもそも、残酷という言葉が悪いのか?

 残った酷って・・・残すも、何も、大々的に酷でしかないのに・・・嘆かわしい事だ。

 

 「サーシャ。どうしたんだ?」

と、いきなりヘンリー様に腕を引かれて、ヘンリー様の顔が目の前に来る。


 ・・・心臓に悪いです。


 えっと、ヘンリー様。もう片方の手で、私の頬に触れないで頂けますか?


 ・・・非常に心臓に悪いです。


 例え、もっと顔のアップを見ていようとも、心臓に悪いには、変わり在りません。

 

 「何故、そんなに悲しい顔をしているのだ?」

 ヘンリー様の一言に、私は顔を避ける。

 ・・・苦しいと、思ってしまったからだ。

 だが、すぐに頬に触れていた手が、私の顎を掴み、引き寄せられる。

 「今にも泣きそうな顔をして・・・泣いていいんだよ。」

 そう言い、私を引き寄せて抱きしめてくれる。

 ヘンリー様の優しい行為に、私は痛みを感じながら、首を左右に振る。

 

 甘やかさないでください。

 ・・・私に泣く権利はないのです。


 それどころか、癒されてもいけない。

 癒されれば、その罪の責任に、蓋をして終わりにしてしまう。

 私には、人と人とが殺し合う場に導いてしまった責任がある。

 

 「放してください。」

 私は、ヘンリー様の腕の中でもがくが、放してくれない。

 「サーシャ。どうしたんだ・・・説明して貰わないと、放せない。」

 ヘンリー様はしっかり私を抱きしめて、放してくれない。

 「・・・ダメ・・・ダメなの・・・。」


 目頭が熱くなっているのは解っている・・・でもダメ。

 視界がぼやけているのも解っている・・・・でもダメなの!!


 「何が、ダメなんだ?」

 ヘンリー様、優しく囁かないで、優しく頭を撫でないで・・・。

 

 お願い・・・今すぐ、私を罰してください。

 さもないと、罪に蓋をしてしまう・・・。

 

 ”ツーーー”

 「ダメ、ダメ・・ダメ・・・私に・・泣く権利は・・・ないの。」

 ヘンリー様の手が私の頬に触れ、指で涙を拭ってくれる。

 頬から伝わるヘンリー様の温もりに、涙が溢れて止まらなくなる。


 ・・・・止めなくてはならないのに。


 「どうして、泣く権利がないのだ?」

 ”ブルブル”

と、私は首を左右に強く振る。

 ヘンリー様には、伝えられない。

 涙を止めないといけない。

 「・・・涙、流れているね。」

 再び、ヘンリー様は私の頬を伝う涙を拭ってくれる。

 「涙を意識させないでください。」

 「そう言っても、涙は流れているし・・無理だね。」

 ヘンリー様は、私の体を引き寄せる。

 「甘やかさないで・・・。」

 「それこそ無理だ。とことんサーシャを甘やかしたいからね。こんな気持ちにさせるのはサーシャだけないいだよ。」

 ヘンリー様は私の額にキスを落とす。

 「ゴホンッ・・ヘンリー殿。私の目の前だという事をご存じですか?」

 ウィリアム伯父様が、ヘンリー様に注意をする。

 本当に辞めてくださいヘンリー様。

 「無理ですよ。目の前に悲しんでいるサーシャがいるのに、何もしないなんて酷ですよ。サーシャにも俺にも。」

 ヘンリー様のこの言葉に、ウィリアム伯父様はすんなりと納得してしまい『確かに』と、言葉をこぼした。

 「サーシャ。イリス帝国の事で辛い思いをしているのは解っているが、どのように辛いか、ヘンリー殿に伝えないとならないと、解っているはずだ。」

 ウィリアム伯父様は、私にもっともらしい言葉を諭すように伝えて来るた。

 解っている。解っているの・・・でも、それでも・・・。

 私は、先ほどよりも首を激しく振る。

 「解っていても嫌っ!!」

 駄々をこねるとはこういう事なのだろうか・・・。

 そうであっても・・・言えるワケがない。

 

 ”ギューッ”

と、ヘンリー様の腕の中にすっぽり入るように、抱きしめられる。

 「サーシャは、イリス帝国に『情けないモノしか残してあげられなかった』と、昔、言ってたよね。」

 はい、言いました。

 

 殺し合いをさせるという、情けなさをイリスの人々に残してしまいました。

 「でも、こんなにも希望を残しているのに、サーシャは浮かない顔をしているのは、イリス帝国に対して罪悪感からだよね。」

 むしろ罪悪感しかありません。

 「それでも、ドラゴニアに来てくれて・・・俺と出会ってくれて・・・俺を好きになってくれて・・・ありがとう。」

 優しくしないで・・・。

 「俺にも、サーシャの苦しみを分けて欲しい。」

 それは、絶対に出来ない。

 「これは、私の罪です。分けるなんて甘やかして、その罪に蓋をする事は、死に追いやった者としてしてはいけない。」

 私は、ヘンリー様に向かって訴える。

 「私は、希望を盾にして、たくさんの人々を死に追いやった。

 これしか方法が無くても、出来る限りの事をしたとしても、それでも、人を殺す場をつくってしまったのだ。

 その事をヘンリー様とウィリアム伯父様に強く言い聞かせる。

 「では、その罪を償うために、サーシャは革命後のイリス帝国に戻ってくるのか?」

 ウィリアム伯父様の言葉に私は、ハッとしてヘンリー様を見つめる。

 「もう、それが出来ない身だ。それに、そんな事はさせない。」

 ウィリアム伯父様の断言する言葉に今度は、ウィリアム伯父様の方を向く。

 「サーシャは、革命を早く終わらせるために打ち出した案だけで充分だ。それに、罪を償いために新生イリス帝国に戻ってきたら、否応なしにサーシャは女帝にされるだろう。」

 そんなの無理に決まっている。

 私は、目でウィリアム伯父様に訴えた。

 「無理なのは解っている。例えヘンリー様と全く婚姻関係でなかったとしてもだ。」

 ウィリアム伯父様は、ふと苦笑いを私に見せる。

 「ヘリオドールの申し子なら尚更だ。」

ナイチンゲールが活躍したクリミア戦争

これまで何度も争いが起きていますが、再び起きてしまいました。

とても、嘆かわしいです。


メイド編から傷の感染症の事を上げていて、今回の鈴蘭の心ローズの心編でも、ナーガ王国に来た時にイリス帝国の革命の話に触れねばならぬと、予てより思っていました。


ですが、今回、この時期に、これですか?


冗談であって欲しいと思っても、事実は戦闘が開始。


文章内にて、ナイチンゲールが活躍したクリミア戦争で終わらすはずが・・・。

すみません、できませんでした。

大幅にまわり道をしていますが、ご了承ください。


そして、情けないのですが、修正に困っていたりもします。

修正に長い事かかりそうですが、頑張ります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ