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医療と衛生と

 「ウィリアム伯父様。きっと驚くのは、伯父様の方かと思われます。」

 私の発言に、ウィリアム伯父様は、目を見開きこちらを見て来た。

 「私が、イリス帝国を出る前から他国で広めていた医療の基本的な知識は、ドラゴニアでは、60年程前からしていたようなのです。」

 ウィリアム伯父様は、信じられないような顔をこちらに向けていた。


 まあ、そうだよね。

 私も、その行動をドラゴニアで、初めて見た時は驚いたからね。


 始めてみた場所は、緑とピンクの計画の地であるピンクスピネ、ピンクアメジ、ピンクカルサの町だった。

 町の大掛かりな改善工事を実行に打ちしだした時に、繰り広げられた光景。


  町に数か所ある寄り合い所の建物には、それぞれ、大きな鍋と、その鍋に入る大きな瓶があり、まず大きな鍋に瓶と水を入れて、瓶を煮沸消毒しだしたのだ。

 そして、その煮沸消毒を終えた瓶には、沸騰させたお湯を淹れ、怪我をした傷口の汚れを落とす際などに使用するために、冷ましておいてくれたのだ。

 それだけでなく、大怪我をした時に使う針や糸、それに傷口を塞ぐ布も、煮沸消毒をして、干しておいてくれた。

 寄り合い所の中には、人を運び、そのまま処置をするための簀子の板がたくさんおいてあった。

 つまり、寄り合い所は医療施設にもなる場所でもあったのだ。

 その為なのか、交代制で清掃がされていた。 


 「清潔な環境下での医療行為、医療器具の煮沸消毒等の感染症の予防をしていました。」 


 それも、町の人が協力し合い、それらを用意してくれた。

 緑とピンクの計画をした町だけでなく、カルデネに初めて会ったプラシオの町でもそうだった。

 盗賊団が、奇襲をしてくる臨戦状態と解ると、町の人たちがそれらの準備をしていた。

 キマイラ事件の際の、マブ・ラリマー邸でも、使用人が協力しあって用意をしていた。

 

 もちろん、ドラゴンも、口から炎をだし鍋に温めたり、煮沸した清潔な布を風を発生させ乾かしたりと協力をしていた

 

 それらが、常識の様に行動をしていたのだ。


 すぐに、ハミッシュ陛下だとは思ったモノの、いつ頃から広まったのだろうかと気になり、キマイラ事件の後に調べてみると、終焉の戦いの時とわかった。


 私は、ウィリアム伯父様に、ドラゴニアでは民たちが協力し合い医療設備が充実させている事を伝える。

 ウィリアム伯父様の顔がキョトンとした顔のまま固まってしまっていた。

 

 まあ、無理もないよね。

 ウィリアム伯父様が生まれる前から、ドラゴニアは医療設備がしっかりしているのだから、それも、まさに今、知ったのだからね。

  

 「ハミッシュ陛下は、軍略的能力に優れています。」


 私と同じ、前世持ちのハミッシュ陛下は、前世ではゲーム会社で戦略型RPGを製作していた人だ。

 軍略が身についているはずだ。

 それ故、他国より有利に立つため、優れた医療体制を国家レベルで隠していたのかもしれない。

 戦場での衛生管理は特に重要と、前世の歴史で知っていても、おかしくない。


 クリミア戦争でのナイチンゲールの活躍。

 負傷兵の置かれた不衛生な環境に着目し、衛生管理をしっかりしたことで、負傷兵の死者数が激減した。

 傷の手当だけが全てではない。

 

 だが、傷を目の前にすれば、それに対応するしかなく、負傷者が多ければ、衛生管理は後回しになりやすい。

 それを、皆で協力しあって、清潔に保つことは、死者を減らす結果となる。

 そのシステムをドラゴニアは確立している。


 人々が生き残るために必要な行為だが、それを知っていると知らないでは、天と地ほどの差がある。

 故に、ドラゴニアはひた隠しにしているのだろう。


 そして、私も、少しでも革命が終わる事を願い。

 帝国側には、知られない様に気を付けて、国外にそれを広めた。

 

 「戦場内での医療行為は、衛生管理殿戦いと革命家側は知っています。そして、難民となってしまった者の中に、医療技術生として、医療技術を学ぶ難民も知る事になります。」

 医療技術生は、難民内の分担の中で一番多い。

 孫世帯のいる家族に、それを当たらせるようにした。

 

 「子と孫を置き、衛生管理者として、イリス帝国に帰る者を出す為か・・・。」

 孫世帯のいる家族を医療技術生に当てている事を言うと、ヘンリー様がその理由を口にしてくれた。

 「はい、子と孫は、革命後のイリスの国の発展の為に必要な存在ですから・・・。」


 ヘンリー様は気づいているのだろうか・・・。

 ワザとそうするように、指示を出した私の残酷さを・・・・。

 

 帝国側に、医療現場に衛生管理が必要と知らしていないという事は、帝国側の人々を死に追いやっている事。


 そして、革命側である難民も、孫世帯のいる家族に医療技術生として役割を与えたという事は、子と孫は、革命後のイリスの地での活躍を願うモノだが、祖父母世代は違う。

 死にたくないと国を出て難民となったのにも関わらず、医療現場に衛生管理が必要と知らしめることで、革命後の未来を子と孫に託し、戦場へと向かわせている。


 ウィリアム伯父様は、誇らしげに3つの希望と言っているが、誇っていいモノではない。

 人を死に誘っている行為だ。

 それを胸を張って『死んでこい』とは、言えない。


 人を助けるはずの医療ですら、私は武器にしてしまった。


 革命を短期間で終わらす為とはいえ、未だに革命は終焉をしていない。

 それだけ大きなモノを抱えていたとはわかっていても、こころが痛い。

 

 難民問題の解決の為に、打ち出したのはこれだけではないのだから・・・。


 人が生きるために必要な食料も、また・・・私は武器にしたのだ。

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