3つの希望
「海産を含む農産業、土木業、そして医療の3つの希望だよ。」
ウィリアム伯父様は言ってから、考え込むしぐさをする。
「医療は、まさに進行形のモノだから、海産業、農業、土木業となるのか?」
ウィリアム伯父様が、ブツブツと言いだすのを見て、ヘンリー様は私の方に顔を向け、話の続きをせがんできた。
「そんなに立派な事ではないのです。」
もともと、コアルト大陸では、ゴーラン王国という国の出来事があるので、国が滅ぶ前触れとして、難民が他国に押し寄せる事は解っていた。
最後のゴーラン国王
暴君のして君臨し、民を苦しめた事で、民は国を捨てて、国には王一人しかいなくなった。
その結果、最後の反抗として、ゴーラン国に民が帰って来ても、ドラゴンの加護のない土地とすべく、ドラゴンの大樹を燃やし、王自らもその劫火に焼かれ亡くなったという。
そして、ドラゴンの加護のない土地に帰る民はなく荒れ地となった。
よく、演劇の題材にあげられる物語で、私は童話で知った。
ゴーラン王国から来た難民の処遇に、コアルト大陸の各国は困り果てていたが、ナーガ王国は、ドラゴンの加護のない土地でも、畑は耕せると、ゴーラン王国の土地を全てヘリオドール領として、手中に収めたのよね。
その事により、食糧問題の他に、住居問題、職の問題も解決したようだ。
イリス帝国に革命が起これば、難民が国外へ流れる。
そうなれば、他国が難民に難色をする事になる。
それを解っていて、そのままには出来ないので、打ち出した案。
「土木業は、険が伴う事は解りますよね。」
私はヘンリー様に問いかけると、もちろんという様に答えが返ってきた。
モーリスさんのお父さんが土木作業の事故で亡くなっているのだ。
もちろん、解っているか。
「モーリスさんのおかげで、ルベライトでは、土木や建築に置いて、安全を確認し合いながら作業をするように努めていますが、まだ、他の地域では、奴隷のように人を人とも思わずに、死を覚悟して作業に打ち込まないとなりません。」
発展の為には、死は付きモノと、考えている者もいるようだ。
でも、死にたくないから、街道の整備や、新たに大きな建物を建てる事には難色を示している傾向がある。
故に、もともとある既存の建物を修理するとかして、使っているのが大半だ。
街道整備も、『街道が塞がれた』『橋が壊れた』と、なって、やっと作業をする。
既存の建物を修理して使うのはいいのだが、人口が増えればそうはいかない。
やはり、新たに建設が必要になってしまう。
ましてや難民が押し寄せれば、新しく家を造らざる負えなくなる。
それに伴い、上下水道の整備が必要となってしまうのだ。
まさに、建設ラッシュとならざるおえない事態になるのだ。
その解決を、イリスの民と、イリスの民が向かった国、双方の利益になる解決策。
「土木建設研究員として、イリスの難民を住まわせる。」
既存の建物を使用して使っているのだ。
建物を建てるに好条件の土地でも、未開発な土地がたくさんある。
そこに、イリスの革命終了後に、国に戻る事を契約の元で、難民を住まわせ、安全を考えながら、家の建設、町の整備、街道整備等の作業をさせる。
その費用は、行った先の国が持つ事になるが、イリスの革命後は、イリスの難民が建設した物は全て、その国の物になる。
イリスの難民は、イリスの難民で、国に帰り、その技術を存分に披露し、国を発展に貢献できることになる。
「難民は、いろんな国に赴いていますから、イリスに戻った時に、その技術を集結させないとなりません。ですが・・・イリスには元々既存の有名な大きな建物が4つありますから。」
私の説明で、ヘンリー様は、鼻から吹いた。
「一つは、革命前も革命後も変わらない役割となるが、残り3つは、役割が変わるという訳か・・・クラウンと付いている一族が住んでいた城の事で合っているか?」
私は、満面の笑みで正解と唱える。
「カローナ、コロア、タージュの3つの城が将来、職業の総合訓練所となり、国の発展を担う機関となります。」
皇帝が住む宮殿は、政治の中心となる機関には変わりないが、クラウンの公爵家の城の3つは、空き城になる。
どの城が、どの職業の訓練所となるかは、分からないが、私が住んでいたカローナ城も有効利用される事になるだろう。
「農業も海産業も、よりよい発展を研究しながら、土地の開発をし、その国にそのまま移行し、将来は、イリスでその発展を披露するということか・・・。」
ヘンリー様は、私の説明しようとした、農業と海産業について言う。
「土地柄もありますから、数年は、その土地の近場で、技能実習生としての手伝いをさせますが、徐々に自分たちで開発をさせる。」
ヘンリー様は、私の説明に何度も頷きながら聞いてくれていた。
だが、ピクッとその頷きが止まった。
「医療に関しては、ウィリアム殿が進行形と言っていたが、どういう意味なんだ?」
ヘンリー様のその言葉に、少し戸惑いを感じた。
「その事なのですが・・・。」
「サーシャ。どうしたんだ。もったいぶらずにヘンリー殿に説明してみなさい。きっと、驚かれると思うぞ。」
ウィリアム伯父様が、誇らしげに言って来た。
「ウィリアム伯父様。きっと驚くのは伯父様の方かと思われます。」
私の発言に、ウィリアム伯父様は、目を見開きこちらを見て来た。