それそれの手紙の思惑
生まれ変わったクレシダが、マブ・ラリマー邸となった屋敷に来てから1週間が過ぎた。
可愛らしいアイドルがこの屋敷にはいる。
”キキャッ キ~ッ キ~キャッキャッ”
幼いドラゴンの鳴き声がする。
クレシダだ。
どうやら歌を歌いながら屋敷を散歩するように飛んでいる。
作業をしている使用人たち、私も含めてだが作業をしながら歌を口ずさむ。クレシダの大好きな歌。
あたりが暖かい雰囲気に包まれる。
洗濯物を干している傍らでクレシダが来ると、クレシダの翼の羽ばたきが風を作り、洗濯物の乾きも早くなるので、もっといい雰囲気になるというモノ。
本当にありがたいわ。
「サーシャ殿、ナイジェル様がお呼びです。」
ドミニクさんが私を呼んだ。
私は、作業の手と歌を止めドミニクさんの後を付いていく。
屋敷の書斎のようだ。
書斎の机にはジェロームさんが座り書類を片付けている。
書斎の机の手前の窓に付かいところにテーブル席があり、そこのソファーに白髪のナイジェルさんがいた。
ナイジェルさんも書類に目を通していた。
「ナイジェル様、サーシャ殿をお連しました。」
ドミニクさんがナイジェルさんに言うと、ナイジェルさんの書類の手が止まる。
「座ってください。」
ナイジェルさんがテーブルの反対側に座るように指示をする。
私は、言われた通りにソファーに座る。
「陛下から手紙が届いた。」
その手紙には、私がルベライト公爵家に行く途中に、クレシダが大けがをしたことを知り、無理を言ってここに来たことが書かれていた。
だから、そろそろルベライト公爵家に向かわして欲しいことが書かれていた。
結構偉そうに書いているのね、無理は言ってないのだけど・・・。
ナイジェルさんに恩を着せるつもりかしらね。
直接かかわったの私だっていうのに・・・。
「こちらを持って行ってくれないか?」
ナイジェルさんは手紙を出してきた。
『Nの文字の両サイドに大きなドラゴンの翼が付いている盾』の白に右端に青の封蝋の手紙。
「こちらからも推薦状を書いておいた。」
私は、その手紙を受け取る。
「建前上はな。クレシダはまだ幼い、何かあったらサーシャ殿を貸して欲しいとう手紙だ。」
なるほど・・・。
だけどそれって私を買いかぶってませんか?
私はそのことを訴えたら、とんでもないと言われてしまった。
焼きおにぎり風雑炊を作ったこと、歌を歌ってくれたこと
それを評価してくれた。
そのように言われると恥ずかしいわね。
どうやら私、顔が赤くなったようだ。
「本当に感謝をする。」
ナイジェルさんにお礼を言われた。
そして、私はドミニクさんと決めていた期限を待たずに、ルベライト公爵家に向かう事となった。
◇ ◇ ◇
深みのある赤毛に、若干青色の入った灰色の瞳の20代半ばの男性が、バルコニーから黄金のドラゴンに乗る。
「ヘンリー様、どちらへ行かれるのですか?」
暗い茶髪に赤茶色の瞳の男性が言う。
「モーリスか、セドナの町へ行ってくる。」
そういうと、黄金のドラゴンが空へと羽ばたく。
「今日分の書類は出来ているんですよね~。」
モーリスは大声で言うと、『もちろんだ。』と返事が返ってきた。
”ビシュ~ン”
と、風を切りドラゴンは旅立った。
「帰りはいつものように夜になるな。」
モーリスは、部屋の中に入っていった。