父のヤケ・・・父の想い・・・父の命
ヘンリー様の腕の中で涙を流し、少し落ち着いた。
ウィリアム伯父様も、私が落ち着くまで、ずっと待っていてくれた。
テーブルに新たな紅茶が出された。
ウィリアム伯父様は、こちらに戻り席に座と『落ち着くから、飲みなさい』と、一言添えてから、紅茶を飲む。
私もヘンリー様も、言われた通りに紅茶を飲む。
「ステラが殺された事で、私も目が覚めた。」
ウィリアム伯父様は、再び話を始めた。
母様がパスカルの手の者によって殺された事で、パスカルにヘリオドール家の家督を奪い取るしかないと考え、それを実行した。
一年もしないうちに、パスカルを罪人として公のモノとなり、家督を奪い返した。
そして、母様の喪が明けると、国王も退位しケルヴィン国王が即位した。
「陛下の即位のお祝いの書状と一緒に、私宛に届いたデューク殿からの手紙に、再婚に伴い、サーシャに護衛のメイドを欲しいと、いう内容の手紙が届いたんだよ。」
マリーの件だ。
確かに父様の再婚した頃に、マリーが私専属のメイドとして来た。
「最初は、憎んだよ。ステラの喪が明けて間もなくして、あいつが再婚すると言って来るのだからな。」
ウィリアム伯父様が、塞ぎがちにため息を付く。
「あいつも、ステラを亡くしたことで、やけになったのだろうな。」
ウィリアム伯父様が言ってから、首を左右に振り否定する。
「残酷な事を言うが・・・子の愛し方が、分からなくなっていたのかもしれない。」
ウィリアム伯父様の一言に衝撃を受けたが、すぐにその理由に気づいた。
例え、家督を奪い返したと言っても、母様を殺したヘリオドール家に私の護衛をお願いするのか?
普通なら、イリスで、派閥の関係ない者から選ぶはず。
あえてそれをせずに、わざわざウィリアム伯父様に護衛を頼んだ。
「・・・父様は、いつ殺されてもいいと・・・死んでもいいと思っていた・・・。」
最愛の人を亡くすという事は、こんなに人をおかしくする。
私の事をどうにでもしろという意味も込めて、ヘリオドール家から、私の専属メイドを頼んだんだ。
父様も、そうだったんだ。
・・・でも、私を守ってくれていた。
自分を取り戻したのだろう。
「最期は、あまりにも早い死の訪れが来た事を、後悔をしていたよ。」
グアノ派の新しい義母が、懐妊が判明した時と、異母弟が生まれた時に、私と姉さまに何かあったら助けて欲しいと、依頼して来ていた事を伝えてくれた。
「デューク殿は、一時、子の愛し方が、分からなくなったせいで、あんなに早く殺される事になるとは・・・惨いな。」
ウィリアム伯父様の言葉に、私は頷いた。
それをウィリアム伯父様が見て頷いた。
「こういう、この私も、一時の感情で、サーシャを殺そうともした。」
ウィリアム伯父様の一言に、ヘンリー様は、私をウィリアム伯父様から隠すように抱きしめる。
「一時の感情だと言ったはずだ。」
ウィリアム伯父様は、メイドとして使わしたマリーに、私のヘリオドール一族の能力が低ければ殺せと言っていたようだ。
「マリーは、しっかりとサーシャを見ていたようだ。」
ウィリアム伯父様は、マリーの事を聞いていたので、お腹の子が順調で、そろそろ生まれる事を伝えた。
「そうか・・・。マリーには感謝している。」
私もマリーに感謝している事をウィリアム伯父様に伝える。
「長生きをするサーシャに、そのまま付き添ってくれるのだな。」
マリーも、ドラゴンと絆を結んでいるモーリスさんと、伴侶の絆を結んだことで、長生きとなった。
私は頷くと、ウィリアム伯父様は、嬉しそうに微笑んだ。
「もし、マリーがしっかりサーシャの人となりを見ていなく、殺していたら、イリス帝国はもっと最悪な事態を引き起こしていたからな。」
「それは、どういう意味でしょうか?」
ウィリアム伯父様の言葉に、ヘンリー様は質問をした。
「ヘンリー殿は知らないとはな・・・。」
残念そうな顔をヘンリー様に向けるウィリアム伯父様。
少し、いじわるっぽく見えた。
「サーシャはな、イリスを導く3つの希望を人々に与えたいるのだよ。イリスの民は、その3つの希望を胸に必死に戦っている。国の内からも、そして外からもな。」
私は、3つの希望は大げさだと伝えた。
「だが、イリスの民は、サーシャの打ち立てた希望で、今を頑張っている。」
「それでも、人は死んでいます。」
私の一言に、ウィリアム伯父様は頷く。
「その悲しみも、今年中にはひとまず終わる。」
ウィリアム伯父様は、革命が終わりを告げている事を教えてくれた。
私は、ホッと肩を降ろす。
「サーシャが打ち出した3つの希望とは・・・詳しく教えてください。」
ヘンリー様が、訴えてきた。
そんな、凄い事ではないのにな・・・。