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母の存在

すみません。

本当にごめんなさい。

投稿が、遅くなっています。



 「亡命先は、ドラゴニア王国。」

 ウィリアム伯父様の不敵な笑みをしながら発した言葉に、私は、面食らうどころか、面が落ちてしまい、途方に暮れてしまうほどに、何も考えられなくなてしまった。

 「ウィリアム殿、それは事実ですか?」

 ヘンリー様が、ウィリアム伯父様に確認の質問をする。

 私は、両手をテーブルに置き、少し前かがみになり聞き入る。

 「事実でしかない。考えてもみろ。ナーガに亡命したらどうなる。」

 「イリス帝国の貴族が、民を従わせるために、クラウンコッパー公爵家を頼る者が現れるかもしれません。」

 ヘンリー様が、ウィリアム伯父様の問いに答える。

 「そうだろう。ステラがヘリオドール家の者なら、なおのことだ。」

 ウィリアム伯父様は、呆れたように、ため息を付き話を続ける。

 「だから、クラウンコッパー家の名を捨て、隠れて生きていかなくてはならなかった。」

 まあ、クソくらいな名など、あっても邪魔になるだけ・・・だけど。

 「・・・母様と同じ考えだったのですか?」

 『クラウンコッパー』と『ヘリオドール』

 その2つの名だけで、ドラゴンのいた国の権力者の家と判かる。

 ユニコーンのいた国で、それが判れば見せしめに殺されるだろう。

 だから、ユニコーンのい国に身を潜めるのが一番いい。

 ただ、クラウンコッパーという名に関しては、聖女リオンを殺した一族の名の為、ドラゴニアで、クラウンコッパー家の者と解っても同じと考えていい。

 ただ、そうなってもヘリオドールの名が守ってくれるかもしれない。


 実際は、違っていたが・・・。

 

 「そうだよ。」

 ウィリアム伯父様は、私に微笑みかけると、隣にいるヘンリー様の方を見る。

 「ステラはな、ドラゴンのいた国に生まれたのだから、生きている間に本物のドラゴンに会いたいと、触れたいと思っていたんだよ。それも、幻と言われている黄金のドラゴンがいるなら、行き先はドラゴニアしかないだろう。」

 私は、ヘンリー様の方を見る。

 黄金のドラゴンのコスモと絆を結んだ人。

 

 そして、私もまた、黄金のドラゴンと伴侶の絆を結んだ。

 自分の鎖骨と胸の間に手を添える。

 

 「サーシャが、ドラゴニアに行く事を強く止められなかったのは、ステラが家族4人で住みたいと、思っていた地がらかな・・・。」

 ウィリアム伯父様は、壁に掛けられている絵の方に顔を向ける。

 きっと、絵の中の母様を見ているのだろう。

 少しして、再び私たちの方を見る。

 「ステラが、ドラゴニアに行きたいと思っていたきっかけでもある黄金のドラゴンと、絆を結んでいるヘンリー殿と、サーシャが伴侶を結ぶことになるとはな・・・。」

 ウィリアム伯父様は、クスリッと鼻で笑い、未だに信じられないと伝えて来た。

 「いろんな奇跡がありました。」

 ウィリアム伯父様は、私の言葉に頷いた。

 「それも、私が生まれる前からの奇跡もありました。」

 再び、ウィリアム伯父様は頷いてくれる。

 「きっと・・・母様が、家族4人でドラゴノアに行きたいと、思っていた事も、その奇跡の積み重ねの、一つだと思います。」

 『そうだな。』と、ウィリアム伯父様は相槌を入れてくれた。

 私は、隣に座っているヘンリー様の手の甲に、自分の手を添える。

 「ヘンリー様を、好きだと想った気持ちも、奇跡の積み重ねで・・・」

 ヘンリー様は、私が添えていた方の手を、反対にひっくり返し、私の手を握る。

 私は、恥かしくなり、ヘンリー様の視線を感じるも、そっぽを向く。

 「キャサリン様が、母親のように接してくれなければ、ヘンリー様と婚約をするなどなかったです。」

 今、ヘンリー様の手の温もりを感じられるのも、キャサリン様がいたから・・・。

 「その愛情も、クラウンコッパー家が一度お家を断絶した事を知っていたからで、もし、それが知らなければ、死んでいた・・・で、しょう。」


 ・・・え?


 「サーシャ!?」

 ウィリアム伯父様が、慌てて私の名を呼び、前かがみに私の方を覗き込む。

 それに気づいたヘンリー様が私の方を見て、握っていた手を引き寄せ抱きしめる。

 ”ポロポロ”

と、私は涙を流していたのに気が付いた。

 「サーシャ・・・どうしたんだ?」

 優しく言葉をかけてくれるヘンリー様。

 ゆっくりでいいから話して欲しいと、囁かれる。

 「何も・・・変わらない・・・。姉さまと私は・・・同じように、心に母を持っていて・・・。」

 私は、キャサリン様。

 姉さまは、私の母様であるステラ。

 

 他人の子でも、自分の子と変わりなく愛情を注ぐ。

 母の愛を持っている人。

 

 私は、いたたまれなくり、ヘンリー様にしがみつくように抱きつく。

 ウィリアム伯父様が立ち上がり、母親が描かれている絵の方へと向かう。

 部屋に、私のすすり泣く声が響いていた。 

 

 「どうして、母様は・・・殺されなくては・・・・うううっ」

 私は泣きながら、ウィリアム伯父様に聞く。

 「馬鹿カルが、しびれをきたして、ロゼリス殿の暗殺を決行するも・・・ロゼリス殿には、とっくに大量の護衛がついていた・・・。だから、ステラに白羽の矢がたった・・・。」

 ウィリアム伯父様は、苦痛をにじませる口調で答えてくれた。

 そうか・・・私さえ生きていれば、パスカルの陰謀は叶う。

 なら私も、母様を殺した原因だ。

 

 姉さまも私も変わらない。

 ・・・姉さまに責められても、言い返せない。


 姉さまにされた、嫌がらせを思い出していた。

 ドアに釘を打たれて、部屋から出られなくなった事

 階段から突き落とされた事。

 部屋中に泥を巻かれた事。

 洋服を破かれたり、水をかけられたり、汚されたり・・・。


 でも、その背景におあるモノ。


 自分のせいで、慕っていた義母を亡くした事で、誰も助けてはくれないと、自分で切り抜けるしかないと思ったのだろう。

 新たに、グアノ派の義母が来て、私にするイジメを同調したのは、誰も守ってくれないから、自分を守るためにしたんだ。

 最低な義母だと知っていても、そうせざるおえなかった。


 決して許される事ではないと、姉さま自身は解っている。

 でも、そうするしか方法がなくて・・・。

 姉さまの周りに、守ってくれる人が一人でもいたのなら・・・。

 

 私には、父さまが・・・マリーがいたから、頑張ってこられた。

 そして、前世の記憶のおかげで、ウィリアム伯父様も味方についてくれた。


 でも、姉さまは・・・・ひとりだ。

 私の、前世と同じ・・・ひとりだ。


 姉さまと私は・・・何も変わらない。

  

 「もっと早く、イリス帝国を出たかった・・・っうう。」

 姉さまには、母様が必要だった。

 母様の愛情のもとで、育って欲しかった。

 そしたら、こんな悲劇は起きなかった。

 

 こんな悲劇・・・起きて欲しくなかった。

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