衰退へ・・・・
テーブルにお茶が用意された。
ウィリアム伯父様は、そのお茶を一口飲み、カップを置く。
「ステラとデュークが結婚して一年後に、サーシャが生まれたのだよ。」
ウィリアム伯父様は、このうえなく嬉しいと言わんばかりの微笑みを私に向ける。
「ステラは、母のように慕っているアンリエット様に、名付け親になって欲しいと依頼して来て、アンリエット様はそれに応じてくれて、男の子ならジョルジュ。女の子ならサーシャと・・・。」
ウィリアム伯父様は、目を潤ませながら伝えて来た。
ジョルジュって確か・・・。
私が、首を傾かせたのに気づいたウィリアム伯父様が、手を前にやり、話に続きがあるから待てという動作をした。
「ジョルジュとサーシャと言う名は、アンリエット様の両親の名だ。だから、私に跡取りが出来た時に、ジョルジュの名を貰ったのだ。」
そう、ウィリアム伯父様の長男が、ジョルジュ様という名だった。
それまで、2人の子が生まれたけど女の子で、3人目にしてやっと男の子が生まれたのよね。
私の2つ年下だから、今は18歳。
・・・成人を迎えられたのね。
「サーシャが生まれてすぐに、ヘリオドール家は、サーシャを女帝にする為に動いた。」
は?
私が、女帝・・・ですか。
末恐ろしいな・・・。
「陛下の子である王子を婿養子として、サーシャと一緒にさせる案が持ち上がり、ステラとデュークも始めのうちは賛同してたが、すぐに反対をしてきた。」
まあ、こんな私ですから、女帝など務まらないと、すぐにわかったんでしょうね。
「何故、サーシャを女帝にするを反対したのでしょうか。サーシャなら女帝になれたかもしれません。」
ヘンリー様が、おかしなことを言い放った。
私は、ヘンリー様の方を見る。
「サーシャ。怖い顔をするな。サーシャの驚きの知恵には、こちらも度肝を抜いているのだ。その知恵が、民のために生かされているだろう。」
ウィリアム伯父様は、私を納めようと言っているが・・・おかしな内容だと気づかせなば。
「知恵を出すのは、皇帝や王のみではありません。もし、そうなら完全なる独裁政治になるわ。それも一代限りになりかねない。そして、臣下は知恵に従うだけとなっているはずですから、その一代が終われば、後は衰退の意図をたどるわ。」
ウィリアム伯父様は目を真ん丸にして、口をぽかんと開けたまま止まっていた。
「つまり、臣下に知恵者がいる方が、国が成り立つと言う訳だ。そうなると、俺の妻という地位は適任だね。」
ヘンリー様は私の手を握り見つめてきた。
変なオーラを漂わせないでください・・・恥ずかしいです。
私は、顔か熱くなっていくのが解かり、顔を逸らす。
「ですが、サーシャの両親が、サーシャの女帝にする案を反対した理由が気になります。」
ヘンリー様は、ウィリアム伯父様に質問をした。
「サーシャを女帝に据えたとして、夫であるナーガ王国の王子は、クラウンコッパー公爵にならないといけない。」
ウィリアム伯父様の言葉に、私は、目を大きく見開く。
「姉さま・・・・。」
「そう、ロゼリス殿の存在が、妨げとなったのだよ。」
パスカルが、姉さまの殺害を要求してきた事を説明してくれた。
「ステラは、アンリエット様のように、他人の子でも自分の子の様に、慈しむ事が出来るのを楽しみに嫁いでいったのに、その子を殺せと・・・出来るワケないし、させるワケにもいかなかった。」
パスカルだげが、姉さまの殺害を要求していたようだ。
「パスカルは、馬鹿カルだから、そこら辺の底辺の頭脳しか持ち合わせていない。ヘリオドール家は、ナーガ王国の王家の第一臣下。王家と並び称される一族。その采配も尊敬に値する行動をとらなければならない。」
ウィリアム伯父様と母様は、必死に姉さまを生かす方法を考えた事を伝えてくれた。
「だが、どれも手遅れだった。イリス帝国が破滅を待っている・・・そう思わずにはいられない程にな。」
私も、イリス帝国にいた時に感じていた。
汚職を汚職と見ないというか、汚職がどのような事かわからない程の廃れようと言った方がいい。
私ですら、何が正しいか分からなくなりかたことが何度もあり、そのたびにウィリアム伯父様の手紙に叱咤され、私を正してくれた。
「ステラは、クラウンコッパー公爵家が再び、イリス帝国からいなくなれば、サルファー派とグアノ派が、精力的に動き出し、国を亡ぼすと仮定した。」
まあ、そうなるな。
父様が、クラウンコッパー公爵家を授与される前以上に、汚職のてんこ盛りになる。
国が成りたたなくなる。
・・・・?
私は、頭を傾げた。
「サーシャは、気づいたようだな。」
ウィリアム伯父様は、私を見て嬉しそうに言うが、私は、国が成り立たなくなるで、思考が止まったことを伝える。
「では、国が成り立たなくなったらどうなる?」
やはり、そのように質問してきますか・・・。
民は、それぞれ行動をする。
だけど、納税の義務があるから、役人が押し寄せて来る。
民は、団結する。
団結した民同士で、決まりを創る。
・・・政府成立。
「皇帝一族や貴族がいなくても、民だけで国が創れるわ。」
私は、自分で導きだしたのにも関わらず驚き感心した。
「ステラも、そこに行き当たり、家族4人で亡命をしようと計画をした。」
私は、ウィリアム伯父様の言葉に、面食らいウィリアム伯父様を見る。
ウィリアム伯父様は、不敵な笑みを浮かべていた。
「亡命先は、ドラゴニア王国。」