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若かりし頃

 「サーシャ、それは違う。」

 ウィリアム伯父様が、念押しするように再度言う。

 「ステラが殺されたのは、この私が未熟だった故だ。」

 憂いに満ちた顔で私を見てから、目を伏せるウィリアム伯父様。

 私は、しんみりとした口調で、母親の死の真相を知りたいと伝える。

 少しの間、重い沈黙が漂う。

 ふと、ウィリアム伯父様は椅子から立ち上がり、私の横を通り過ぎ、後ろに飾られている絵を見る。

 その絵は、若い頃のウィリアム伯父様とケルヴィン国王それに母様が描かれていた。

 私は、ウィリアム伯父様の隣へ行きその絵を一緒に見る。

 「ステラが14歳、私と陛下・・当時は、殿下だが18歳の時のだ。」

 母様は、純粋な微笑みをしていて、ウィリアム伯父様もケルヴィン国王も嬉しそうに微笑んでいる。

 「18歳と言えば、成人で当主としてヘリオドール家の家督を正式に継げるはずだった。」

 寂しそうに話し出すウィリアム伯父様。

 「・・・・私が6歳で、ステラが2歳の時、私たちの両親が立て続けに亡くなり、ヘリオドール家では、当主代行として叔父であるパスカル・・・が、務めたんだ。」

 ウィリアム伯父様は、パスカルの名前を言うと、少し間を置いた。

 ・・・なんでだろう。

 「私とステラは、陛下のお母上であるアンリエット様に可愛がられて、陛下と一緒に育った経緯があるのだよ。」

 ウィリアム伯父様は、この絵と同じものが、アンリエット様の部屋にも飾られていた事を伝えてくれた。

 「兄妹の様に育ったのでな、私が成人になった時に、ケルヴィン様が国王となってからでも当主を引き継いでも遅くないのではと言われてな・・・・。」

 ウィリアム伯父様は、静止するように止まってしまった。

 そして、次の瞬間。

 ”ドーンッ”

と、壁に拳を叩きつけるウィリアム伯父様。険しい目をしていた。

 「それに・・・・従ってしまった。」

 ウィリアム伯父様は大きなため息を付き、私の方に体を向ける。

 「サーシャ。すまなかった。すぐにヘリオドール家の家督を継いでいれば、ステラを死なせなくて済んだのにな・・・・。」

 ウィリアム伯父様は、今にも泣きだしそうな顔で頭を下げる。

 私は一歩、ウィリアム伯父様から引き、どうすればいのか分からずにいると、ヘンリー様が私の背中に手を添えて支えてくれた。

 「辛いかもしれませんが、続きを聞いてもよろしいでしょうか?」

 ヘンリー様は、私の代わりい言ってくれて、再び話を切り出す為に、テーブル席にへと着く。


 「ステラが成人を迎えても、ヘリオドール家は、当主代行のパスカルが務めていた。そんなある時、イリス帝国から正式に皇太子が立った事を知らせる書状が届けられたんだが・・・その使者がな・・・デューク殿だったんだ。」

 ウィリアム伯父様は、すねた感じの顔を見せる。

 「ステラが、デューク殿に一目惚れをしてしまってな・・・それも、あいつも、ステラに一目惚れをしおって・・・まあ、ステラ程の女ならわからないでもないが・・・。」

 ウィリアム伯父様の言葉に、ヘンリー様も『わかります。』と、ボソッと言った。

 そして、二人して相打ちするように頷いた。

 ・・・えっと、どういう事でしょうか。

 「話を戻すが。」

 気になるのですが、聞き入れてもらえずに話は進む。

 「馬鹿カルであるパスカルは、すぐにイリス帝国に使者をだして、ステラとデューク殿の婚姻を結ばせたのだよ。」

 ウィリアム伯父様は、子持ちの家に嫁がせたくなかった事を言ったが、パスカルがイリス帝国の実権も握る事が出来る事をあげ、取り入ってくれなかった事を教えてくれた。

 そして、その影で、もしイリス帝国の実権が握れれば、ヘリオドール家の当主代行ではなく、当主に慣れると、パスカルは思っていた事も伝えてくれた。

 「お聞きしたいのですが・・・何故、ケルヴィン国王の元にステラ殿を嫁がせなかったのですか?」

 ヘンリー様の質問に、私は頷いた。

 権力を手にしたいなら、血族の女性を権力者の家、それも跡取りの元に嫁がせるべきだ。

 兄妹の様に育ったのなら申し分ないはず。

 でも、母様はケルヴィン国王の元に嫁いでいない。

 ・・・どういう事だ?

 「それは、1000年前に遡るのだが、それまでは度々、王家に娘を嫁がせていたんだよ。そして王女も、ヘリオドール家に降嫁来てきた。」

 なら、1000年前に何が起きたんだ?

 ウィリアム伯父様は、考え込む私を見て、ニヤッと不敵な笑みを見せた。

 「度々、そのような行いをすれば、どのような事が起こるかわかるか?」

 ウィリアム伯父様が、引っかかる事を質問して来たよ。


 うん・・・・・。


 ヘリオドール家のお嫁ちゃん、いらっしゃいませ~。

 はい、婚礼しました。

 そうなると、次が跡取りだね。

 ヘリオドール家のことだから、先に別の妃から男子が生まれようとも、ヘリオドール家の血を引いた男子を王太子に据えるようにするよね。


 女の子であっても女王にさせそうだよね。


 ナーガ王国は、基本は男性優先で、いない場合は女性だったはず。

 特例も許可されていて、特例に関しては、民の暴動により国が荒れない為の措置として設けられていたはず。

 これまで、使われた事はないけどね。


 まあ、ここは男の子で行こうではないか


 えっと・・・ヘリオドール家の血を引く王子が王太子になり、国王となる。

 はい、ヘリ―ドールの娘を嫁がせます。

 つまり、近親婚だ。


 ・・・・ヤバくない?


 「身体に欠陥、いえ・・・すみません。不調がある子が出来る。」

 王家の人間を『欠陥』と、言っては不敬に入るから、言葉を変えた。

 「その通りだよ。」

 1000年前の国王に子が出来ずに亡くなり、王家の親戚筋を国王としたが、国民の反発が強く、国が一時期荒れてしまった事をウィリアム伯父様が説明をしてくれた。

 「だから、王家とヘリオドール家で約束が出来てな。出来る限り婚姻を結ぶことを控えようと約束をしたんだよ。お互いに惚れた場合は、婚姻をさせてはいるけどね。」

 なるほどね。

 だから、母様はケルヴィン国王の元に嫁がなかったのか。

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