その思い・・・その重い・・・その違い。
遅くなりまして、本当に申し訳ございません。
国王の謁見は、私の一言で、流れるように進んだ。
真珠の養殖の件は、後日使者を派遣する流れとなり納得して貰った。
簡単に、真珠の養殖の再開への協力しますから、リュヌの銀をくださいとはいかないようだ。
まあ、元々、そうなるだろうと予測して、使者を立てる気満々で来たんだけどね。
そして、今回の訪問に際して、細やかながらお土産を持て来た。
その目録をケルヴィン国王が見て、偉く大喜びをしてくれた。
持ってくる荷物に限りがあったので、チョットした物しか持って来られなかったので、喜んでもらえて何よりだ。
こうして、国王との謁見が終わり、私たちはレナストン城へと戻る。
謁見の間から去る際に、ケルヴィン国王が寂しそうな顔をして
『行かないで、ステ・・・ないで』
と、小声ながら、言われた時は驚いた。
まあ、母様の名を言おうとして、とっさに言い換えたのが分ったので
『捨てた覚えはありませんよ』
と、言い返して、その場を収めたのは言うまでもないが・・・。
それにしても、ウィリアム伯父様もケルヴィン国王も、母様を慕っているのが伺える。
私は、その母様を死なした存在なのに、母様に似ているという事で、慕ってくれる。
・・・なんか、皮肉な気がする。
だが、今後私はドラゴニアの人間として、それも武器として、使わなくてはならないかもしれない。
・・・それも、それで皮肉だよね。
そんな関係しか、築けないのかな?
少し、寂しい気がする。
◇ ◇ ◇
「ウィリアム伯父様、折り入って話があります。」
私は、レナストン城へ戻り、ひと休憩をしてから、書斎にいるウィリアム伯父様所へ意を決して伺った。
ヘンリー様も、ウィリアム伯父様へのお土産を持参して、一緒に来て貰った。
心強いもあるが、もし一人で、ウィリアム伯父様と話をしたら、後ほどヘンリー様にその内容を伝える事になる。
辛い内容となるので、話さなくても済むように、一緒に来て貰ったというのが本命だ。
ヘンリー様と私は、ウィリアム伯父様の書斎に入りる。
ウィリアム伯父様の書斎は、本棚に囲まれた図書室のような感じの部屋だ。
地図を広げて指示を出すであろう大きなテーブルも、部屋の中にある。
ヘンリー様と私は、ウィリアム伯父様のいる机の前にある椅子に座った。。
「サーシャ。話しとは何だ?」
と、話しを切り出したのはウィリアム伯父様だった。
穏やかに言葉を発してくれているのに、私は言葉がつまり唾を飲む。
「まずは、ウィリアム殿にお土産を持って来たので、受け取ってください。」
ヘンリー様は、持ってきたお土産を机の上に置く。
黒い漆塗りの箱に、ドラゴンの螺鈿細工が施された厚みの薄い箱が7つ。
どれも同じデザインの箱だが、箱の中央に埋め込まれた真珠に違いがあり、白、黒、赤、青、水色、緑、黄、金の真珠が埋め込まれていた。
その一つ、赤い真珠が埋め込まれている箱を開ける。
「これは、ルビーのように美しい鱗だな。」
そこには、前世でテレビでしか見たことのない宝石のルビーのような鱗があった。
「ドラゴンの初めての脱皮の時に取れてしまった鱗の、その中で最も美しい一級品をお持ちしました。」
箱には、3つの鱗が治まっていて、宝石の様にキラキラと輝いていた。
白なんて、ダイヤモンドだよ。
黒もか・・・ブラックダイヤっていうんだよね。
前世の私には、見るだで、触れることが無かった宝石。
宝石って、ズシリ重いと言われていて、よく重い物を首とかに着けるよな・・・と、美を保つには我慢も必要と言われているけど、宝石もそうなんだと思っていた。
なので、首に巻くなら肩こりにならない・・・というか、肩こりにいいと言われているネックレスを着けようと思っていた。
そうなる前に亡くなってしまったが・・・。
「黒い鱗は、先にここに来ていたヴァルナの、初めての脱皮の時に剥がれ落ちた物と思われます。」
ヘンリー様は、ルベライト領の領都ルベライトが温泉が湧く地で、ドラゴンの為の温泉があり、ドラゴンの初めての脱皮の際に生じてしまう皮膚炎に効果があるとされ、浸かりに来るドラゴンがいる事を伝えた。
その際に、脱皮した皮を鱗ごとドラゴンは置いて行くとか、それをルベライト公爵家が保管していると説明をしてくれた。
「ゴールドパールとイエローパールの箱に入っている鱗は、コスモの鱗です。」
ヘンリー様は、ゴールドパールの箱に入っている鱗が、初めての脱皮の際に抜け落ちたコスモの鱗で、イエローパールの箱の方は、2度目の失敗して抜け落ちてしまった鱗だと伝える。
「黄金のドラゴンは、稀な存在でありますが、持って来た他の鱗に比べると見栄えが良くないので、2度目の脱皮の際の鱗は、ケルヴィン国王には差し上げていません。サーシャの伯父ですから、恥ずかしながらお土産として持参しました。」
ウィリアム伯父様はイエローパールの箱を開けて、コスモの2度目の脱皮の際に向けてしまった鱗を見る。
「陛下には申し訳ないが、伯父様特権はうれしいモノだな。」
ウィリアム伯父様は、優しく微笑みかけてくれた。
その笑みに、私の胸は苦しくなってしまった。
「サーシャ。どうしたのだ?」
ウィリアム伯父様は、、私の表情に気づいて声をかけてきた。
「・・・母のことで。」
私は、首を振った。
母様の事も知りたいけど、一番知りたいのは、それでないからだ。
「私が・・・女として生まれたから、母は、ヘリオドール家の刺客に殺されてしまったのですか?」
私は、俯きながら、言葉を発した。
「違う。」
断言するようにウィリアム伯父様が答えてくれた。




