うんざりな人間違い
「始めまして、私はグレアム・ダンビュライトと申します。」
グレアム様は、ウィリアム伯父様に丁寧に挨拶をしに来た。
するとウィリアム伯父様は、グレアム様の前へ行く。
「フレディ殿の・・・。」
「はい、孫です。」
ウィリアム伯父様は、グレアム様に握手を求めそれに応じるグレアム様。
握手をしながらウィリアム伯父様は、3頭の白いドラゴンの方をキョロキョロ見だす。
「アリエルは、あちらです。」
グレアム様は、ウィリアム伯父様をアリエルの所へ案内する。
「サーシャと同じ紫の瞳だ。」
ウィリアム伯父様は、アリエルの右側に立ち一言。
そして、グレアム様はウィリアム伯父様をアリエルの左側へと案内する。
「ステラの瞳だ!!」
ウィリアム伯父様、目をキラキラさせ、アリエルの頬を撫でる。
そして、アリエルの右側へと行く。
「サーシャ!!」
左側へと立つ。
「ステラ!!」
と、アリエルの左右を何度も行き来し、母様と私の名を嬉しそうに叫ぶ。
”きゅぅぅぅぅぅぅぅ――――――――――――――”
うんざりだと言わんばかりに、アリエルの鳴き声が、長々と唸っていた。
そして、アリエルは付き合いきれないと、昼寝をしてくれたおかげで、やっと、スピンサーバランド宮殿へと入り、王との謁見へとなった。
ケルヴィン・コランダム=ナーガ
ウィリアム伯父様と同じ年のナーガ王国の国王。
実は、今回初めてお会いする。
イリス帝国から亡命した際は、イリス帝国から送還の依頼がウィリアム伯父様宛に来ても、国王が知らぬ存ぜぬ、会えたら送還するという返事が出来るように、あくまでお忍びで亡命をしたのだ。
だから、少し緊張をしている。
謁見の間へと入り、玉座の前へと歩んでいく。
すると、玉座に座っている王が、いきなり立ち上がったので何事かと玉座を見る。
ウィリアム伯父様に比べて、若干優しそうな顔立ちをしている国王が、目をぱっちりを開けて驚いていた。
「・・・・ステラが、帰って来た。」
はいはい、ケルヴィン国王もウィリアム伯父様と同じことを言うのですね。
「サーシャ・トラバイトです。」
私は、ケルヴィン国王に挨拶をする。
「ウィル。ステラが僕たちのもとに帰ってきてくれたぞ」
私は今、サーシャって言いましたよね、
それも、印象付けさせる為にクラウンコッパーの姓を名乗らず、トラバイトの姓を名乗ったのですが・・・。
「ステラ!」
「サーシャです。ケルビン国王」
意味がなかったようだ。
私は、満面の笑みで答えた。
「ケルヴィン殿下って言っていいんだよ、ステラ。」
うるうるした目で言ってきても言いませんから。
「ウィル、ステラだよ、ステラが帰って来たんだよ。」
ですから、サーシャです。
「ほら、目を瞑ってごらんよ。」
ケルヴィン国王、そんなことしたら尚更私の事を母様として見るから嫌です。
「国王の命だぞ」
可愛らしく言っていますが、先ほどケルヴィン殿下と言ってって、言いませんでしたっけ、そう言っている人が国王命令って、おかしくないですか?
アリエルが、うんざりした気持ちが頷けるわ。
「ケルヴィン国王。今回わざわざ謁見となさったのは、黄金のドラゴンがナーガ王国に来た出来事を記述として残したいからではありませんか?」
ナーガ王国の後世に残す為には、ナーガ王国記に記載される事が必要。
謁見でなければ、記載はされない。
だから、謁見となる事は予想はしていたが、これは謁見と言っていいのだろうか?
明らかに人間違いされてますよね。
「人間違いをされたままでは、ナーガ王国とドラゴニア王国との関係の
話しなどしても、双方の行き違いが生じる事は明白ですので、無理ですね。この謁見はなかった事にしましょう。」
私は、ケルヴィン国王と、ウィリアム伯父様の双方に対して言った。
「それは、困るな・・・・真珠の養殖の再開を待ちわびている者がいるからな。」
ケルヴィン国王が寂しそうな顔で言った。
「では、私の事はサーシャとお呼びください。ケルヴィン国王。」
私は、満面の笑みをケルヴィン国王に向けて放った。