お腹に・・・
「ウィリアム伯父様。お久しぶりです。」
私は、ウィリアム伯父様に声をかけた。
ウィリアム伯父様は、私を見ると驚いた顔をする。
・・・何か変でしょうか?
私は、ウィリアム伯父様の反応に動揺する。
そんな私のもとに、ウィリアム伯父様は来て、いきなり抱きしめられた。
えっと・・ウィリアム伯父様。もっと、動揺するのですが・・・。
それに、ヘンリー様の私を掴んでいる手に力が入ってまして、多少そこが気になるのですが・・・。
「一段とステラに似てきて、驚いてしまったよ。」
そう言うことですか・・・。
「堅苦しく、『ウィリアム伯父様』と、呼ぶのではなく、『お兄様』って、呼んでいいんだぞ。」
ウィリアム伯父様、それは意味が違くなります。
「始めまして、サーシャの婚約者のヘンリー・ルベライトです。」
ヘンリー様は、丁寧に挨拶をした。
「君が、黄金のドラゴンと絆を結んでいる者か・・・。」
ウィリアム伯父様は、ヘンリー様を舐めるように見ながら、ヘンリー様の周りを一周する。
「『早く子供を』と、いう家に嫁いで、しんどくないか?」
ウィリアム伯父様は、ヘンリー様の周りを一周し終えると、私の方を見て言った。
「早くまでとは、無理強いしていないのですが・・・。」
「だが、男子を早く産まなければ、国自体が危うくなるのではないのか?」
ウィリアム伯父様はジジイ様の事を言っているようだ。
ヘンリー様の子である男子と絆を結びたがっている、精神崩壊で暴れる恐れのあるドラゴンだからね。
「サーシャに、プレッシャーをかけていないとは言えないよな。」
「そ、それは・・・。」
ウィリアム伯父様の言葉に、反論できずにいるヘンリー様。
「跡取りが出来ないまま月日が流れれば、国が滅ぶのだぞ。ヘンリー殿は、国を支えているはずの者ではないのか?」
ヘンリー様は、完全に言葉をなくす。
「ウィリアム伯父様。私を想って言ってくださっているのは有難いのですが・・・。」
ヘンリー様の腕にかけている手に力を入れて、ヘンリー様を落ち着かせる。
「まだ、そう言った行為をするようになってから日が浅いです。プレッシャーが無いと言ったら嘘になりますが・・・再び、別の方にお願いしたいとは、今のところ思ってません。」
母親になる事がプレッシャーで、側室を希望した事はあったが、今はサポート体制がしっかりしていると判って、前向きに考えるようになった事もウィリアム伯父様に伝えた。
私は、ヘンリー様の腕にかけている手と逆の手を自分のお腹にあてる。
「このお腹に・・・子を・・・・。」
私は、目をパチクリする。
「サーシャ?」
ヘンリー様が声をかけてきた。
「サーシャ、どうしたんだ?」
ウィリアム伯父様も、私に声をかけてきた。
「えっと・・・このお腹の中に生命って出来る・・・」
ヘンリー様とウィリアム伯父様は、コクっと頷く。
「その・・・私と違う命が・・・お腹に?」
私は、疑問形で発言をした。
「懐妊したら、そうなるな。」
ウィリアム伯父様が答えてくれた。
「実感がわきません。」
妊娠するような行為をしてますが・・・。
妊娠していてもいいような感じではありますが・・・。
お腹に命があるって・・・どうなのよ。
まあ、妊娠すると、そうだけど・・・。
前世で、受精から出産までの流れを、テレビ映像で、しっかりこの目に見て理解はしてるのよ。
「理屈は解ります・・・でも、別の命が出来るって、それも、このお腹にですよ!」
マリーのお腹に命が宿っているのは解るし、それを実感は出来るのよ。
でもよ・・・でもさあ・・・それでもよ。
「どんな神秘な出来事を、繰り広げようとしているのですか?」
私は動揺で、目がぐるぐるしている。
「えっ、えっ・・・え・・・お腹に命ですよ・・・宿っていいのですか?」
「いいに決まっているだろう!!」
ヘンリー様は、私の手を引きよせ、私の動揺を落ち着かせようと抱きしめてくれる。
ウィリアム伯父様は、私の背中をポンと優しく叩く。
「サーシャにとっては、何もかも初めての事になるのだからな・・・ゆっくりと落ち着いて実感すればいいようだ。」




