とある学園の、とある休憩の、とあるレポート
聖ドラゴニア学園のとある日の休み時間。
ライ様と勉強する機会が多いため、食堂が勉強の場になっていた。
最初の内は、ライ様と私の2人で勉強をしていたが、気が付けば学年問わず食堂で勉強をする者が増えていて、ライ様と討論に発展すると、たちまち周りに人だかりが出来ていた。
そんなある日の事。
「サーシャ様、ライナス様。」
と、声をかけてきたのは、ラヴィニアさんの取り巻きと思っていたエメラ・オージャイトだった。
取り巻きと思っていたというのも、食堂にラヴィニアさんがいなく単体で声をかけてきたからだ。
私は、目を大きく開けながらも、声をかけてきた内容を聞く。
「お二人は、カティス王太子殿下の事をどのように見ておられますか?」
ドラゴニア王国の王太子殿下として見ているとしか言えないな~。
「いきなり、そのように言われましても・・・。エメラさんは、どのように見ているのですか?」
私は、カティス様のどのような事を聞きたいのか知るために、聞き返してみる。
「その・・・ハミッシュ陛下は、4大公爵家の方々と、いい関係を築けていると思うのですが・・・カティス王太子殿下と公爵家の関係はどうなのかと、思いまして・・・・。」
なるほどね。
私は、ライ様を見ると、考え込むように腕を組んでいた。
「ハミッシュ陛下が目立ちすぎている感じがするよな・・・。」
と、とある男子生徒が口を挟んできた。
その男性生徒の一言に、頷く生徒が多数いた。
確かに、ハミッシュ陛下はゲームの攻略チャラなだけあり華がある。
本人も、それをわかっていて、大いに利用しまくり、挙句に本来のチャラから、逸脱している感じに見えなくもない。
・・・まあ、これに関しては、私だけの感想だけどね。
その、ハミッシュ陛下の子であるカティス様だ。
ハミッシュ陛下の影に、なっている感じはしている気もするが・・・。
「大父上様が言っていた話なのだが・・・カティス王太子殿下が今、手掛けているのは、役人の業務改善なんだ。」
ライ様は、マティアス様がその業務改善に興味を持っている事を伝える。
「国家鑑定士長官になったアーサー・カンラン殿は、王領の西の境で、国家鑑定士の所長をしていた。王領の西側の役人といったら、役人としては、いい人材とはいえないだろう。それも西の境だ。」
そうなのよね・・・。
でも、キマイラ事件の際、国の運営よりも、国の危機に尽力した功績で、長官になった人だ。
危機管理意識に優れていると考えてもいい。
・・・まあ、アーサー・カンラン殿がいた、外貨交換所の受付の人は頂けなかった。
そして、領地の管理者であるラリマー伯爵は、最低極まりない犯罪者だ。
その中で、所長をしていたとは・・・ある意味、猛者と言えるな。
「キマイラ事件の際、国中の人をかき集めただけのが、アーサー・カンラン殿だ。」
後から聞いた話なのだが、アーサー・カンラン殿に渡した、援軍になりえる所に渡して欲しいと、言って渡した手紙の一通なのだが・・・。
その手紙は、この学園に届けられたのだが、それだけでは済まされなかった。
学園長に、手紙の内容の写しを何通も、それこそエンドレスに学園長名で書いて貰い、援軍を国内から大量に向かわせたのだ。
その起点が、買われて国家鑑定士長官となったと言える。
「カティス王太子殿下は、その起点と言うか、人の成長に強い関心を持つようになった事が素晴らしいと、大父様がカティス王太子殿下を褒めていた。」
人の成長をする事を踏まえて、業務の改善を進めているのか・・・。
「業務改善と言っても、その地には、その地のやり方があるんじゃないのか?」
集まって来た生徒の一人が、口を出してきた。
「でも、その地のやり方が、別の地でも、もしかしたら役に立つかもしれないと考えられなくもない?」
と、私の展開に、逆に悪い影響を及ぼすかもしれないという言葉も上がって来た。
「でも、それって、やってみないと判らなくない?今の現状って、それすらも分からないのではない?」
私の言葉に、周りが一同に頷き、関心して考え込む。
「ハミッシュ陛下なら、こういう時は、自らその地へと行くわね。」
旅行を兼ねての視察だね。
「もし、役人自身がそれを直接見に行ったらどうかしら?」
私は、ライ様を見ながら言う。
ライ様とダンビュライト領の役所を視察した時の事を思い出して欲しくて、目で訴えたのだ。
「聞く以上のモノが、身につくな。」
ライ様の答えに、私が目で訴えようとしていた事を理解してくれたようだ。
「カティス王太子殿下の妃は、ダンビュライト公爵家の令嬢だった人だ。」
生徒の一人が、ボソッと言う。
「優秀な役人しかいないダンビュライト領の公爵令嬢シルヴィア様だ!」
感動するように言葉を発する生徒。
「シルヴィア様が、御父上であるダンビュライト公爵にお願いしてダンビュライトの役所に見学の視察を役人たちにさせれば、役所の業務が格段に良くならないか?」
見学ね・・・・。
「一時期そこで働かせて貰い、業務を身に着けさせるのも、いいかもしれないわね。」
長期出張というモノだね。
ただ、心配なのが、いい人材として目を付けられ、そのままダンビュライトで働かないかという、引き抜きという心配だね。
長期出張をするにしても契約が必要そうだ。
「カティス王太子殿下は、ハミッシュ陛下程は、華はないが、ハミッシュ陛下以上に、今後のドラゴニアを左右する重要な事をなさろうとしてる。」
ライ様が、話しをまとめ出した。
「カティス王太子殿のされる事は、今後、私たちが関わる事でもあるわ。それに、今のご時世だから出来る事かもしれない。」
私の一言に、周りは一斉に私の方を見る。
「今のご時世とは、どういうことですか?」
やはり、そこに食らいついて来たか。
「ドラゴニアは、リュヌの銀の大量の入手を試みようとしているわ。」
ドラゴニアに必要なリュヌの銀を、ナーガ王国に真珠の養殖の再開の手伝いと、ドラゴニアにしかない、いろんな色の真珠の養殖の技術を伝える事で、入手しようとしている事を教える。
「リュヌの銀が、大量にドラゴニアに入ってくれば、ドラゴンドクターは、国の巡回を辞る事になるわ。そうなれば、地方に出向くと言う考えはなくなる傾向になりかねないわ。そうなる前に、長期視察の業務参加と言うのかしらね。」
簡単に長期出張と言っていいかしら?
もしくは転勤?
転勤は、その地に勤務を一時期移すから、違うわね。
解りにくいから、やはり長期視察の業務参加になるのか・・・。
「その業務を確立しないとならないわ。」
私の言葉に、役所に勤める希望のある者たちが、卒業後に張り切って頑張るぞという意気込みが伝わって来た。
・・・でもね~。
「卒業まで待たないとならないのかしら、せっかく素敵な内容なのに・・・。」
「立派なレポートをまとめて、連盟で提出すれば、卒業後の進路も明るいと思わないか?」
ライ様が、ワザとらしく私に言ってくる。
「素晴らしい内容なら、私たちがカティス様に提出しても、文句は言われないわね。」
「そうだよな~。その為に俺らと使うなら大歓迎だよな・・・。」
周りの人々の目が血走っている。
「レポートを、それぞれに提出されても困ってしまうけど、皆の意見をまとめ上げて、それを提出するなら、私たちは素敵な役目ね。」
二コリ笑顔を見せる。
「うん・・・2週間後ってどうかな?」
「ライ様、それで決定ですね!」
こうして、2週間後、カティス様に学生たちの連盟でレポートが提出されたのだった。
このレポートは、陛下並びに王太子であるカティス様だけでなく、いろんな方々が、取り込む事になった。
そして、『長期出張』と名を付けてくれたのはハミッシュ陛下、その人だった。




