空高く飛ぶ・・・。
海に出ると、直接の日差しと、照り返しの光で眩しい。
日焼け止めの塗り薬を塗っているモノの、どれぐらいの効能なのかは不明だ。SPFやPAの表示がないので解らない。
そもそも、その2種類の意味はなんだろう?
誰か~、今すぐ前世のインターネットに繋げて、私の疑問を解決してくれ!!
私は、この世界の日焼け止めに、期待をするしかないと、最終的に落ち着き、日焼けしない様にと渡されたストールを、帽子の上からストールをかけ包まる。
暑いな~。
夏だから、暑いのは解る。
クーラーとか扇風機のないこの世界では、前世並みに気温が高い訳はない・・・それも、理解できるわ。
でも、暑いのには変わりないのよ~。
それにしても、男性陣は羨ましいよな・・・。
シャツのボタンを2,3個開けても許されるんだから。
腕まくりもか・・・。
ヘンリー様は、腕まくりはして無いモノの、よく見ると、なんと袖に切れ込みがあり、そこから風が入り込んでいる。
うん、涼しそうだな・・・・。
「サーシャ。どうしたんだ?」
と、ヘンリー様が、抱き寄せて来た。
熱中症になりかねないので、辞めて貰えると嬉しいのだが・・・そうもいかないか。
私は、ヘンリー様のシャツをしっかりと握り、熱中症の危険を感じたら、コスモに頼んで、海の上に流氷でも作って貰い、流氷の上で休憩をとらせてもらおうと考えていた。
それにしても、ヘンリー様の荷物も、私の荷物もグレアム様とハワードさんの方に預けていて、コスモの背には何も乗っていない。
どうしてだろう・・・。
”ギュキョッ ギュキョッ ギュギュギューッ”
と、コスモが顔を、アリエルとオベロンに向けながら鳴く。
「わかったから待っていろ。」
ヘンリー様がそう言うと、いきなり私を抱えてコスモの上に立ち上がる。
「へ、ヘンリー様、な、なに・・な、何をするのですか?」
私は慌てながら、ヘンリー様にしがみつく。
「グレアム殿。よろしいか?」
その一言をヘンリー様が言った後、体が宙を浮く感じがした。
ヘンリー様は私を抱えて、アリエルに飛び乗ったのだ。
・・・ビックリした。
私は、アリエルに乗せられている荷物の上に座らせる。
「サーシャ。背もたれの所にしっかり摑まっていろ。」
私は、言われた通りに背もたれの所をしっかり握る。
「後ろの荷物と一緒でなくても、こちらに来て俺が支えた方が、安全ではないですか?」
グレアム様は、片手を手綱から離し、手を自分の前の空間に指し示す。
「こちらでも充分安全が保たれているから、わざわざ危険を顧みないで、そちらへ行かせる気はない。」
ヘンリー様は冷たく言う。
そして、次の瞬間、私は、ヘンリー様に顎を取られてキスをされてしまった。
人前です。それも結構近い人前です。
私は、背もたれを掴んでいた手を放し、ヘンリー様の肩に手をやり離れようとする。
「背もたれに掴まっていろと、言ったはずだが・・・。」
と、ヘンリー様が言い。今度はヘンリー様の手を掴まれてしまった。
「恥ずかしい・・・。」
私は、背もたれから手を離した理由を一言で伝える。
「サーシャ・・・人前でなければ、もっとしていい雰囲気をかもし出さないでくれよ。」
勝手に、そのように解釈しないでください!!
ヘンリー様は、再び私に背もたれを掴むように言い、私は、困った顔をしつつ従った。
するとヘンリー様は、再びコスモに飛び乗り、コスモに付けられた手綱を取り、背もたれを折り畳み、手綱をそこに結び、再びアリエルに飛び乗る。
”ギュイーン”
と、コスモが鳴くと、いきなり海の飛び込んだ。
”ザパ――――ンッ”
海の中から、何か長細い物が、花火でも打ちあがるかのように、天高く飛び出しきた。
何が出てきたんだと思っていると、海面から細い炎の竜巻が現れ、先ほど天高く飛んで行った物にぶつかる。
炎の柱はすぐに消える。
”ザパッ”
海面からコスモが現れ、天高く飛んで行った物を目がけて空を飛び、口を開くと、飛んで行った物がコスモの口の中に入って行く。
そして、焼き魚の香りがして、気が付く。
コスモが海の中で、魚を採って空高く打ち上げ、空中で焼いて、落下する焼き魚を国に入れて食べたのだ。
私は、目の前の出来事を口を開けて見ていた、
再び、コスモが海に飛び込み、魚を採り、そして、空中で焼き、口に入れて頬張る。
”ギュイ~”
と、コスモは嬉しそうに鳴く。
うん、前世でテレビでしか見たことがないが、イルカショーを見ているような感じに思えた。
でも、イルカよりもドラゴンの方が大きいから、こちらの方が断然迫力があるか・・・。
少し呆気に捉えると、ヘンリー様がギュッと、背もたれを掴む手に力が入り、私との密着が多くなる。
「サーシャ、しっかり摑まっていろ。」
そのように言われて、私は言われた通りにしっかりと、取っ手を握る手に力が入る。
コスモが再び、海から魚を打ち上げ空中で焼くと、次の瞬間アリエルが、急上昇をして、落ちて来る焼き魚を口に入れた。
次に焼いた魚はオベロンの口に入り、その次の魚はペルディータの口へ入り、次は再びコスモ自身へと、交互に焼き魚がドラゴンの口に入って行く。
その間、こちらは、ジェットコースターに乗っているのような、上下左右の動きが展開されていた。
「姉さま!!」
私は、ペルディータの背もたれに結わかれている姉さまの口から、泡が吹いているのを見て慌てる。
「コスモ、それそろ終わりにして、大物を捕まえてくれ。」
ヘンリー様は、そのように言うと、コスモは海に潜るが、潜ったきりとなった。
チェスターさんが、背もたれの姉さまを診る。
「気を失っているだけだ。」
まずは、ひと安心をする。
「早めに、ジーク大陸のリンドル国に向かいましょう。」
チェスターが提案をしてきた。
ジーク大陸のリンドル国は、ドラゴニアのあるジャンナ大陸と、ナーガ国やイリス帝国のあるコアルト大陸の間にある、この世界で一番小さな大陸がジーク大陸。
そのジーク大陸のリンドル国に、一泊する予定で計画をしていたようだ。
身動きが取れない姉さまがいる事を気に留めて、そのように配慮してくれていたようだ。
「フレディとクリスティーナ殿が出会った修道院に、泊まる予定だ。」
ヘンリー様が、そのように言うと、グレアム様がヘンリー様の方を向く。
「お祖父さま、お祖母さまの出会った場所に行くとは・・・・。」
「出会わなければ、グレアム殿はここにはいないからな。」
どうやら、姉さまだけでなく、グレアム様のためにも、リンドル国によるつもりだったようだ。
聖地巡礼だね~。
”バサ―ーーーッ”
と、大きな魚が、海面から空高く飛ぶ。
再びコスモの炎で焼くのかと思いきや、氷漬けにされ、コスモの背に乗っかった。
すると、ヘンリー様は、コスモの背に飛び乗り、背もたれを起こし、氷漬けの魚が荷物としで背もたれに結ばれる。
こうして、私は、再びコスモに乗り込むと、氷漬けの魚から、若干冷気が流れ込み、先ほどより快適に感じながら、ジーク大陸のリンドル国へと向かった。




