表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

344/423

向かいます

評価、ブックマーク登録をして頂き、ありがとうございます。

 「サーシャ様、ご自身の立場を考えてますか?」

 デボラの手に持っているのは、シンプルなボンネットの帽子。

 私が、ナーガ王国へ行く際の日焼け対策として被る為に、王都で買って来た物だ。

 「メイドから借りた物ですか?」

 私は首を左右に振り、帽子屋へ行き買った物だと伝えた。

 「なら、メイドに差し上げてください。」

 私は驚き、理由を聞く。

 「サーシャ様は、公爵家にほぼ嫁いでいる令嬢なんですよ。使用人のような者がする恰好を身に着けるのは、周りに貶される恐れがあります。」

 そう言っても・・・あまり目立ちすぎる格好も良くないような・・。

 私は、その旨を伝える。

 「それでも、この帽子はやりすぎです。目的地がナーガ王国の宰相の家なのですよ。一般家庭にお忍びで向かっているのではありません。」

 商人の娘もしくは、下級貴族の格好をするように言われてしまった。

 あまり目立つ格好をしない方がいいと思って、飾り気のないが、素材のいい帽子を買ったのにな~。

 「サーシャ様が、大量のレースとフリルを使っている物が苦手なのは、聞いていますが、極端すぎるのです。少しは取り込もうと努力してください。」

 ”コンコンコン”

と、ドアのノック音が聞こえて、お腹の大きいマリーと、どこかで見覚えのある女性が数人、箱を持って入って来た。

 デボラは、持って来た椅子に座るように伝えて来る。

 「座るのは、マリーではないの?」

 お腹の子は、もう産まれても大丈夫な大きさになっていると聞いているんだぞ。

 「マリーさんは、ソファーに座って、荷物の確認をして貰いますから、安心してください。」

 デボラは、そう言い、マリーにソファーに行ってもらう。

 私は、マリーが座るのを見てから、椅子に座る。

 すると、箱からボンネットの帽子を取り出した。

 ボンネットの帽子には、薔薇のコサージュが付いている。

 「ま、ま、待って・・・レース生地はいいとして・・・薔薇のコサージュは・・・出来れば、鈴蘭がいいかな?」

 私は、鈴蘭が婚約者の守護の花と、言われているのを伝える。

 「そのような言い伝えを、聞いたことはございませんでした。」

 帽子を持ってきた人たちが、お互い顔を見合わせながら言って来た。

 「フィ・・・でなく、学園の生徒から聞いたのです。」

 フィオナの故郷と言おうとしたが、事実は違い、私が悪役にならない為。フィオナが、私に鈴蘭のモチーフを身に着けさせる為に取った嘘だ。

 ここで、フィオナの故郷と言えば、デボラの故郷でもあるので、嘘をついている事になる。

 そうなれば、これまでの苦労が水の泡だ。

 私は、悪役になりたくないので、嘘でも押し通す。

 この際、鈴蘭の花が、婚約者の守護の花というのを広めようではないか。

 嬉しい事に、帽子を持って来た女性の一人が『鈴蘭を店に取り込まなくては・・・。』と、言っていたので、まずは安心だ。

 「レース生地の柄も、出来ましたら、鈴蘭かコスモスがいいかな?」

 ”ギラッ”

 ソファーから、マリーが睨め付けて来ている。

 「マリー・・・どうしたの?」

 「コスモスは、ヘンリー様のイメージですから辞めましょう。桑の実はありますか?」

 マリーは、店員に聞く。マリーって、コスモス嫌いだったっけ?

 

 貝殻柄のレース生地のボンネットの帽子を購入する事になった。


 そして、帽子を持って来た女性たちが、一年以上前のヴァネッサ様の誕生日のに、私の手が痙攣して、ドレスを着せてくれた人たちだと、思い出した。


 ◇ ◇ ◇


 ドラゴンたちの背中の鞍が、いつもと違い大きな荷物を乗せる用物で、背負子のようになっている。

 だけど、背もたれ付きの鞍に見えるので、乗る人間はいつもよりは快適に過ごせるようにも見える。


 チェスターさんと絆を結んでいるペルディータの背負子には、姉さまがロープでぐるぐる巻きにまかれている。

 姉さまの頭には、私が王都で購入したボンネットが付けられていた。

 

 「サーシャ様。鞄にしっかり、日焼け止めとやけどの塗り薬が入ってますので、しっかり塗ってくださいね。」

 私は、マリーにお礼を言う。

 「あなたが生まれる前には、帰ってくるからね。」

と、マリーのお腹に声をかける。

 マリーは、嬉しそうにお腹をさすった。

 「行ってきます。」

 城のみんなに見送られながら、ルベライト城を発った。

 

 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ