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クレシダ

 ナイジェルさんとケートさんのお願いから5日が経った。

 私は、朝食を2人のもとへ持っていく。

 焼きおにぎり風雑炊

 同じ物を作っているが、毎回違う人が作ることで微妙に味の違いを出している。

 3日ほど前に2人はそのことに気づき、毎回楽しみが出来たと言ってくれた。

 「おはようございます。ナイジェルさん、ケートさん。」

 私は、サイドテーブルの上に食事の乗っているトレーを一端置き、ベッド上で食事できるように小さなテーブルを持ってくる。

 ナイジェルさん、ケートさんは起き上がる。

 小さいテーブルをベッドの所へ運ぼうとする

 「・・・あ、あなた。」

 ケートさんがナイジェルさんを呼ぶ。

 私はケートさんの方を振り向く。

 「!?」

 ケートさんの茶髪に近いブロンドの髪の色が白くなっていく。

 そして、全て白くなる。

 すると今度は、ナイジェルさんの黒髪が白髪に染まっていきすべて白髪となってしまった。。

 「サーシャさん・・・お願いします。」

 ケートさんが微笑みながら言った。

 私は意を決して、窓の方へ走り窓を全開にする。

 それから、歌いだした。

 屋敷中に届くように大きな声で歌う。

 その歌声で屋敷の人々は気づく、2人の最期がそろそろだという事。

 屋敷の人々は、寝室に集まりだす。

 そして、歌う。

 2人をクレシダのもとへ送るための歌を歌いだす。


 だから、どうか、クレシダにとどいて・・・。


 「・・・クレシダ・・・クレシダ。」

 ナイジェルさんが、クレシダの名を呼んでいる。

 ケートさんは、口を動かしている私たちと一緒に歌を歌っているのだ。

 クレシダのもとへ逝くための歌を・・・。

 ひと回り大きい翼の、心優しい白いドラゴンのもとへ逝くために・・・。

 ”フワ~”

と、部屋のカーテンが揺れ風が部屋の中に入ってくる。

 ”キー”

 ドラゴンの鳴き声が聞こえる。

 幻聴?

 「・・・クレシダ。」

 ”ピヒューーン バサ~ッ”

 強い風が部屋の中に入ってくる。

 強い風で目をつぶる。

 「・・・クレシダ。」

と、ナイジェルさんのクレシダの呼ぶ声が聞こえる。

 ”キー”

 ”バサリッ”

 私の横を何かが横切るのを感じる。

 「ゴフッ」

 ナイジェルさんが何かを吹き出す声がする。

 私は目を開ける。

 ・・・え?

 ナイジェルさんがせき込む、その上に1メートルいくか位の大きさの白い物体。

 ・・・歌がやんだ。

 「ゴフッゴフッ・・・君は・・・・え!?」

 咳をしながら、白い物体に話しかける。

 「・・・クレ・・シダ」

 ナイジェルさんの上に乗っかっているのは、白い子供のドラゴンだった。

 ”キーーッ”

と、高らかに鳴き声をあげると、ナイジェルさんの前に白いドラゴンのマークが現れ、胸のあたりで消えた。

 「クレシダ」

 ”キー”

 「クレシダ」

 ”キー”

と、ナイジェルがクレシダの名を呼ぶと、白い子供のドラコンが『はい』と返事をするように鳴いた。

 「・・・あなた?」

 ケートが、疑問形でナイジェルを呼ぶ。

 ”キキュッ”

 「私の妻のケートだ。」

 子供のドラゴンに語り掛けるように言うと、子供のドラゴンは翼を広げる。

 ドラゴンの体からしてひと回り大きい翼。

 ”キーーッ”

と、ドラゴンが鳴くと、ケートの前に白いドラゴンのマークが出てきて、胸のあたりで消える。

 ”キーキーキキャッ”

 「よかったら、そこのを食べるといい。」

 ナイジェルがそういうと白い子供のドラゴンは、サイドテーブルに一端置いていた2人の朝食の焼きおにぎり風雑炊に口を付ける。

 ”キーキャッ”

と、鳴くと焼きおにぎり風雑炊をガツガツと食べ始める。

 その頭をなでるナイジェル。

 「クレシダが・・・帰ってきた。」

 ナイジェルは涙を流した。

 それを見た白い子供のドラゴンは食事を一端やめて、ナイジェルのもとへ行き顔をなめ始める。

 

 ああ、クレシダだ。


 クレシダは一度死んだけど、生まれ変わって再びクレシダとなってここに戻ってきたんだ。

 ・・・ひと回り大きい白い翼の心優しいドラゴン

 どこまでもクレシダは優しいドラゴンだ。

 再び、ナイジェルさんと絆を結ぶために、戻ってきてくれたのだ。 


 ナイジェルはベッド上に座りクレシダを膝に乗せ、焼きおにぎり風雑炊の入った皿をクレシダの前に持ってくる。

 「お腹すいているのだろう。生まれてからすぐにここに飛んできてくれたのだから。さあ、食べなさい。」

 ナイジェルはそういうと、クレシダは焼きおにぎり風雑炊を食べだす。

 ナイジェルさんの手に持った皿が空になる。

 「こちらも食べて。」

と、伴侶の絆を結べたケートさんがベッドから起き上がり、サイドテーブルのトレーの上のもう一つの焼きおにぎり風雑炊の皿をクレシダに差し出す。

 ナイジェルさんがケートさんに左腕を差し出し、自分もとへ引き寄せ自分のベッドに座らせる。

 ケートさんの頭が、ナイジェルさんの肩に乗り、ナイジェルさんはケートさんの腰に手をやる。

 ナイジェルさんの右手はクレシダを撫でていた。

 「おいしいか?」

 ”キーッ”

と、嬉しそうにクレシダが鳴く。


 その後、クレシダは屋敷中の人々の顔をなめまくる作業へと移ることとなった。

 もちろん私も顔をなめなめされましたとも。

  うれし涙をぬぐうために・・。

 塩分取り過ぎないでね。

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