話合いの火蓋が切られた・・・
「ヘンリー。昨夜はサーシャと何かあった。」
やはり、ハミッシュ陛下は昨夜の事を聞いて来たか・・・。
「悲鳴が聞こえ、お前たちの部屋に駆け付けたという使用人の報告も受けている。」
ハミッシュ陛下は、俺たちが喧嘩をしたと思っているようだが・・・。
「サーシャと、喧嘩はしてませんので安心してください。」
本当に喧嘩ではない。
・・・喧嘩でなく、見解というべきだな
「だが・・・脱衣所に閉じ込められていたと聞いているぞ。」
俺が、脱衣所に閉じ込められたのは事実だが、あくまで喧嘩ではない。
「話合いの為に必要な処置です。脱衣所に椅子が運ばれてましたので安心してください。」
ハミッシュ陛下がため息をついた。
「そう言われてもな・・・事実を話してくれないと、信じられない。」
「プライベートを易々と話せますか?」
俺は、ハミッシュ陛下の言葉に反論した。
「王命を下してもいいんだぞ。」
おいおい、国王の特権まで出してくるとか、勘弁してくれよ。
俺は、王命まで出さないで欲しいと訴えた。
「では、話しをしろ。」
「大っぴらに話す事は出来ません。あくまで、俺とサーシャの問題なのですから。」
そのように言うと、ハミッシュ陛下は、部屋にいる者たちを部屋から出して、俺とハミッシュ陛下のみとなった。
ハミッシュ陛下が、お茶を出してきた。
国王である陛下がお茶を注ぎ、出してくるとは・・・話をするしかなくなるじゃないか。
「昨夜、サーシャの後にシャワーを浴びて、出ようとしたら、脱衣所に、部屋に置かれているはずの椅子が一脚置かれていて・・・。」
脱衣場の扉の向こう側には、フットベンチが置かれ、ドアを押して開放するもフットベンチが丁度、ドアの向こう側の廊下にフィットされて、手の厚みほどしか開かない。
”ドンドンドン”
と、俺はドアをノックして、脱衣所から出られない事を伝える。
「ヘンリー様。申し訳ございません。どうしても、聞きたいことがありまして・・・このような行動をとってしまいました。」
サーシャは、申し訳なさそうに訴えて来ているのが伝わってくる。
「聞きたいことがあるなら、面と向かって話をすればいいだろう。」
「それが、出来ないから、このようなドア越しのお話をお願いしているのです。」
サーシャから、椅子に座るように促され、ドアの前に椅子を置き座る。
その事を伝えると、サーシャがお礼を言って来た。
相当、悩んでのことだったようだな。
「それで、聞きたいこととは何だ?」
ここまでの事をして聞いて来るのだ、相当な覚悟があってのことだろう。
「その・・・ですから・・・聞きたい事はですね・・・。」
聞きにくい内容なのだろう、先に話がつながらなく、おどおどしているのがドア越しでもわかるように伝わってくる。
本当に、サーシャは可愛いな~。
「どうして・・・何で、その・・・男の方は・・・男の方は・・・。」
男がどうしたって?
「娼婦を利用するのですか?!」
・・・・。
「結婚して、奥様がいるのに、娼婦の館に出入りしていると、報告書にありました。」
そのな・・・ラリマー元伯爵の工房の地下に隠された、娼婦の館の事を言っているのは解るが・・・。
「奥様だけでは。足りないのですか?」
「俺は、サーシャだけでいい。」
俺が、将来、他の女を求めると思っての行動なのか?
「えっ・・・あ・・ああ・・・はー・・・ああ・・・。」
俺の告白に、サーシャが動揺している・・・求めている答えが違ったか?
「娼婦がですね・・・その・・・存在している事態・・・でも、正室、側室といますから・・・足りないのか・・・。」
サーシャは話しながら、一夫多妻制の存在している世の中の流れを汲んだか・・・。
「男の人は、唯一の女性が、言葉だけなのですね・・・そう言えば、側室を娶って欲しいと、私自らヘンリー様に言いました。」
子供を産むのが怖いというサーシャが、子を成す為に言ったっけな。
まあ、その条件を呑むつもりは微塵もないが。
「ですが、その制度があるから、男性に唯一を求めてはいけないと、教え込まれたからで・・・。そもそも、どうして、男性には唯一性がないのでしょうか?」
「俺に、唯一性の考えを求めるな!」
俺は、ビシッとサーシャに伝える。
ビシッと言わないと、突拍子のないところへ行きそうだ。
「俺は、サーシャしか、女性として見ていない。その考えの上で、他の男、それこそサーシャの言う、娼婦を利用する男の考え方を言う・・・いいな。」
俺は、サーシャがその言葉を理解する返事をするまで待った。
そして、頷くように『はい』と、返事が来た。
まだまだ、本日は長いです。
お付き合いお願いします。