表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

332/423

願い

 夕食が終わると、リディアちゃんは寝る時間に近づいている事から、ソフィーさんと食堂を出て行った。

 食堂のテーブルには、食後のコーヒーが回収され、紅茶が出て来る。

 すると、デリック先生が立ち上がり、私の方へと来る。

 「お約束通り、お返しいたします。」

と、私の前にリュヌの銀の櫛が置かれる。

 ・・・母の形見の品。

 「ヴァルナに、リュヌの銀の耐性は付きましたか?」

 私の質問に、デリック先生は、首を左右に振る。

 まだ、耐性が付いていないのね。

 「最初の頃よりは、良くなっているのだけどね・・・。」

 ルイーズさんも、ヴァルナにリュヌの銀の耐性を持って欲しくて、仕事の合間に見守っていたのね。

 私はエリック様の方を見る。

 「何かな?」

と、エリック様に話しかける前に察して、先に言ってくれた。

 「姉を夏休みに入るまで、あのまま牢に入れておいて頂けませんでしょうか?」

 エリック様は、微笑みを見せてくれる。

 「一か月とちょっとぐらい任せていいよ。」

 私は、頭を下げてお礼を言い、デリック先生の方を向く。

 「明日、ここを発つ前に、形見をお渡ししますね。」

 私は、デリック先生に笑顔を見せるも、デリック先生は申し訳なさそうな顔をする。

 「ナーガ王国へ行けば、形見の品を手放すのでしょう。少しでも手元に置いておくべきでは?」

 私は、首を左右に振った。

 「元々、ナーガ王国に捕虜になったドラゴンと国家鑑定士、それにドラゴン騎士の解放をお願いした時に手放した物です。」

 私の事を調べるために、派遣した諸々が、ウィリアム伯父様に捕まり、その者たちの解放をお願いするために形見を品を渡した。

 それが、姉さまのホルンメーネ国から脱走した事を伝えるために、再び私の手元に来たのだ。

 ・・・昨日の姉さまに会った後に、すぐに返されたら、見るのも嫌になったであろう品だ。

 今は、周りに私を想ってくれる人々がいるから、まともに見る事が出来る。

 なら・・・周りの人々の為に使ってあげたい。

 「人々の為に使った品で、再び人々の為に使うように戻された品でもあります。」

 ウィリアム伯父様が私の戻した理由も、そう言う事なのだろう。

 「ですから、ナーガ王国に行くまでの少しの間ですが、人々の為に伝うべき品なのですよ。」

 私が、そう言うと、デリック先生は頭を下げてお礼を言ってくれた。

 


 ◇ ◇ ◇


「サーシャ。大丈夫なのか?」

と、ヘンリー様は、心配そうに私の手を握っている。

 「そばにヘンリー様がいてくれますから大丈夫です。」

 私は、そう言うと、地下牢への扉を開いた。

 「姉さま。」

 「何しにきたの?」

と、嫌々そうに姉さまは言って来た。

 「夏休みに入ったら、姉さまをナーガ王国に連れて行くことになりました。」

 「何ですって!」

 姉さまはいきなり鉄格子を握り、私に訴えかけてきた。

 「元々、ホルンメーネから出たら、ヘリ―ドール家が捕まえに来るという流れだったはずです。」

 そう言う約束で、ウィリアム伯父様から、姉さまたちのホルンメーネでの自由をお願いしたのだ。

 それが出来なくなった今、ナーガ王国に連れて行かないとならない。


 私は、姉さまに見えるように、手に持っている物を見せる。

 「母さまの形見の櫛です。これをウィリアム伯父様に差し出せば、内容にもよりますが、お願い事を一つ叶えてくれると思います。」

 そう言うと、やはり姉さまは、自分の自由を言って来た。

 「姉さまの自由をお願いしたら、姉さまも私も、きっとウィリアム伯父様に殺されますよ。」

 私は、再度、内容にもよる事を伝える。

 「自由以外何があるのよ・・・・そもそも、何で私に聞くのよ。」

 「姉さまが、母ステラを慕っているから、姉さまの為に、母の形見を使うべきと思ったからです。」

 私の一言に、姉さまは面食らい考え込む。

 「それで、どのようなお願いをしますか?」

 「簡単に思いつくわけないでしょう」

 それも、そうだわ。姉さまのいう通りだ。

 「夏休みまで、一か月少々時間がありますから、ゆっくり考えてください。」

 そのように言い、その場を立ち去った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ