溺れる者は・・・
「ロゼリス殿の恋人は、どこにいるのですか?」
例え恋人に捨てられたとしても、聞きだす為には、捨てられたという事は伏せておくべきだな。
「ふふっ・・・目の前にいるではありませんか、ヘンリー・ルベライト殿。」
誤魔化されてしまった。
捨てられたと付け加えるべきだったな。
ロゼリス殿は、鉄格子に胸を押し付けてきた。
一般的な男は、この胸の食い込みに刺激を受けるのだろうか?
俺には、ボンレスハムのような、肉を紐で結わいている、それにしか見えない。
ボンレスハムは、美味しいと思うが、この肉は・・・。
もしくは、ボンレスハムが美味しいから、この肉も美味しそうと感じるのか?
それが、そそるという感情になのか?
なら、女性もそそられるよな・・・やはり、わからない。
では、サーシャがこのような胸を持っていたら・・・。
まず、こんな行動をサーシャは、絶対にしないと断言できる。
サーシャなら、胸の大きさに戸惑い、隠しかねない。
そして、恥かしそうに、俺に披露し・・・やはり隠そうとして・・・。
うん、やはり、サーシャは可愛いし、そそられる。
「ヘンリー殿。こちらへ来て、私と楽しみませんか?」
ロゼリス殿は、俺を見つめながら、鉄格子の出入り口に向かう。
「私・・うまいですよ。ねぇ・・・さあ・・・こちらへいらして・・・。」
俺は、大きなため息をつく。
「ロゼリス殿、何点が言わしてください。」
俺の発言に、ロゼリス殿は微笑を浮かべる。
「あら、心配なさらずとも、サーシャには秘密にしておくわよ。」
「黙れ!・・・と、まず、一点目ですね。」
ロゼリス殿が、話し出そうとするが、俺は鉄格子を叩き黙らせた。
「次に、ロゼリス殿のその下品な男の誘い方に、幻滅をしてますので、もう俺にはしないでください。」
「なっ」
ロゼリス殿は、つい口が出てしまったようだったが、再び鉄格子を叩き、それ以上言わせないようにした。
「ロゼリス殿のその行動で、なおサーシャの事が好きになりましたとも、言っておきます。」
ロゼリス殿が、不満そうな顔を浮かべているが、俺には関係ない。
「サーシャとは、共に手を取り合い、嬉しい時も悲しい時も、一緒に生きていきます。」
サーシャにも、言った言葉をロゼリス殿にも伝える。
「溺愛という言葉がありますが・・・、正にそれですね。」
自負していいが、俺はサーシャを溺愛している。
「上に立つ者として、時に制御しないと、ならないとは思うのですが・・・。」
俺は、自分の手を顎に持って行き、考え事をしている格好をするが、すぐに、まっすぐロゼリス殿の方を見る。
「時に、堂々と溺れ切っても、サーシャや周りが、制御しようと動いてくれますからね・・・安心してサーシャを溺愛できる。」
この俺が、のろけを言う人間に、なるとは思わなかったが、サーシャならのろけてもいい。
「では、早速、制御して貰いたいですが・・・いいですよね。」
いきなり、ドアの方からマリーの声がした。
マリーは、ロゼリス殿の方へ向かい、持って来たトレーを渡す。
トレーには、サンドイッチと野菜スープが置かれていた。
昼食の時間か・・・気が付かなかった。
「ヘンリー様、頼みますから、時と場所をわきまえてください。今朝、塔の階段の汚れを見て驚いたんですからね!!」
マリーは、少し顔を赤くし、恥ずかしそうにしながら怒る。
そう言われても、サーシャを落ち着かせないとならなかったからな・・・時と場合を考えたら、あの様にするしかなかったのだが・・・。
「朝、起こしに来なかっただろう。掃除しようにもできなかったぞ。」
「当たり前でしょう。だ、だって・・・まだ・・・っ」
マリーは、俺に指を刺しながら言葉を言おうとするも、続かなくどもっていた。
「それに、マリーは、ルベライト公爵家の使用人。サーシャの専属なのだから、サーシャを支えるのが勤めのはず。そこには、特殊な清掃も含まれているのではないのか?」
正論を言ってみるが、みるみる鬼のような顔立ちになっていく。
「ヘンリー様。サーシャ様を溺愛しすぎで、逸脱している行動をとっていると指摘しているのに、理解しないとはどういうことですか?制御する者がいるから、サーシャ様を溺愛出来るような事言ってましたよね。」
そうだな、確かにその通りだ。マリーは、制御する者だな。
それも、言ったそばからマリーは、指摘してくれた。
「では、善処する。」
「それって、やる気のない制御とも聞こえるのですが・・・。」
マリーは、正解を即答で答えてくれたよ。
「マリーは、実に頼もしいな。」
「感心しないで、改心してください!!」
だから、出来たらするで『善処』なのだが・・・どう、答えればいいのか。
「それで、出来ますよね。言わなかった事には、しませんからね。」
「サーシャとの最初が、最初だから、『善処』と、いう言葉が適格な言葉だというのにな・・・。」
マリーは、キマイラ事件の際、俺とサーシャがドラゴンの大樹で、何をしたかをしっかり伝えている。
だから、言いたいことは伝わっているはずだ。
「・・・・ですから、制御してくださいと、言っているのではありませんか、それも理解をしてください。」
「このままでは、押し問答を繰り返すだけだぞ。」
「では、食事が不味くなりますから、他でやってください。」
ロゼリス殿は、うんざり顔で俺とマリーを見る。
”ずずずずーーー”
と、ワザとらしく、野菜スープを音を立てて飲む。
再び、すぐ次を出します(やはり、サブタイトル決まり次第・・・です)




