地位や名誉の責務とは・・・
私の前には、コーヒーと食パン、食パンには、イチゴジャムが塗られているが、イチゴの果肉の破片が無く、つぶつぶがイチゴジャムだと、わかった。
20年以上前の定番の朝食、休日バージョンが、私の目の前に置かれている。
懐かしさで胸がいっぱいだが、お腹はしっかり空いている。
「いただきます~。」
と、手を合わせてから声をかけから、温かいコーヒーを一口飲む。
「いつも以上に、幸せそうに食べるのだな~。」
目の前の席に座っているライ様が言って来た。
ライ様も、食パンにコーヒーだ。
いつもより質素な朝食なのは、私がクラウンコッパー公爵の娘と、学園の生徒に知れ渡り、トマトジュースをかけ、食べ物を無駄にしたのが原因で、今日まで、食堂の食事が3番手となっている。
昨日は、聖ライト礼拝堂で看病されて、夜にコスモにヘンリー様と乗って学園に帰って来たので、昨日の質素料理は頂いていなかった。
昨日、口にしたのは、聖ライト礼拝堂の方々が作って頂いたおかゆと、デザートにキウイを貰った。
デザート付きになった時点で贅沢になるんじゃないかな?
まあ、病人だったんだし、許して貰おう。
私は、パンをかじる。
そして気が付き、食べるのを一端やめる。
「ライ様。品数が少ないから、贅沢をしていないというのは違うようです。」
ライ様は頭を傾けて、どういう意味だと訴えてきた。
「このパンは、庶民が一般的に購入してるパンではありません。厳選した食材から作った高級なパンです。」
さっくり、もちもち感が、前世で食べていた8枚切りの食パンとは比べるべくもなく、美味しいのだ。
スーパーの食パンと、食パン専門店の食パンと、言った方が分かりやすいかな、何せ美味しい。
「うん・・・そうか。庶民が食べるパンと、ここで出されるパンに違いがあるのだな・・・。」
と、感心するようにライ様は言い。
一般庶民が購入しているパンを一度は食してみるべきだと、ボソッと言っていた。
そして『ドラゴン奉仕』の時間となり、隣接しているアジュムへと向かう。
「私たちの食べるべき料理を偉そうに食べているんだから、しっかり仕事をしなさい!!」
聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。
「かすめ取っているのだから当然よね。」
幻聴であって欲しい言葉が行きかっているよ・・・情けない。
それも、その言葉に促されて、掃除を放棄して、ベンチに座って休んでいる者が、あちらこちらにいるよ。
罰を課した意味を理解してないとは・・・。
もしくは、『もっと、罰を~!!』と、マゾアピールしているとか・・・キモッ
私は、その集団を呆れ顔で見ながら、掃除をする。
「授業が終わりましたら、カフェで美味しい物を食べましょう。」
「私、ローストビーフが食べたいわ。」
皆、カフェやら、レストランやらの会話をしている。
「サーシャ様も、掃除を辞めて私たちを会話をしませんか?」
私はマゾではないので、誘わないでくださいませんか?
「私は、掃除をします。」
ニッコリ笑顔で言ってやった。
「サーシャ様は、一番の被害を被っているではありませんか?」
「それも、施設の子に食事を持って行かれているのですよ。」
もっと被害を被らせるおつもりなのかしら?
「私、予てよりサーシャ様と、お話をしたいと思っておりましたのよ。」
どのような話ですか?
『サーシャ様と』と、『お話をしたいと――――』の間に、具体的な話の内容を述べるはず。
それが、無いという事は、『予てより』ではなく『身分がある』と、置き換えて理解しても、文句は言えませんよね。
『サーシャさん』から『サーシャ様』に、呼び名も変わっていますし・・・。
「サーシャ様は、どうして公爵令嬢なのに、身分の低い男爵の令嬢を名乗っていたのですか?」
やはり、地位の話かい!
「地位や名誉と言ったモノの、本当の意味を理解していない人たちと、そのような話をしたところで、地位や名誉を軽んじるだけでなく、己のプライドまで歪ませるだけ・・・ですので、控えさせていただきます。」
私は、その場を去ろうとすると、囲まれてしまったよ。
・・・あなた方、休憩しているのではないの?
暇人だな・・・ああ、暇人だよね。清掃活動してないんだから・・・。
「公爵令嬢と知れ渡ったたとたん、偉そうな態度をとるとは、何様のつもりよ。」
様は付けなくても、私は私でしかありません。
「ドラゴンの大樹を失った国の出身のくせに、偉そうな態度をとらないでよ。」
あの・・・・まったく意味が解らないのに、なぜ、私を囲んだ方々は、理解出来るのかしら、不思議でならないわ。
「ヘンリー様の婚約者だからって、のさばらないでくださらない。」
のさばるって・・・我がもの顔で振る舞うって意味よね。
清掃出ずに、我がもの顔で休憩してる人たちに、吐かれるとは思いのよらなかった。
人間違いしているとか?
私を囲っている人が全員で、人間違いをするわけないか・・・・。
「地位と名誉には、責任が生じます。責任が一番大きいには国王だとはわかりますよね。」
ドラゴニアでは、ハミッシュ陛下だよね。
そこまでは、理解できるよね。
「ハミッシュ陛下が敬われているのは、国民を導く、国王としての責務を全うしているから、悪政なんてしてませんものね。」
視察癖はあるが、視察した分、しっかりやる時はやる。
悪政をしかない様に自分を律しているし・・・。
まあ・・・何度も言うけど視察癖はあるけどね。
「それで・・・皆さんの地位や名誉の責務は、地位や名誉があるから敬えと強要することが責務ですか?」
周りの人たちよ。
お答えをどうぞって、何も言えないか・・・。
「そんな風な敬われに、ご満悦しているって・・・・可笑しいと思いませんか?」
どこぞの喜劇だよ。ドラゴニア王国の地を喜劇の劇場にする気ですか?
「それを望んでいるのですか?」
「そんな訳ないでしょう!!」
それは、即答で違うと答えるよね。
「では、国民を正しく導けるように、どのような行動をとればいいか、お分かりですよね。」
私は、周りの休憩している人々を見回す。
周りの休憩をとっている人々は、休憩を辞めて、施設の子供と清掃をしたした。