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〇番外編〇  クリスマスに、感謝のファイヤーを・・・

 「沙弥那・・・また、あんたは・・・。」

 大学の友人が、呆れたように私を見る。

 壁掛け用のカレンダーを、食堂のテーブルに広げ、メモ書きの所に記入しているのだ。

 

 12月に入ると私は、自宅に掛けてあるカレンダーを破き、随時持つようにしている。

 年末年始のバイトの為に、びっしりと時間単位での記入をする。

 スマフォのカレンダー機能を使うのは、スマフォの充電がなくなり、その充電で電気代を食うのでやめている。

 カレンダーは、無料で配っている社名付の物だ。

 日付の下にメモ書きが出来る物、それもメモ書きが大きめの物を使っている。

 通常時は卓上を持ち歩いているのだが、年末の12月のみ壁掛け用を利用している。

 休み中に稼がないと、教材費が買えない恐れがあるからだ。

 それで、周りに迷惑はかけられないし、かといって食費をこれ以上、切り詰めるとなると・・・健康面が心配になる。

 去年は喉の手術をしたから、健康には気を付けないと・・・。

 入院してた事が、貯金を切り詰めて、今年は特に頑張らないとならないのよね。

 

 もう一人の友人が、トレーに親子丼を持ってくる。

 「まったく沙弥は、いつ彼氏が出来るのかしらね。」

と、言い、親子丼を食べだす。

 「私・・・毎年この時期に彼氏がいるわよ。」

 友人たちは驚き、2人で顔を見合わせ、私に聞いて来る。

 「サンタクロースと神様!!」

 私はニッコリ笑顔で伝えると、2人は肩を落として呆れ顔をする。

 「ちょっと、その顔なによ。私の心にシャンシャンと、そしてゴーーンと響く彼氏なのよ。」

 「はいはい。」

 何よ、その反応は・・・神様は108回という回数まで決まったゴーンな響なのよ。

 そのような事を友人の伝えるも、呆れ顔に変化はなかった。

 今日はクリスマスイブだから、サンタにメロメロなのにな・・・。


 授業を終えるとすぐに、目的地へと向かう。

 日雇いのバイトのケーキ屋へ。

 

 「君が日雇いの浅見さんだね。」

と、事務所に、トナカイの被り物を付けた店長さんが来た。

 「・・・よろしくお願いします。」

 私は、戸惑いながら言う。

 いつもなら、戸惑うなんてしないけど・・・流石に、じっくりと見られてしまうと戸惑うわよ。

 店長さん・・私の周りを一周しないでくださいませんか?

 ・・・・あなたの目線が、もうセクハラですって、言いたくなる。

 「うん、ちょっと待っててね。」

 そう言うと、事務所の奥へ行き、何やらガザゴソと音がする。

 何の音かしら?

 奥から店長さんが戻ってくると、私にある物を渡す。

 「それに着替えてね。」

 店長は、嬉しそうにウィンクをする。

 「寒いと思うから、カイロあるから使って、それじゃあ、店に戻るから、着替えたら店内に出て来てね。」

と、箱で私に渡してきた。

 私は渡された袋を開けると、襟元、袖ぐりと裾に白いファーに、胸元の2つのボンボン。ひざ丈のフレアースカートの赤いワンピースだった。

 サンタの格好をしろという事ですね。

 おっと、黒いベルトと、白いファーのレッグウォーマーもついていた。

 先ほどの店長は、私のサイズを見ていたのね。

 それなら、それで言ってくれればいいのに・・・。

 私は、サンタのコスチュームをして、店内に出る。

 「可愛いわね~!!」

と、サンタの帽子をかぶった女性が言い、こちらに向かってくる。

 そうやら、店長の奥さんのようだ。

 店長の奥さんは、こちらに来る際に、サンタの帽子を持って来てくれて、私の頭にかぶせてくれた。

 「うん、これでいいわ。去年の子は着てくれなかったから、とてもうれしいわ・・・可愛い!!」

と、店長の奥さんは、私にいきなり抱きついてきた。

 ご満悦のようだ。

 「よろしく頼むわね!」

と、すぐに抱き付から解放され、ケーキを売りに徹底する。

 店頭に出て、ケーキの紹介。中に何が入っているのか等はカンペを作って売れていたので、バッチリと客に伝えられた。

 デコレーションが、可愛いのやら、綺麗な物まであり、売れ行きもいい感じがする。

 結構、人気の店だったりするのかしら?

 夕方のピークを終えた頃、店先に一台の車が止まる。

 車内から出てきたのは母親と女の子だった。

 仲良く手を繋ぎこちらに向かってくる。

 「すみません。クリスマスケーキに乗せる砂糖菓子ありますか?」

と、母親が言って来た。

 「サンタと、トナカイと、雪だるまの食べられる飾り。」

 女の子が私に向かって、指を3にして欲しいのをアピールして来た。

 私は、わからないので、すぐに窓ガラスから中を見ると、レジ近くにそれが飾られているのが見える。

 女の子も私と同様に店内を見る。

 「あったーーー!!」

と、嬉しそうに言う。

 「あっ、チョコのお家もある・・・ねえ、ママ、チョコのお家も買える?」

と、不安そうに女の子は母親に言いに行くと、母親は『もちろん』と、子供に満面の笑みを見せて言う。

 子供はその場でジャンプをして喜ぶと、外で待つと言い、母親は店内へと入って行った。

 「ねえねサンタさん。」

 私のスカートの裾を掴んで、私を呼んだ。

 私は、膝を折り、女の子に膝をつく。

 「あのね。ねえねサンタは、サンタさんのお手伝いで、ここにいるのでしょう。」

 女の子の可愛すぎる質問に、私は『そうよ』と、答える。

 「サンタさんに、お礼を言って欲しいの。ユリエのお願いを叶えてくれてありがとうって、それも、クリスマス前に叶えてくれて・・・今日、ママとユリエを叩かない、新しいパパとクリスマス会が出来るの。」

 このユリエって女の子、父親に虐待されてたんだ。

 母親も暴力を受けて・・・。

 母親もこの子も、幸せそうな笑顔で来店してた背景にそんなことが・・・。

 「新しいパパね、隣の幼稚園の先生なんだよ。ママ、おっちょこちょいだから、よく洗濯物を幼稚園に落としちゃって、一緒に取りに行ってたんだ。その時のママも、新しいパパもとっても素敵な笑顔だったから、サンタさんに夏ごろからお願いをしてたの。」

 ユリエという女の子は、その願いがお芋ほりの3日後に、叶った事を伝えてくれた。

 「だから、今年のプレゼントはいらないって思ったんだけど、世の中にはママもパパもいない子がいるでしょう。その子たちにプレゼントを挙げて欲しいって言ったら、カードが届いてね。『買って届けて欲しい』って、プリペードカードが届いたんだよ。」

 ユリエという女の子は、そのカードでたくさんのお菓子を買ったことを教えてくれ、これから届ける事も教えてくれた。


 胸に熱いモノを感じる。

 本当にユリエという女の子は素敵なパパが出来たんだね。

 誰かを思う気持ちを人に託すのだけでなく、自らも動く事をクリスマスプレゼントを買い届ける事で教えようとしている。


 ユリエいう女の子は、私の耳元に口を近づける。

 「それでね、買って届けてくれるお礼として、クリスマスを楽しく過ごすための物を買ってと、お駄賃をサンタさんから貰ったのよ。」

と、耳元でささやいてくれた。

 私は、クスリッと笑った。

 「じゃあ、ケーキのデコレーションって・・。」

 「うん、クリスマス会のケーキに飾るのよ。パパがサンタ、ママがトナカイで、ユリエが雪だるま!!」

 ユリエという女の子と私は、互いに満面の笑顔を見せる。

 「ユリエ。行きましょう」

と、中から母親が出て来ると、すぐに手を繋ぎ車に乗る。

 お見送りで手を振ろうと、車が出るのを持っていると、再びユリエという女の子が私の下に来た。

 私は、膝を再び折り、首をかしげると、小さな袋を私にくれた。

 「ねえねサンタもお裾分け!!」

と、私に小さな綿あめの袋をくれた。

 私は、母親の方を見ると、貰ってくださいと、手を差し出すそぶりをしていた。

 私は、ユリエという女の子を抱きしめる。

 「私、とっても幸せよ。」

 こんな小さな子が、こんなにも心温まるモノを持っている事に感動をして抱きしめてしまった。

 「メリークリスマス!!」

 「メリークリスマス、ねえねサンタさん!!」

 私は、ユリエという女の子に手を振り別れ、車が見えなくなるまで手を振った。

 「良い親子だったわね。」

と、店内から店長が出てきた。

 私は、素直に『はい』と、元気よく答える。

 「後、少しのようだね。」

 「店長、マスコットの飾りってどれぐらいの物なんでしょうか?」

と、店長に聞くと一端、店内で見て来るといいと、言ってくれて店内に入る。

 200円から300円ぐらいの物なんだ・・・。

 ここの店のケーキって、去年のケーキ屋よりも値段が安いのよね。

 庶民感覚に近いのかな?

 私、ケーキ買ったことが無いから分からないけど・・・。

 

 私は、再び店頭に出てケーキを売る。

 「あぁー。子供用の可愛らしいケーキが無いのか・・・。」

と、残念そうな初老のお爺さんが来る。

 「孫が急遽来るっていうから、ケーキを買って来たのにな。」

 ショボンと立ち去ろうとする初老のお爺さん。

 「あの・・・店内にケーキの飾りだけが売ってます。サンタの乗っかているこのケーキに、トナカイ、雪だるまが店内で売ってますので、プラスされたらいかがでしょうか?」

 初老のお爺さんが、目を輝かせて戻ってくる。

 そして、サンタのケーキを持って中で入って行った。

 「お嬢さんのいう通りに、中で雪だるまを買ったよ。ありがとう。」

と、嬉しそうに言ってくれた、その初老の爺さんに『メリークリスマス』と言うと、『メリイ、クリスマス』と、しっかり和製英語で返してくれた。

 こうして、ケーキ屋の日雇いのバイトは終わり、自宅に戻る。


 テーブルに、ユリエという女の子から貰った、小さな袋に入った綿あめが置かれる。

 「・・・・・・。」

 このまま、食べるのは何かもったいない気がする。

 かと言って、大事な教材費から、例え一人用でもケーキ代を買う事は出来ない。

 せっかく、心温めるクリスマスプレゼントなのだ。

 特別感重視で頂きたい・・・。

 心温まるか・・・温かくて、気持ちまで嬉しくなったのって・・・文化祭の後夜祭のキャンプファイヤーだよね。

 毎年文化祭の後夜祭でキャンプファイヤーをやっていたけど、私2年間は、バイト入れていて、3年の時、初めて参加したのよね。

 それも、バイトの人たちが、私に後夜祭参加させるためにシフトを組んでくれて・・・。

 とっても、楽しかったな~。

 

 私は、目をパチクリする。

 目の前に見えるは、小さな綿あめの袋の他に、8枚切りのパン。

 私は立ち上がり、8枚切りのパンを取り出し、パンの耳を切る。

 そして、パンの耳を揚げて、砂糖をまぶす。

 冷蔵庫からイチゴのジャムを取り出し、お皿に少し乗せ、その周りにパンの耳をキャンプファイヤーの木組みに組み立てる。

 そして、綿あめの袋を開け、キャンプファイヤーの煙に見せるように飾る。

 コーヒーを淹れ、パンの耳にまぶした砂糖の残った砂糖を入れる。

 うん、出来た。

 『クリスマス キャンプファイヤー』

 

 明日から8日間、朝食にパンの耳がないだけで、クリスマスの特別感を出せた。


 私は、手を合わせ、クリスマスに感謝をした。


 メリークリスマス

 皆さまに素敵なクリスマスが訪れますように・・・。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと、季節モノかけました。


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