後始末と祝福への願いと・・
ドラゴンの大樹に隣接する町の周囲には、雷属性のドラゴンがいる。
そして・・・。
『陛下、投擲機を全部落としたよ。』
フレディから、待っていた言葉が返って来た。
『雷を発生させる事が出来るドラゴンは、ドラゴンの大樹に集合、それ以外は、100%味方と解っている兵を回収。』
10分後に、一斉に雷を落とすことを告げた。
『陛下、味方の回収を手伝って来ます。』
と、セシルが言い、ドラゴンの大樹から去っていく。
俺が、味方が誰だか分かるのか質問すると、解っている人から聞いてセドナに乗せる事を言った。
マティアスもそれを聞き、味方の回収に向かった様だ。
”シュンッ シュッ”
と、弓矢がドラゴンたちに向かい放たれるのが、遠くで伺えた。
俺は、無理をしないでくれと言い、雷に打たれても気を失いだけと、皆に言う。
『陛下、10分が経過したよ。』
と、フレディが言い、味方は上空へ逃げるように伝えた。
俺は、唾を飲み込み・・・・。
『一斉に放てっ!!!』
”バリバリバリバリッ”
と、すさまじい光が、ドラゴンの大樹に接近している町に放たれる。
『コスモ、念のために大樹が光でやられない様に、カバーのような物をしてくれ』
あまりにも煌々とした光に、ドラゴンの大樹が自ら発火するのではと心配になり伝える。
『わかった。』
と、コスモからの声がし、背中の方から風を感じる。
目を開け、ドラゴンの大樹を見ると、灰色の竜巻がドラゴンの大樹を包んでいた。
『コスモ、ありがとう。』
と、ヘンリーの声で、竜巻が消え、ドラゴンの大樹が現れた。
大丈夫だ。
ドラゴンの大樹は守られた。
『わーーーー!!!』
と、歓声が聞こえる。
俺も肩の荷が降り、ホッとする。
守れたんだ。ドラゴンの大樹を守れることが出来たんだ。
・・・良かった。
『フフフフフフフ・・・・ッ』
と、恐ろしい声が聞こえて来る。
それから・・斜後ろから変なオーラも感じる。
ホッとし警戒を解いてしまったので、そのオーラ・・・結構きついぞフレディ。
『へ・い・か~。敵の始末は、僕担当していいよね・・・僕だけだよね・・・僕しかいないよね・・・はい、僕がやります。アハハハッ』
ハハハハ・・・。
俺、許可まだしていないのだが、勝手にフレディがやる気になっているよ。
攻防戦より、生き生きしてないか?
『ム~ちゃん♪ム~ちゃん♪いらっしゃ~い♪しっかり、バッチリ、会議をかけるからね。縄に縛って、ダンビュライト城へ連れてっちゃって!!!』
うん、もう、フレディに任せるよ。
俺は、何故か遠くを眺めるような感じになっていた。
『サーシャ、何で君がここにいるんだ!!』
と、怒鳴るような声が脳裏に入ってくる。
サーシャが、ここに来ているだと?
風邪をひいているのだろう!?
北西の方角から、こちらに向かってくるドラゴンがいる。
目を凝らしてみると、水色のドラゴンのアマルテアだ。
その横には、赤いドラゴンのフォボスがいる。
『ドラゴンの大樹の前で降ろせばいいのだな。』
と、ライナスの声が聞こえた。
ドラゴンの大樹の前で降ろせって・・・何をすると言うのだ?
俺も、ユピテルと一緒にドラゴンの大樹の前で降りる。
コスモも降りて来る。
「ハミッシュ陛下。サーシャが来ていると聞いたが・・・・。」
「幻聴ではないようだ。」
俺は指さすと、アマルテアがドラゴンの大樹の前に降りて来る。
背中にはライナスの他にサーシャが乗っていた。
サーシャにしては珍しい格好だな・・・フランス人形のような恰好をしている。
「サーシャ、風邪をひいているのだろう!!」
ヘンリーがサーシャに近づき、額に手を置き熱を測る。
「まだ、多少あるじゃないか!」
「そんな心配より、ドラゴンが・・・怪我をしているドラゴンがたくさんいるのです!!」
サーシャは慌てるように言う。
攻防戦をしたのだから、負傷しているドラゴンがいて当たり前だ。
数頭亡くなってしまった者もいるはず。
そうか、サーシャは、戦争を目の前で見ていないから、当然が解らないのだろう。
サーシャは、ドラゴンの大樹に触れる。
「リオン、負傷したドラゴンがいるの・・・力を貸して・・・お願い。」
と、サーシャは、ドラゴンの大樹に頭を付けてお願いをする。
「祝福のオーラを、そう簡単に発生できない事は、わかっている。黄金の祝福で、力を使っている事も・・・でも、この国を仲間を守るために、奮闘したドラゴンたちなの・・・その思いを・・・簡単に・・・簡単に消えて欲しくないの・・・だから、お願い!!」
縋るようにお願いをしているサーシャ。
”シュンッ”
と、ドラゴンの大樹を守護する柳の葉のような葉。だが、その葉の通常の長さの半分にも満たない葉が、サーシャの腕に傷を負わせる。
傷口から血が流れてきた。
「サーシャ!!」
そうだった。サーシャはまだ、正式にヘンリーと婚姻を結んでいない。
ドラゴンの大樹が攻撃をしてしまう対象者だ。
”ピカーーッ”
と、ドラゴンの大樹のリオンが光だした、その光がサーシャの怪我し、血が流れ出した箇所を照らす。
血が黄金に光り、ドラゴンの大樹に吸い寄せられる。
「ありがとう・・・リオン。」
サーシャが、涙を流しながらお礼を言って、涙を拭く。
そして、サーシャが歌いだす。
すると、円い葉に包まれた実が大きくなり、円い葉が落ちる。
みるみる実が大きくなって、そして・・・。
”フシャーーーーッ”
と、実が弾け黄金のオーロラが広がって行った。
別の枝から実が新たに出来て、円い葉が覆うと、サーシャは歌を辞める。
・・・と、いうか・・・身体が崩れ・・・・倒れた。
「サーシャ!!!」
と、ヘンリーがサーシャの元に駆け寄って行った。
熱がぶり返したようだ。