押しかけまして、こんばんわ
大きな屋敷の庭に、大量のドラゴンを降ろさせる。
「こんばんわ、オリビン伯爵。」
と、私は、アマルテアから降り、中の人々に挨拶をする。
「先ほどは、門前払いをされてしまい、自分の未熟さを思い知らされてしまいました。」
ニッコリ笑顔で言うと、屋敷の中の人たちは、顔を青ざめて、庭に出て来る。
先ほど、門前でヘンリー様の婚約者といい、わざわざ風邪ひいている中、胸と鎖骨の間の金色の紋章を見せたのだ。
だけど、詐欺者と言われ、門前払いをされてしまった。
平常時ならそれは、いい行いと感心するが、今は非常時。
なので、手っ取り早く、アマルテアにお願いして、ドラゴンを呼び寄せて貰った。
それも、この町に常時しているドラゴンをね。
しっかり絆を結んでいる者が騎乗しているドラゴンが数頭いるが、後は、ドラゴンのみ。
私は、ドラゴンたちを撫でながら、オリビン伯爵に話しをする。
「これで、私がヘンリー・ルベライトの婚約者だと解って頂けますね。」
「はい、ですが申し訳ないが、今はあなたに構っている暇はないのです。」
ドラゴンの大樹に攻撃を仕掛けて来る者がいる事で、話し合いをしていると説明してくれた。
「是非、その話に参加させてください。」
「お遊びではないのですよ。」
と、オリビン伯爵は怒鳴るように言う。
「ドラゴンの大樹が狙われているのに、お遊びと思われるとは・・・では何故、援軍を送らないのですか?」
ここにいるドラゴンたちは、それにご立腹だと気づけよ。
「敵の数が大きく、その責任を誰に押し付けるかを・・・考えている訳ではありませんよね。」
オリビン伯爵の顔色が一段と青ざめる。
「そんな事を考える暇があったら、援軍を送るのが得策かと思うのだが・・・。」
アマルテアに騎乗したままのライ様が言い、私も同意をする。
「予想外の事が起きて、動揺しているのは分かっていますが、現実に起きてしまったのです。その対応をすべきです。」
自分の利害など、二の次だ。
「今現在、周辺の町に伏兵がいる疑いがあります。どこに隠れているかわかりますか・・・ではなく・・・そうですね。」
分かっていたら、そこに向かわせるか。
なら、考える事は・・・・。
「隠れている所を考えましょう。」
ここの町に伏兵がいなくても、他の町にいるかもしれないのだから、知恵を出し合うべきだ。
オリビン伯爵は、やっと分かってくれて、ライ様と私を屋敷の中に入れてくれた。
屋敷の中に入り、すぐに目についたのはテーブルの上に置かれた大きな地図。
ドラゴンの大樹の周辺の町の地図だった。
「こちらの地図に記載されている箇所が、野宿禁止令が誰ている場所ですね。」
と、ライ様はオリビン伯爵に聞く。
そう、今現在、戦闘中のドラゴンの大樹の近隣の町と、この町を含め。その周囲の町は、特別区となっていて、野宿が禁止となっていると、ライ様から聞いた。
敵が潜伏する恐れがある為で、街道だけでなく、林の中の獣道や、洞窟まで、事細かに熟知していて、毎日見回りをしていると聞いた。
なので、敵が林の中に隠れて生活をしているとは考えられないのだ。
だけど、敵が大量に今、ドラゴンの大樹に攻撃を仕掛けている。
どこに潜伏していたのか、そして今も潜伏しているのか、考えるべきだな・・・。
オリビン伯爵も、自分の町ではないと思っているらしく、どこの町に潜伏しているのか考えているようだった。