ドラゴンの大樹の攻防戦
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『第二連弩網を突破されました。』
通信で伝わって来た瞬間、舌打ちをする俺だった。
敵の数が想定外だ・・・軽く倍は超えている。
「陛下が考案した連弩舎を突破されるとは・・・。」
ドラゴンの大樹に近い町は、奇襲に備えた造りに作られている。
第二連弩網は、その一つ。
建物で、ドラゴンの大樹に面していない側に、奇襲に備え、常に外敵を狙うように連弩が設置されている。
一番外側が『第二連弩網』と、言われ、ドラゴンの大樹の中心に近づく道の先にも、連弩が狙っている建物がある。
それを突破したという事は、敵は盾を持っていると推測される。
敵は、火矢をぶっぱなし建物を炎上させている。
火の粉が、ドラゴンの大樹に降りかかっては危険なので、氷属性のドラゴンを、火消しに向わせるが、今度はそのドラゴンを弓矢が狙い打ちされる。
それを雷属性のドラゴンが、雷の津からで弓矢の狙いを狂わせる。
『敵、外堀に到達します。』
マティアスからの伝達が来る。
『8基の橋をマティアスと、16頭のドラゴンに委ねる。』
俺は、マティアスに伝え、了承をする伝達が聞こえる。
◇ ◇ ◇
ハミッシュ陛下が、外堀に架かる橋の全権を私に委ねた。
『南東の方角、敵侵入しました。』
南東の担当の者が伝えてきた。
『当初の予定通りに、ラインを超えたと同時に指示を出せ』
敵の侵入は、それぞれ違うので、こればかりは各所に任せるしかない。
ドラゴンの大樹に向かい8基の橋がかけられているが、橋の中央からドラゴンの大樹側の間にラインが引いてある。
このラインは、奇襲の際の目印として引かれている線だ。
『南東の橋・・・放て!!!』
と、南東の橋の担当者がドラゴンに指示を出したようだ。
「マティアス様。こちらも侵入してきました。」
緑のドラゴンに一緒に乗せて貰っている騎士が言って来た。
やはり、私が担当している東の橋にも、敵が侵入をしてきた。
敵は、警戒をしながら橋を渡ろうとしている。
そして、敵の先頭が橋のラインを越える。
『フォボス、今だ!!』
私は、フォボスに指示を出す。
”ザバーーンッ”
と、堀からフォボスが勢いよく現れる。
”ヒュオーーーーーッ”
フォボスの口から猛吹雪が、橋に向かい放ちながら上空へと飛ぶ。
橋が、堀に及ぶまでの広範囲を氷漬けとなる。
見た目、大きな波のオブジェのような氷の塊が、橋を塞ぐように造られた。
氷を解かすのに時間がかかるはず。
体制を立て直すいい機会となるだろう。
あれは、何だ?
敵が、巨大な木製の装置を引いて持って来た。
あんな大きな装置をどこから持って来たのだろうか・・・。
そんな事よりあれは・・・投擲機だ。
陛下に知らせねばならない。
◇ ◇ ◇
投擲機だと?!
弓矢よりも飛距離が出る物が使われると言うのか?
ドラゴンの大樹の周辺の町は、弓矢の飛距離を考えての造りとなっている。
敵が橋を越え、次の連弩網を抜けて、内堀を過ぎた所で、やっとドラゴンの大樹に弓矢が届く距離となる。
それも、遠くまで弓矢を飛ばす事の出来る者が、やっと届く距離。
その目安を解るように計算され造った町なのだ。
投擲機は、想定していない。どれぐらい飛ぶのだ?
「陛下、来るよ!!」
フレディの言葉で我に返る。
予想外の展開を気にしていては、対応が出来ない。
『俺とフレディとセシルは、大樹の前、3方向から火の玉が来るのを防ぐ。』
俺の命令に『はい。』と、返事が来る。
『ヘンリーは大樹の上空から、3方向から防げなかった物を落として欲しい。』
『わかった。』
『了解だよ。』
と、ヘンリーだけでなくコスモの返事をしてくれる。
”ビユーンッ”
やはり、投擲機から火の玉がドラゴンの大樹を目がけて飛んできた。
セシルのセドナが、竜巻を発生させて、火の玉を内堀に落とす。
”ビユーンッ”
オルクスが、火の玉に吹雪を当て氷の為にし、しっぽで外堀の手前まで突き返す。
『マティアス殿。大きな氷の玉を作って、投擲機に攻撃は出来ない?』
フレディが、マティアスに伝える。
先ほど、オルクスが突き返した玉で、思いついたようだ。
『やってみます。』
うん、何とかなるかもしれない。
”ビユーンッ ビユーンッ ビユーンッ”
おい、待てよ。一気に3つ火の玉を飛ばしてくるなよ。
『ヘンリー、サポート頼む!』
と、言いながら、吹雪で火の玉を氷の玉へと3つとも変化出来るも、ユピテルのしっぽで突き返せるのは一つ。
2つは、ドラゴンの大樹に向かって行く。
”ブワワワーーーーッ”
風の渦が横に向けて2本発生。
氷の玉を投擲機目指して飛んで行った。
”ビユーンッ ビユーンッ ビユーンッ ビユーンッ ”
一気に4つの場所から火の玉が飛んでくる。
『ユピテル、オルクス、セドナ、一端高く飛んで。』
と、コスモが伝えて来ると、同時にコスモは空に向かい吹雪を発生。
ドラゴンの大樹の周り全体を覆う。
その吹雪に火の玉がぶつかると、雷が発生し、火の玉は、内堀に全て落とされた。
『やっぱり、コスモは凄いよね。』
フレディ、その通りだな・・・。
でも、これから、どうすればいいのだ?
『陛下。雷を使って、内側から町の外に向けて余すところなく放てますか?』
ライナスの通信が入ってくる。
『ライナス。どういうことだ?』
俺が返答する前にマティアスが聞く。
『俺らは、町の外から、ドラゴンの大樹に向けて雷を余すところなく放ちます。』
そうか・・・町全体に雷を発生させて、敵を気絶させるのか・・・。
場合によっては、味方も雷の攻撃を食らうかもしれないが、気を失うだけだ。
後ほど、住人に協力して貰い、一人一人敵味方の判別をしてもらえばいい。
ドラゴンの大樹の周りの町の住民は、俺の許可が無いと勝手に住むことが出来ない。
信頼のおける者を住まわせ、それぞれに住民を認識させているのはこの時の為。
まさに、今使うべき。
『わかった。準備をするから待ってくれ。』
『わかりました。』
俺は、雷属性のドラゴンに内堀まで来るように伝える。
『ハミッシュ陛下。投擲機を壊してからの方が、落ち着いて行動が出来ると思います。後3台ですので、お待ちください。』
と、マティアスが伝えてきた。
『マティアス殿。その3台って、北と北東と南じゃない。』
フレディは、投擲の稼働している箇所を聞ていた。
マティアスは驚いたようにその通りだと答えた。
『陛下。マティアス殿の援護に行ってきます。』
と、フレディが言い、勝手に行ってしまった。




