気を付けて行こう
「ありがとうございます先輩。」
「そんなの当然だろう。熱が出たんだからな。」
俺は、氷の属性のドラゴンと絆を結んでいる2年生の先輩に、氷を作って貰った。
アマルテアは、ピンクの瞳だと思ったら紫が入っていたらしく、全属性が使えるのだが、基本能力は氷ではないので、サーシャの為に先ほど必死に氷を作っていた。
だから、今は休ませてあげたい。
そうなると、頼むしかない。
説明をすると、すんなりと氷を提供してくれた。
「ライナス様。」
と、女生徒が俺に声をかけて来た。
「先ほど、頼んでいた物です。本当にこんな物でよろしいのですか?」
女生徒は、俺に大きな紙袋に入った物を渡してくれた。
「良いも、悪いも、サーシャが学園に持って来てない物ですから、助かります。」
「ですが、公爵夫人となられるお方に、私のお古なんて・・・。」
俺は、学園に持って来ないサーシャが悪いと伝える。
紙袋の中を見ると、ワインレットの服と、その服とセットのようなケープが入っていた。
「風邪ひきやすい体質なんだから、念のために厚手の服を持って来て欲しいモノです。」
風邪ひいてからでは遅いと付け加えて、お礼を言った。
女生徒と別れ、その足で一石二鳥以上へと向かう。
「ライナス様。いらっしゃいませ!!」
と、にこやかにこちらに来る。
「明日のクッキー作りは、延期になってしまったな。」
「・・・はい。」
残念そうな顔で返事をするラスキン殿。
今週は、今日の出来事での刑が執行されいる。
明日も、明後日も、食堂の食事にありつけるのが3番手となっている。
それに合わせて、購買で食料を購入することも禁止されてしまった。
「ラスキン殿。残念そうな顔をしているけど、ここでの食品は、王宮それに、公爵家の屋敷での販売に回す手筈ではないのか?」
俺は、陛下の采配を聞き逃していないから間違えはない。
ここで、大人気のもこふわも、王宮で食べたがっているメイドが、たくさんいると聞いている。
逆に、売上が上がるんじゃないのか?
ラスキン殿は、バレてしまったかと、苦笑いをしてくれた。
「購入したい物がある。」
「喜んで!!」
◇ ◇ ◇
「サーシャ、今は自分の体の事を考えなさい。」
額に、氷水で濡らしたタオルが置かれる。
「でも、リオンは私に助けを求めてきたのです。」
そう、先ほど熱で眠っている時に、リオンが『助けて!!』と、素直に私に言って来た。
キマイラ事件の時みたく、回りくどく危険を知らせてきたのではなく、素直に救いを求めてきたのだ。
「マティアスが、サーシャの代わりに行っているでしょう。」
マティアス様は、キマイラ事件の時、ドラゴニアの危険を察知するのが遅く、リオンがマティアス様に救いを求めたのだ。
だから、大丈夫とキャサリン様は言うけど・・・。
不安でならない。
「サーシャ、大丈夫。マティアスだけでなく、皆さまが行ってくれているのだから。」
キャサリン様は、私の頭を撫でてくれる。
”ゴホゴホッ”
と、咳を出してしまった。
喉が枯れた感じがする。
「あらあら、飲み物を貰ってくるわね。温かい飲み物の方がいいわね。」
と、キャサリン様が部屋を出て行った。
「・・・・・。」
自分に腹が立つ。
何もしてあげれない。
それが異常に自分に対して、苛立ちが湧きあがて来る。
”コンコンッ”
と、窓から音がする。
私は起き上がり、窓の方を見る。
「ライ様!!」
私は、ベッドから起き上がり窓の方へ向かい。窓を開ける。
「サーシャ。今すぐズボンを履いて、これを着ろ!!」
と、ライ様は、私にワインレットのケープを渡してきた。
「急いで、大母様が戻ってくる前に!!」
私は、急いで、乗馬用のズボンを履き、ケープを着る。
「飛び乗れ!!」
と、ライ様に言われ、アマルテアの背を目がけ飛び乗る。
そして私は、ライ様の背中から腕を回す。
「アマルテア行ってくれ!!」
と、ライ様が言うと、アマルテアは『キュ~』と鳴き、西の方へと向かった。
◇ ◇ ◇
『エーギル。先ほどの声、そなた聞こえおったか?』
『はい、聞こえました。誰が助けを求めてきたのでしょうか?』
『幻聴ではないようですね。』
エーギルの他にも、ダイモスが話に加わって来たようじゃな。
先ほど、ドラゴンが助けを求めてきおったのじゃ。
じゃが、幻聴と勘違いしても過言でないように、一言で終わってしもうたのじゃ。
『また、救いの声が聞こえるかもしれません。』
『気に留めておきましょう。』
そうじゃな。
今のところ出来る事は、それしかなさそうじゃわい。




