表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

302/423

墓前報告

 『やすらかに眠る』

 大きな墓石の表面に刻まれた文字。

 後ろの面には、一人一人の名前。

 その一番目には、父さまの名、二番目には母さまの名が刻まれて、他にもたくさんの名前が書かれている。

 ここは、西光の白真珠の工房の人たちの共同墓地。

 墓石の後ろには、藤棚が、墓石を囲うかのように半円に設置されて、藤の季節になると白い藤の花が咲く。

 今は、その季節ではないので、藤棚に蔓が巻きついているのみだ。

 だから、白い花である鈴蘭の花を墓石に飾る。

 墓石の前の祈り台の石板に、膝をつき両手を鎖骨と胸の間に置く。

 「父さま、母さま、工房のみんな・・・やっと、犯人が見つかったよ。」

 これまで、ここに来ると、『犯人っていったい誰なんだ。』とか、『犯人の顔を皆の数分殴りたい』とかも愚痴を言った事もあったわね。

 でも、いざ犯人が捕まると、呆気なかった気もするけど、何より肩の荷が降りた気がする。

 「チェスター兄から、犯人が捕まった後の方が、心配だと言っていたけど・・・うん、普通に今日が終わって、明日が来て、仕事をする・・・まあ、今は特別任務中で、いつもとは違う仕事内容だけど、普通に仕事が出来そうなのよね。」

 復讐を遂げたら、それ以降することが見当たらず、お先が真っ暗になるって、チェスター兄が言っていたっけ・・・。

 私のお先は、いつもの日々が来る・・・なのよね。

 それも、清々しい日々な気もしないでもない。

 私って、薄情なのかしらね。

 「でも、みんなと同じ境遇が、起こって欲しくないって気持ちはあるから、薄情だとしても・・・許してね。」

 だから、私は傭兵団に入団して、傭兵となった。そして、ドラゴンドクターの護衛として一緒に巡回の旅をして・・・。

 「旅の中で、ドラゴンだけでなく人々も苦しんでいるのが解って、出来る限りの事をドラゴンドクターと一緒にやったっよね。」

 だけど、女しかいない家で、男が入るのは危険と、助けられる命を助けられなかったのが、何件もあって・・・。

 クスリッ

 「ここに来て宣言したわよね。」

 人助けの為に、女装するって・・・。

 「まあ、護衛が主な仕事だったから、筋肉は落とせなかったけど、出来る限り女性らしく振る舞って、女しかいない家にも入れて貰えて、人助けして・・・。」

 その後、ドラゴンドクターの護衛の任が解かれると、国家鑑定士になれって、チェスター兄やドラゴンドクターらに言われて・・・。

 「チェスター兄は、元々、私がドラゴンと絆を結ぶ際に、交換島の国家鑑定士にするつもりで、ステファノ―を押したのよね。」

 でも、あまりにも交換島の国家鑑定士がいないって現実に、ならざるおえなくなったのよね。

 国家鑑定士の試験受ける前から、ステファノ―はリュヌの銀の耐性があったからね。

 国家鑑定士になって、一年もしないうちに、交換島に派遣されて・・・。

 「それからは、あまりここに来られていないのよね。」

 ドラゴンドクターとの巡回の旅の月日でも、一年に一度の命日の時は、必ずここに来ていたのにね。

 「キマイラ事件の時も、一人で交換島で頑張ったのに、特別休暇も与えて貰えず、サーシャさんの姉さんの捜索隊に加われて、やっとここに来られたのよね。」

 次に来るときは、捜索隊の任務が終わった時って交換島に戻る時だと言っていたけど、来ることになるとは・・・・。


 「私・・・思った以上に幸せに生きていたのね。」


 辛い事もあった・・・。

 辛さしか感じられない日々も・・・もちろんあった。

 でも、ふとした時・・・ああ、微笑でも笑えている自分がいた。

 作り笑顔を続けていても・・・普通に笑顔が出来る事があった。

 

 それに、気づき・・・歩んで・・・気が付けば、思った以上に幸せなんだと思う今がある。


 私は、墓石に向かって微笑んでいた。

 「また、来るわね。」

 今度こそ交換島に帰る時だと思うわね。

 私は、立ち上がる。


 「終わったね。」

と、離れたところで、待っていた人が2人いた。

 「陛下!!フレディ様!!」

 そこには、ハミッシュ陛下とフレディ様がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ