娼婦の館と、役人と
「に・・逃げて・・・ここは・・危険・・・媚薬の・・香りが・・・。」
学園の帰りに、ぶっかけられた媚薬の香りが、辺りにしている事をヘンリー様に伝える。
ヘンリー様は、すぐにあたりの臭いを嗅ぐ。
「ここは危険だ!!」
ヘンリー様は、大声をだして伝える。
周りの人たちはいきなりな事で、何事かとヘンリー様を見る。
「『ファーテンの涙』という媚薬の香りがする。」
ヘンリー様は事情を説明に、皆が納得する。
「フレディ、そのオーラ保ちながら後退出来るか?」
「出来なかったら、陛下が僕の代わりにやってくれるのですか・・・それは凄いな~・・・。」
フレディは一瞬、ハミッシュ陛下に向けて、ドス黒オーラを放ったモノの、すぐに、フロアの奥へと向けた。
「ピアーズ。ルイ・シェルを回収しろ。」
ピアーズさんが何も言わずに、すぐに気を失ているルイーズさんのところへ向かい持ち上げる。
「ナイジェル。ラリマー元伯爵の息子を生贄にするから、息子の両手を柱に括れ。」
「かしこまりました。」
すぐに、ナイジェルは、ラリマー元伯爵の息子の両手ロープで結わき、柱に結び付けだす。
「ああっ!!」
と、奥から女性の声が聞こえ、フロアに向かってくる。
「クレシダ。気を失わせろ!」
”バリバリ ばたんっ”
薄着・・ベビードール姿の女性が、フロアに出てくると同時に、クレシダが雷を放ち、気を失わせ倒れた。
ナイジェルさんが、柱にラリマー元伯爵の息子を括っている最中に、近くの廊下から、また別のこれまたベビードールを来た女性が、ナイジェルさんに向かって、襲いかかるように向かってくる。
”バリ~ンッ バタンッ”
ナイジェルさんの近くで倒れ込んだ。
倒れ込んでからすぐに、ラリマー元伯爵の息子の両手を柱に括りつけられ、ナイジェルはクレシダの元へと行く。
「クレシダありがとう。」
”きゅ~”
ナイジェルはクレシダの頭を撫でると、可愛らしくクレシダが鳴く。
「すぐに、後退をするぞ!!」
と、ハミッシュ陛下の言葉で、再び厳しい顔になるナイジェルさんとクレシダ。
こうして、地下室から地上へと後退をする。
休憩所へと出て、そのまま外へと出る。
「オルクス、隠し扉からたくさん人が出てくるから、片っ端から気を失わせて。」
休憩所の外に降りていたオルクスが、休憩所の窓ガラスを割り、隠し扉に集中していた。
「クレシダも、オルクスのサポートできるか?」
”キュ~ッ”
ナイジェルさんがクレシダに問いかけ、すぐに返事が返ってくる。
「無理は、しなくていいからな。」
「コスモ。宿泊している屋敷に戻るぞ。」
ヘンリー様は、私を抱えてコスモに乗り込もうとする。
「こんな中で、戦線離脱する?」
フレディさんが文句を言ってくる。
「だが、サーシャが!!」
「それって、自業自得じゃないの?」
フレディ様の言葉に反論することが出来ない。
あまりにもごもっともな言葉なのだ。
それは、フレディ様のところへ援軍を呼びに行く前から、工房の隠し部屋が、娼婦の館である事は解っていたからだ。
ブルーア地方に、他の地域よりも若干、孤児が多かった事が挙げられるが、一番に確信が持てたのは、ブルーア地方に面しているダンビュライト領の地域に孤児がたくさんいる事だった。
昨夜、フレディ様に急遽調べて貰ったら、案の定孤児の数が多く、困っているがありありな内容の資料だった。
だが、ブルーア・ラリマー元伯爵も悪知恵を考えたものだ。
中央領で、集中して孤児が多ければ、その地域に隠れた娼婦の館が存在していると思われる。
でも、ダンビュライト領に孤児が多ければ、中央領では疑われにくい。
多少、孤児が多いのは、ダンビュライト領から流れてきていると思われる程度なのだから。
でも、私はそれをネタにフレディ様に協力を得たのだ。
フレディ様も隠れた娼婦の館を探していたのだ。
孤児院をこれ以上増やさない為にもね。
でも、これまで優秀な役人がいるダンビュライト領でも探せなかったのには、訳がある。
それは、ドラゴニアの社会環境に原因がある。
そもそも、ドラゴンと直接絆を結べるのは男性だけ。
つまり、女性が長期にわたり、役所で仕事が出来るには、一生独身でいるか、ドラゴンと絆を結んだ男性と結婚して、伴侶の証があるかである。
でも、ここでも妨げになるモノがある。
一生独身でも、ドラゴンと絆を結んだ男性に比べてみたら、あまりにも役所で務めるのが短く、伴侶の証のある女性は、仕事と家庭を両立出来たとしても、子供を産めるのは女性のみ、産休がどうしても、社会進出の邪魔をしてしまうのだ。
それでも国王がハミッシュ陛下になってから、協力体制を強化するようにはしているようだ。
マタニティーブルー、産後鬱がある事で、ドラゴニアの役所は、夫側も産休育短を取って貰うのだ。取ることが出来るのではない。
取らざるおえない仕組みとなっているのだ。
夫婦で、産休をとり、出産の準備をし、出産後も夫婦で子供を育てる期間がある。
そして、しっかり子育てをしているかという、役所の育児支援者が巡回で回っているのだ。
なので、数百年前に比べてみたら女性の社会進出がしっかりでき、そのフォローもしっかりと出来ている。
だが、ドラゴン騎士に、国家鑑定士は、男性のみとなってしまう。
故に、それがネックなのだ。
今回のように隠れた娼婦の館を探せないのは、役人の男性が、その娼婦の館を利用しているからだ。
娼婦の館の支払いが、役人価格という破格の安さだったらどうだろうか?
利用するし、見つかりそうなら隠蔽することもあり得るのだ。
今回、ブルーア・ラリマー元伯爵の所有の家でない家から、ルイーズさんは、隠し通路を通って、百葉箱の小屋までたどり着いたのだが、その理由は、捜査段階で隠ぺいをした者が、捜査隊にいるからだ。
後ほど、利用者リストが見つかれば判明するだろう。
なので、そう言った事情がある為に、隠れた娼婦の館を探すのは困難なのだ。
故に、隠し場所、隠れ場所には打ってつけになってしまう。
ブルーア・ラリマー元伯爵も、別の工房にいるか、奥の部屋で隠れているかのどちらかだ。
それにしても・・・苦しい。
「ヘンリー様・・ごめんなさい・・・ごめんな・・さい。」
ヘンリー様のマントに頭から筒まれ、姫抱っこされている中で言う。
「謝る必要はない。俺も気づいてやれなかったのだ。俺も悪い。」
「違う・・・ヘンリー様だけなの・・・ヘンリー様だけなのに・・・体がそうじゃないのが・・・苦しくて・・・悲しくて・・・申し訳なくて・・・嫌なのに・・嫌なの・・・。」
マントの上からヘンリー様が、私の額にキスをしてくれる。
「わかっている。サーシャは俺だけのサーシャだ。」
ヘンリー様が優しく私に言ってくれているのは解る。
でも、だからこそ、なおの事悲しくなる・・・自分の体がおかしいのが、薬のせいと解りきっても、嫌になる。
「ヘンリー行っていい。俺が許す。」
ハミッシュ陛下が言って来た。
「ただ、後ほど、お前たちが宿泊地へ送った後、コスモを貸して欲しい。コスモにしか2重に能力が使えないからな。他の工房にも一斉に捜索しているのだ。その能力が必要となる事があるかもしれない。」
”ギュギュ~”
コスモが鳴く。
「ありがとうコスモ・・・フレディ、これでいいだろう。」
「まあ、そういう事なら、ヘンリーが離脱しても構わない。逆にサーシャといちゃつかれても、こちらが困るからね。」
フレディ様が許してくれた。
「サーシャ、今から宿泊所に戻るからな・・・もう少し待ってくれ。」
こうして、コスモに乗って宿泊所にしている、ブルーア・ラリマー元伯爵家の屋敷へと戻った。
 




